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【GO GO 曽野綾子先生! 第9地区まで疾走せよ!】パート2

ここから続く)
 南アフリカ共和国の最大都市ヨハネスブルグは、なぜに世界最悪級の犯罪都市となったのか。

 南アフリカの人種差別制度「アパルトヘイト」の撤廃は、1991年から始まり1994年に完了した。つまり、この2015年ですら、全廃されてから20年ほどしかたっていないわけだ。
 ここで、君がいま35歳くらいの南アフリカ黒人男性だと仮定してみよう。すると、アパルトヘイト終了時は15歳くらいの少年。黒人であるがゆえにロクな教育を受けないまま、中等過程修了年齢くらいに育ってしまった少年だ。そんな15歳の君が突然、「今日から黒人も、白人と同じような職種につけることになりました」と聞かされたとしても、それは夢物語。そんな職業選択の自由は現実的ではない。それなりの就職にはそれなりの教育が必要だから。君に可能なのは、単純労働だけだ。
 つまり、身分だけ奴隷から解放されても、他に行くあてがない場合、事実上の奴隷生活は終わらないということだ。これはひとつのグラス・シーリング(ガラスの天井)である。目指すべき「上」はガラス越しに見える。でも実際には、決して行き着けない。奴隷制廃止後のアメリカでも事情は似通ったものだったかもしれないが。
 さて、こうして低賃金労働の一生を義務づけられた君は、景気が悪くなり職にあぶれたら、仕事がありそうなヨハネスブルグに行ってみよう!と思うだろう。そこでも職が見つからない場合、犯罪に手を染めるようになる可能性は否定できん。
 南アフリカの人口は、1994年時点で約4000万、現在は5400万ほど。その約80%が黒人であり、つまり「ガラスの天井」を仰ぎ見ながら一生を過ごさねばならん人々が数千万人いるとなれば、治安が良かろうはずがない。
 アパルトヘイト全廃後に生まれた世代であれば、初等教育の平等は保証されているのだろう。もちろん、どんな場合も親の経済状況は無視できないファクターだし、持たざる者は持てる者より常に不利だが、そのあたりは奨学金の充実でなんとかしたいところ。白人帝国主義者のセシル・ローズがアフリカのダイヤモンド権益——あの忌まわしいデビアス(De Beers)はローズが作った会社だ——で得た悪銭で運営されている「セシル・ローズ奨学金」は、オックスフォード大学なんぞではなく、南アフリカやジンバブエのために活かされるべきではないか。

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