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お弁当

「お弁当を作らないと、600円渡さないといけない・・・何としてでも作る・・・」

必死の思いでずるずると布団から這いずり出る。メガネをつける。転げ落ちないように気を付けながら階段を下りる。起きた直後の歩く足音はなんでこんなにも大きいのだろう。

頭がぼさぼさのまま、炊き立てのごはんをお弁当箱によそう。お弁当箱の蓋を閉める時間までに、しっかり冷めないと傷みの原因になるからである。卵焼きを焼く。卵焼きは中までしっかり火を通さないといけない。ウィンナーを焼く。ほうれん草を固めに湯がいたのに醤油と鰹節をかける。

もし旦那の定年までお弁当を作るとなるとあと30年はある。娘が中学生になる時に「おいしい給食」が開始されていなかったら、中学、高校と最低6年間分は「女の子のお弁当」がプラスされる。

お弁当、お弁当、お弁当・・・お弁当というカテゴリー、市場はここ数年で凄い勢いで拡大している。お弁当をテーマにした料理本は新学期シリーズになると書店には平積みされる。お弁当だけをテーマにしたブログの数も、カテゴリーも多い。「弁当男子」とか「おっさん弁当」とか何故か男性がお弁当を作る事に対して注目した言葉も最近生まれた。そしてキャラ弁。主に幼稚園児や保育園児のためにお母さんが(お父さんも)工夫と趣向をこらして作る。出来栄えはお見事である。そのキャラ弁に対する色んな思いを写真に撮ってブログやSNSに投稿する。うーんインスタ映え。フォトジェニック。ここ数年での100円ショップのお弁当グッズのコーナーの種類の豊富さには目を見張るものがある。かわいい物は昔からそこそこあったが、最近ではおしゃれなフォント(よくよく見るとグーグルフォントなのだが)でデザインされたおかずカップ。おかずカップの種類が多すぎて、選ぶとき何が何だか分からなくなる。ナフキン、お箸、お弁当箱、タッパー、ピック、使い捨てのランチボックスの種類もすごい。もう何年も前から今でもブームなのは「まげわっぱのお弁当箱」である。木の本来の調湿作用により余分な水分を吸収してくれるので、冷めたごはんでもふっくら美味しく頂ける。ずっと私が欲しがっている物の一つで、自然な形フォルム、色合い、私の好みど真ん中なのであるが、メンテナンスの面を考慮すると中々手がでない・・・ズボラな私にはハードルが高いのだ。しかし曲げわっぱのお弁当箱に中身を詰め、いいカメラで写真を撮れば「お弁当インスタグラマー」の一員になれるかもしれない。(そんなジャンルはないと思うが)

と、ざっと私が書けるだけのお弁当のカテゴリーについて書いてみた。もっとお弁当にまつわる商品はある、が書くと長くなるのでこのぐらいにしておく。私が言いたいのはこんな事ではない。お弁当を毎日作るというのは大変な事である。中身に何を入れるかと考える作業はスーパーで買い物をする時から始まっている。栄養のバランス、色合い、傷みにくいおかずにする・・・などの事情も考慮しないといけない。しかも作らないと600円渡すことになる・・・このお弁当を「作る側の何らかの事情で作らないとお金を渡す」というのは何もうちの家庭だけではなく、ほかの家庭も同じ事をしていると最近知った。これはほとんどの家庭が実践しているルールであるようだと、私は勝手に思っている。お小遣い事情もあると思うが。別に600円渡すことに関してはいいのだ。私は異論はない。しかし長い年数作ることになる・・・途方もないマラソンのようである。


なので考えた。うーんと考えた。お弁当作りを楽しくする、毎日のお弁当作りが苦にならない方法を。うーーんと考えた。そしたら閃いたのである。

国から「手作りお弁当手当」を世帯の「妻」の口座に支給する。

もちろん、手作りお弁当を作る側が「夫」なら夫の口座である。

すごいアイデアである。もうびっくりだ。自分が天才かと思った。おそらくこの案は物凄い経済効果を生む。お弁当市場はさらに拡大し、そうなるとお弁当が「OBENTOU」として無形文化遺産になる日も近い。

ただ支給されるには最低何年間(何年間の年数をどうするのかは専門家の皆さんに考えて頂くとする)のお弁当を作ったという実績が必要である。それはそうだろう「お弁当作るから頂戴」ではどんな家庭も貰い放題である。金額もどうするのかは最終的には政治家の皆さんが考える事になるであろう。

お弁当を作ってますよと毎日、国に報告するのは「スマートフォン」や「ケータイカメラ」で撮影する。もちろん撮影日時は偽ってはいけない。写真を専用のメールアドレス宛に送信する。同じ内容のお弁当を撮影に撮影を重ねるとか色んな詐欺まがいの行為が横行する可能性もある、がチェックするのは人の手ではなく、すべてコンピューター管理だ。AIやスーパーコンピューターやらの技術の発展はすごいものであるし、あと数十年もすれば労働力はAIに奪われると言われているぐらいだからそれぐらいお手の物だろう。

外食産業はどうなるのか・・・という問題がでてくるが、おそらくみんながみんなお弁当を作るわけではないので、ランチ時の外食が極端に減るという事はないと思うが・・・実際にやってみないと分からない。

・・・考えれば考えるほど、色んな問題も出てくるが、そんなのやってみないと分からない。今までの歴史をみてもそうじゃないか。「ありえない」だの「そんなの上手く行く筈がない」と言われた政策が実現し、今となっては当たり前になった事がたくさんある。何か新しい事を始めるときは、数多くの反対や意見があり、それを議論して、実現していくのである。歴史がそれを証明している。


終わりに付け加えておくが、これは大した知識もない、ただの一般の主婦の現実逃避の妄想である。









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