毛髪編:「劣化王」を超えた超・劣化王なのか? それとも「進化王」なのか?

クーリオが“Fantastic Voyage”のヒットで一気に注目されたのは94年春のことだ。
この“Fantastic Voyage”は、レイクサイドの同名ヒット曲をカバー的に再構築したもの。その単細胞にしてアッケラカンとした作りはラジオ・フレンドリーかつコミカルですらあった。

そんなクーリオのコミカルさを増強していたのは、そのヘアスタイルである。

クーリオ自身、奇異な髪型のメリットに関しては非常に自覚的だった。
曰く……「LL・クール・Jの横にいても、キッズは俺のほうを先に見つけてサインをねだってくる。この髪型は、見事に機能しているわけだ。その後でLLにも気づいてサインを求めるんだが、俺の後ってことでプライドが傷ついたらしく、彼は突っぱねてたよ」

それから約20年。今のクーリオは……もっと凄い。

先のLL・クール・J事件をクーリオが教えてくれたのは、2001年の取材時だ。その時点で我々取材班は、編みこまれた髪が畝のように張り付いた彼の頭部に、危険な隙間を発見していた。つまり地肌が覗いていたのだ。その危険な隙間が、それから10余年の間に勢力を増したにちがいない。それを逆手に取った、大胆不適な捨て身の解決策が、このヘアスタイルなのだろう。
笑いとインパクトのためなら犠牲をいとわないアティチュードは、尊敬に値する。
確かに、頭皮と毛根は劣化したかもしれないが……インパクトは進化したのではないか?

しかしだな。
かつて藤原紀香/アーロン・クォック/王力宏/マーク・ダカスコス主演の映画『SPY_N』に悪役として出たクーリオを見て「エエ男やん」と言っていたウチの母は、この現状を見たら何というだろう……。


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