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給食からみる私と娘のコト

働く主婦の朝は忙しい。何十分、何分、何秒代のスケジュールで動いている。短距離走の記録を更新したい選手も真っ青な、秒刻みの記録更新ができたり、できなかったり。

小学3年生の娘はいつも通り、チーズトーストを無言でかじっていた。娘は朝はパン派である。娘は朝からあまり食べない。本当にパンだけでよくて、あとは果物があればそれを少し。たまに甘いカフェオレを飲んだりするけど。

娘が朝食をいつも通り食べている間、私は旦那のお弁当を作ったり、洗濯をしたり、洗い物をしたり、インスタントコーヒーを自分のためにいれたりしている。

その日は、時間にも自分の心にも余裕があったのか、ふと冷蔵庫にマグネットで貼り付けてある給食の献立表が目についたのだった。目についたのもたまたま今日の日付。普段は娘も私も給食の献立表には興味がない。それがめずらしいかどうかはわからない。給食とメニューがかぶらないように毎日チェックしているお母さんもいるだろうが、残念ながら私はそんなに「マメ」なタイプではなかったようだ。

「今日はカレーともやしサラダ、ふくじんづけ、ごはんやって。カレーやん、よかったなあ」

と、娘にお知らせをした。私の手には豚コマと玉ねぎ炒めに使った焼肉のたれのビンがある。今日のお弁当は豚コマと玉ねぎの焼肉のタレ炒め弁当である。何も考えたくない時の定番メニュー。

「もう!!何でネタバレすんの?楽しみにしてんのに」

私が想像していた答えと全く真逆の、予想外の答えが返ってきたので、冷蔵庫を閉めた後に少し驚いてしまった。

少し考えてから

「ええ???給食の献立を見ずにいたのは、楽しみにしてるからなん?そんなに給食が楽しみなんや、いいなあ」

と娘の横顔に向かって話しかけた。チーズトーストはもう食べ終わりそうだった。

「そうやで、給食楽しみやねん」

にこにこしながら答えてくれた。にこにこしながら学校の事を話してくれるという事は、大きなトラブルもなく学校生活を過ごせている証である。ほっとする。

娘の学校の給食は「自校方式」で学校でおかずを作っている。確かにおいしい。パンも昔みたいに冷たく固くなく、普通のやわらかさだった。2年生の時に給食試食会の手伝いに参加したことがあり、もう何十年ぶりに食べた給食はとてもおいしくて感動した。これなら給食の時間が楽しみなのもうなずける。


私が食べていた給食は、良くも悪くもなく。悪い時のほうが多かったかもしれない。ビン牛乳の牛乳のにおいは耐え難かったし、うまみのないカレーは食べるのが苦痛だった。美味しいおかず=好きなおかずという図式である。(あくまで私の話であるが)

大概がパン食でごはんが月に1回程度。パンは高学年になるとコッペパン二つや食パン二枚になる。そんなに美味しくない上に、女子がパンを2個食べるというのは何故か恥ずかしかった。そんな空気だった。なので給食袋にパンを持ち帰る用のビニール袋をいれて家に持ち帰る事ができた。子袋のジャムやマーガリン、ピーナッツバターがついてる時もあって、私はピーナッツバターが好きだったので、ピーナッツバターがある日は当たりの日だった。はずれの日は夏の暑さで分離したマーガリン。最悪である。給食を残すのはいけない事だったので、パンと一緒に持ち帰って、家で捨てていた。家に持ち帰ったパンは飼い犬にあげたり、おなかが空いた時は自分でトースターで温めて食べた。温めなおしたパンはおいしい。コッペパンの表面が焦げないようにずっと見張ることができなくて、少し黒くなったコッペパンを家にある「ネオソフト」で食べるのは、家に帰ってからの楽しみだった。

好きな給食のメニューは何だった?という話題が飲み会なんかであがることがたまにあると思う。私は「黒砂糖パン(いわゆる黒糖パン)とピーナッツバターが好きでした」と答えている。よく聞くのは「揚げパン」「ソフトめん」少し上の年代の方だと「くじら」というのも聞く。それは好きだった給食というより、くじらが給食に出ていたという話だと思うが。私は揚げパンもソフト麺もくじらも給食で食べたことはないので羨ましいと素直に思った。牛乳が紙パックという学校も羨ましかった。


夕食の時間。娘と二人で食べる事が多い。娘は夕食を食べながら、今日の給食の事をたまに話してくれる。夕食を食べながら、今日の給食を振り返る。私は夕食を食べながら明日の夕食の事を考えるのだから「この親にしてこの子あり」である。

「今日は大学イモやってん。むっちゃおいしくておかわりしてん」

「へえ、おかわりしてんや?すごいなあ、まあサツマイモ好きやもんなあ。よくおかわりしたって聞くけど、女の子の中でおかわりする子いるん?」

「うん、おるで~私は好きなおかずの時は絶対におかわりするねん」

「残さず食べて、おかわりもしてすごいなあ」

「あんまり好きじゃないおかずの時はさいしょにへらしてもらうけどな」

と言いながらニコニコしてごはんに味付け海苔を巻き付けて食べていた。


パンを2個食べるのに躊躇していた私が、おかずをおかわりなんてできるはずもなく、女子がおかわりをするなんてという空気感もあったので、今の娘の学校の環境は昔よりは、私よりはいいと思った。高学年になると少し変わってくるかもしれないけど。




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