小説やドラマなどの作品について 誰かに説明したいとき、
魅力を伝えたいけれど、内容を言い過ぎないように、
どこまで話そうか迷う。
そんな時に思い出すできごとがある。
高校の教員をしていた頃の話。

放課後、学校行事の準備をしながら、生徒たちと雑談をしていた。
ある生徒 A君が、
「フリーター、家を買う。っていうドラマを見てるんですけど、
おもしろいですよ。」と言うので、
「どんな話？」
と聞くと、数秒の間の後
「フリーターがですね、家を買うんですよ。」
「…うん。私もそうかなーと思った。」
横で聞いていた生徒
「おまえ、タイトルそのまま。」
周りの生徒 大笑い。
顔を真っ赤にするA君。

彼の頭には、
「ドラマの内容を端的に説明せよ。」
という設問が浮かんでいたのだろうか。
そんなプレッシャーをかけたつもりはなかったけど。

「誰々が出ていて、こういうことがあって…」と
思いつくまま話し始めるのではなく、
考えて、整理してから発言したところが A君らしかった。
ただそれが、図らずもタイトルそのままになってしまい、かなり恥ずかしそうな様子。

ドラマの話を聞いたときは もう最終話が近く、見られずじまいだったのだが、後日原作である有川浩さんの同名小説を読んだ。
おもしろかった。
ネタバレしていないので、新鮮な気持ちで読めた。
たしかに、フリーターが家を買う話だったよ。