ごはんのおかずをチャーハンにした日

いつものように仕事を終えて、いつも通り家に帰ってきた。とても大変な一日になるだろう・・・と去年の今頃を思い出して、覚悟して仕事に行ったが、拍子抜けするぐらいすんなり業務が終わった。お昼ごはんを通常通りに食べる事が出来る時間に、帰ってきた事に安堵した。

朝、残りご飯を茶碗によそって置いていたのがあったので、それを食べる事にした。本当に軽くご飯が茶碗に一杯。かぶの葉のふりかけで食べた。葉っぱ付きのかぶが手に入ったので、昨日さっと作っておいたやつだ。どちらも分量は少なかったし、とてもお腹が空いていたので、かぶの葉のふりかけが無くなった時点で物足りなさを感じた。しかしおかずは何もない。カップラーメンすらない。

ふと思い出した。冷凍庫には冷凍食品のチャーハンがある・・・と。袋の半分が残っている。

・・・

もうずいぶんと冷凍食品のチャーハンは買っていなかった。10年ぐらいになるだろうか。買わなくなったきっかけは「冷凍餃子事件」だ。原産地問わず、日本で買える食料は安全と思い込んでいた私達に、その事件はとてつもない衝撃を与えた。

「冷凍餃子事件」当時、結婚して、妊娠もしていたので、食にはより一層敏感になった。周りの声なき声という名の圧力もあった。要は旦那に冷凍食品を食べさせるのか?という事だ。手抜きをするなんてとんでもない、と。

とにかく旦那には手作りのごはんを食べさせないといけない、というプレッシャーが自分の中で相当量あった。「冷凍餃子事件」の連日の報道を見る度に「自分で作ったものを食卓で出すようにしよう」と決意した。その時期から冷凍食品を買わない日々が始まった。冷凍うどんすら買わなかった。

冷凍食品と言えばお弁当だ。

子供を産んでから一か月。お弁当作りは休んでいたが、それすら何かいけない事のような気がしていた。抱っこをしないと寝ない、という事は、新生児は寝るのが仕事なので一日中抱っこしていた。ベッドに寝かすと起きるので、夜は抱っこをしながら寝ていた。そして絶え間なく続く授乳。晩御飯を作るのもやっとだった。そんな状況の中、冷凍食品のおかずを使っていれば、お弁当作りに対するハードルは下がったかもしれない。けど冷凍食品を使う事はいけない事だったので、それはしなかった。お小遣いを旦那に渡すとき「今お弁当は、ないしな」と一言、言われた。とてもショッキングだったのを覚えている。言った本人にとっては何でもない一言だったのだろうと思う。今の私なら「じゃあ自分で作りなよ」と一蹴しているだろう。ちなみに結婚してからも妊娠中の共働きの時も、お弁当はすべて私が作っていた。わざわざ付け加える文言でもないとは思うけど、それぐらい言っても罰は当たらないと思う。

産後落ち着いてからのお弁当のおかずは、専業主婦の間はほとんど手作りだった。自分が仕事をするようになって、幼稚園のお弁当も作る・・・という状態になってから、久しぶりに冷凍食品のおかずをいれた。それすら「駄目な事」かもしれない・・・と思っていた。

ちなみに子供の頃は冷凍食品のチャーハンのバブル期だったようで、土曜日、学校から帰ってきた日のお昼ごはんによく「高菜チャーハン」や「五目炒飯」を食べていた。自分でレンジでチンして食べる。その時は全く冷凍食品に抵抗はなかったし、とても美味しかったのをおぼえている。


そんな私が、冷凍食品のチャーハンを買うようになったのは、ほんのつい最近の事だった。

きっかけは、そう。「note チャーハン大賞」の文字だった。チャーハンを題材にした作品を募集するという事で、メーカーの「味の素冷凍食品」さんの冷凍チャーハンに対する並々ならぬ熱意を感じたからだった。運命だとすら思った。noteに食のエッセイを投稿し始めたばかりの私に、冷凍チャーハンを食べて、チャーハンを題材にしたエッセイを書け、書くのだ・・・と、聞こえてきた。

近年の冷凍食品は進化しているはずだ、と思った。あの「冷凍餃子事件」から10年は経っている。私の中で冷凍チャーハンの歴史は約10年間、冷えて止まっていた。冷凍だけに。私と冷凍チャーハンの10年間の冷凍期間を経て、このnoteをきっかけに、冷凍チャーハンを再び食べる・・という行動に出た。私と冷凍チャーハンの隔たりが、今、解凍しようとした瞬間だった。

