0621「RED」

毎日定期的に不愉快なものを見せられるので、片っ端からミュートして塞いだつもりが塞ぎ切れていなくて、不愉快なプッシュ通知が目に飛び込んでくる。その不愉快の中心になっている現場に不愉快な気分で向かい、出入りの業者としての業務を全うする。今日も完璧に全うしたと思う。プロとしての作業に没頭していれば、面倒なことはだんだん忘れていく(忘れちゃいけないことであっても)。そうこうしているうちに不愉快なプッシュ通知が目に飛び込んでくる。ベッドバグみたいなしつこさだ。上等だ。出入りの業者としての完璧な作業報告を行う。自分の仕事には何も恥じるところはない。最悪だな。

以上、いつものネガティブな枕だ。こうも連日不愉快の波状攻撃を食らうのもなかなかないことだ。せっかくだから口に広がる金属の味を楽しめばいいだろう。鉄分上等だ。この鉄分で私のヘモグロビンは赤くなるのだ。

腹が立っているときは移動が一番いい。移動してGがかかっていると脳が撹拌されてすべきことが整理される。というわけで、現場があるチェルシーから家のあるアッパーウエストサイドまで歩くことにした。くそ遠い。東京でいうとどこからどこまでかみたいな例えをするのは調べるのが面倒なのでしないが、まあ、あんまり歩かない程度には遠い。折角なのでハドソン川沿いを歩く。ニューヨークは異常気象で、ここのところ梅雨みたいにずっと雨だったところ、ようやく晴れた。

歩いても歩いても腹立たしさと悔しさと悲しさが収束しない。ヘッドフォンからはキング・クリムゾンの「RED」がループで流れている。

視覚情報的には、それはそれはヒップなニューヨークの光景だ。夕暮れに、芝生でリラックスする人たち。

アルゼンチンタンゴのステップを踏む人々。

川向かいに映えるニュージャージー。

クソが。胸糞悪い。自分が観光客ならこんなに思い出深い素晴らしい光景はなかろうが、残念ながら私はMPを削られる出入り業者仕事の帰り道だ。クソが。クソが。クソが。何巡目かの「RED」が陰鬱なフレーズを展開している。

72stのピアでは、カフェでニューヨーク民たちがビールを飲んでいる。クソが。

バンドネオンだかアコーディオンだかわかんないけどおじさんが何か弾いているけど、私には「RED」しか聴こえてない。クソが。

芝生でいちゃつくカップル。瞑想している若者。クソが。

夕暮れに輝くヨットハーバー。クソが。

そしてふと立ち止まってネガティブなツイートをする。日記以外のことなんか滅多につぶやかないのに。さあ小出しにし始めちゃったぞ。

腹が立っているときは移動が一番いいはずなのに、一歩ごとにネガティブな感情が増幅されていく。怨みがどんどん濃縮されていく。完全に逆効果だ。そして、そのBGMは、キング・クリムゾンの「RED」だ。大変にご面倒なことだ。

長い道のりを経て、家に着く。怒りが収まらないので、ネットで「怒りをしずめるツボ」を調べる。

届かない。届かないよ肝兪。何もしずまらない。頭の中の「RED」の音量が上がっていく。

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qanta

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