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ツールへのこだわり

調理器具にこだわりを持つようになったのは、ここ最近の事。

料理が上手くないうちから、形だけを整えても意味がないからだ、と一応、思っていた。欲しいけど。少しずつ買えばいい。長く使われているものはそうそう廃版にならないから・・・と、自分に言い聞かせていた。

お洒落でシンプルな雑貨屋等でセレクトしているような、ホーローのバットや、鍋等を見ては「欲しいな」と思う。けど消耗品ではないので、そんな軽くぽんっと買えるものではない。何か物を買うのには年々慎重になっていて、なりすぎて2年ぐらい考え続けてるものもある。

それを昨日、やっと購入した。今でも嬉しくて、子供みたいに写真をバシャバシャ撮っていた。ちょっと恥ずかしい。

それは「ファイヤーキングのメジャーカップ」だ。ただの計量カップである。ツールに興味のない方は「???」だろうと思う。

料理研究家のケンタロウさんが使っていたのを見て「むっちゃかっこいいやん、いつか買いたいな」と思ってテレビを見ていた。その番組は「男子ごはん」だった。随分前の話だ。

でも今は一つ計量カップがある。プラスチックのシンプルなやつ。上からでもメモリが見えるので使いやすい。不満はないので「またいつか・・・」と思い「自分のいつか買いたいものリスト」に加えた。

それから、もう何年使ったか分からなぐらい、現役だった計量カップの持ち手が壊れた。その上、使いすぎてプラスチックが白くすれて透明じゃなくて、白になっている。とうとう買い替え時か・・・と思ったが、まだ使えるし・・・と思って使っていた。

今がファイヤーキングチャンス!!!(そんな言葉はない)と思ったが、実物を見てから買いたい、と思っていたのでネットでぽんっと買うのは止めておいた。

もう壊れてから数年である。使えているから、使われている、大事な私の計量カップ。ある日、地元の雑貨屋であの憧れの「ファイヤーキングのメジャーカップ」を見つけた。

「おおおおおお!あの方があのファイヤーキング様!」と、何かの神を(ファイヤーキング神とでも言えばいいか)拝むような感じで、うやうやしく、しゃがんでファイヤーキング神を見た。分厚い硝子で出来ていて、どっしりとしている。かっこいい。かっこいいやないですか、ファイヤーキング様。ああ、買いたい、けど硝子だ。しかも少し重い。そのままの態勢で少し考えた。

私は、水に濡れた手で食器を触ると、たちまち落として割る、という特殊能力がある。それがお気に入りな物であればあるほどだ。半べそをかきながら、かけらを集めた事は、数えきれないぐらいある。

・・・ガサツの3文字が皆さんの頭に過っただろう。そう、ガサツ・・・だ。否定はできない。

結果、購入はやめた。落として割るかもしれない・・・という不安要素があったからだ。欲しかったら、また出会える。これが約1年前の事である。

そして今、手元に「ファイヤーキングのメジャーカップ」がある。昨日も悩んで悩んで、隣にいる旦那にも相談した。「買いたいなら買えばいい」という事だった。その言葉に少し後押しされた。しかし割る可能性が拭いきれない。旦那もそれは危惧していた。割った食器のかけらを一緒に片づけた事が、数えきれないぐらいあるからである。でも後押ししてくれた。

慎重に持って帰って。慎重に洗って、前の計量カップを置いていた場所に置いた。「ファイヤーキングのメジャーカップ」は透明でキラキラしていた。持ち手もちゃんとある。

今までありがとう、お疲れ様。と、白くなった計量カップにお礼を言った。


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