チーーーーーン

冷凍チャーハンを買う時は、中々緊張した。値段もそこそこするし、自分で作った方が安いのでは・・・と思った。噂では今の冷凍チャーハンはラーメン屋で食べるのと同じ味がする、というではないか。すごすぎる、冷凍食品はそこまで進化しているのか・・・昔の味はまったく思い出せなかったけど、自分の作るチャーハンはラーメン屋の味は出せないので、それだけで買う価値はありそうだなと思った。

購入して、すぐに食べる事はしなかった。価格が価格だけにもったいないな・・・ここぞという時に食べよう、と思ったのだった。冷凍チャーハンは大事に冷凍庫の中にしまわれた。

休日の午前中に掃除を念入りにして、もうすでに疲れてしまった正午。冷凍チャーハンの出番だ、と思った。ああ、ストックしておいてよかった。

冷凍チャーハンを冷凍庫から取り出して、袋裏面の温め方を見る。はっきりと分かりやすく解凍時間が書かれていて、何も考えないでよくて、すぐに理解できた。お皿にざらざらーーーっと、グラノーラをお皿に出す時と同じ音がした。

電子レンジの真ん中に解凍前のチャーハンがのったお皿を置き、扉をしめて温める時間分のダイヤルを回す。

ぶーーーーーーーーーーんという音がして、簡単に作ったスープを温めたり、テーブルにスプーンやお茶を並べたりしながら、出来上がりを待った。

ピーーピーーという音がした。電子レンジの扉を開ける。

いい匂いがした・・・そうこれはラーメン屋で食べるチャーハンの匂いと同じだ。

しゅわしゅわしゅわ、と熱を持って温まったチャーハンの音がした。色も、具材もすべてが出来立てのチャーハンと遜色ない。

食卓テーブルにいそいそと運んで、座って「いただきます」と言ってからスプーンを出来立てのチャーハンに差し込んですくった。

はむっと一口。さらにもう一口。

「美味しい!!!!!!!!!!」

と言葉が自然と漏れた。今まで冷凍食品を敬遠していたのはなんだったのだろうか、それを申し訳ないと思うほどに美味しかった。

冷凍食品のチャーハンをたまのお昼ごはんに出す、という選択肢が増えた。少しだけ休日のお昼ごはんが楽になるだろう。

・・・

それ以来、冷凍チャーハンを買う事、食べる事に抵抗がなくなったので、冷凍庫にストックするようになった。

そして今日のお昼ごはんだ。白いご飯だけで満足できたらよかったのだけれど、そこそこに動いて仕事をした私の胃袋はそれだけでは満足できなかったのだ。おかずになりそうなのは、冷凍庫にある「冷凍チャーハン」だけだった。

邪道だ、と思った。炭水化物ダブルの究極系だとは思う。でも大阪ではお好み焼き定食なるものが存在するし、うどんという炭水化物と、かやくごはんという炭水化物を一緒に食べるし、お寿司といっしょにうどんを食べる。ラーメンとチャーハンだってそうじゃないか。何もおかしい事はないのでは・・・と思いながら、サラサラサラーーーっと冷凍チャーハンをお皿に注いだ。いつものように電子レンジで温める。

温め終了のお知らせの音がした。じゅわじゅわーと音を立てる、チャーハンのお皿を持って、白ごはんの入ったお茶碗の横に置いた。

白ごはんを食べてから、チャーハンの濃い味を後で味わう。

あり、ありだよ。美味しいやん。

出来るなら、チャーハン単品で食べたいけど、今日はたまたま白いご飯だけでは足りなくて、冷凍チャーハンしかなかったから・・・という状況だったというだけ。たぶん、今ここまで読んでくださった方は「ドン引き」していらっしゃると思う。白いご飯のおかずにチャーハンとか・・・と。思ってらっしゃると思う。

家にあるものを食べる、という主婦のお昼ご飯の現実である。

しかし炭水化物ダブルの罪悪感はすごい。こんな生活をしていたら、いくら太りにくい体質とはいえ、ふっくらするのも時間の問題かもしれない。

冷凍チャーハンの解凍前の状態から、解凍後のふっくらいい匂いがする様に、いい感じに変化すればいいんだけどな・・・と思った。


この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

36

masami

ビールとナッツをバケツにいっぱい

食べ物についての雑記やエッセイ。 子供の頃の事。 大人になってからの事。
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。