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【シュグ・ナイトとは、既に一つのジャンルである】

 君は知っていたか?

 90年代末から00年代初頭。それはDr.ドレーが99年のアルバム『2001』で復活し、ウォーレン・Gの『I Want It All』やスヌープ・ドッグの『Tha Last Meal』といった好作・良作が相次いで出された頃だ。やがてその勢いは、彼らウェストコースト勢がエミネムも加えて敢行した歴史的ツアー『The Up in Smoke Tour』に結実する。
 要はだな、それに先立つ数年を低空飛行で過ごした西海岸のヒップホップが復興の光を見た時期なのだ。
 ゆえに、数年前の東西対立や2パックの死に起因する一連のネガティヴ要素が時効扱いになった、ということかもしれない。そう、このころから「シュグさま」ことシュグ・ナイトの人物・言動・業績等をモデルにしたorインスパイアされた映画や小説——いわゆる「シュグさまもの」——が、世に出回り始めるのである。
 このブーム(?)、長くは続かなかったが、それでも、これだけの派生作品を生み出した音楽人はそうそういない。しかも、我らがシュグさまはアーティストではなく、プロデューサーでもなく、経営者なのである。
 禍々しくも華々しい破壊力、推して知るべし。


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小説『愚者の群れ』(1999年)
シュグなキャラ=レーベル「ボディ・カウント」の巨体社長「ブーム」
ストーリー=超人気ラッパー「ザ・ディガ」が謎の死をとげる。自殺か? それともライバル・ラッパー、2ダディ・ラージの陰謀か? あるいは獄中にいるブーム社長の差し金か? 黒人探偵ガナーは真相を解明すべく行動を開始する。……2パックとビギー、ついでにフェイス・エヴァンスっぽいキャラクターまで登場させ、実際の事件を本気で翻案した小説っぽいのだが、結末が%!#?でびっくり!

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