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新説: 最後の審判 (将棋) 概要編

詰将棋界における20世紀最後にして最高の問題作、「最後の審判」。1997年1月、詰将棋パラダイス誌にて発表。作者は縫田光司氏。

この作品が登場したときの衝撃は、きっと将棋ファン以外にも理解してもらえるだろう。将棋は約400年にわたる歴史を持ち、多数の愛好家がいるゲームである。とてつもなく奥が深いゲームだが、それだけ遊び尽くされていれば、まさかそこにルールの矛盾が存在するなどきっと誰も考えもしなかっただろう。そんな将棋の「ルールの矛盾」を発見し、しかもそれを詰将棋という作品の形に具現化して発表されたのが本作なのだ。

当時の僕は9歳。この詰将棋パラダイスという本を初めて買ったのが1997年3月だったから、ちょうどその発表の直後、誌面上でにぎやかに議論されていたところだった。しかも普通、詰将棋の議論といえば、その難易度や芸術点の高さについてだが、今回は違う。この詰将棋がルール上そもそも成立するのかどうか、について、あーでもないこーでもないと話しているのだ。全くとんでもない本を買ってしまった、とその時の僕は思った。

とはいえ、その議論は発散していた。9歳の記憶なのであやふやなもので申し訳ないが(今度実家に帰ったら読み返してみようと思う)、誌面上で一応は「成立」とされたものの、十分に論点が整理されたようには見えなかった。結論から言うと、当時は本将棋(普通の対局する将棋)において信頼すべき公式のルールブックがなく、また、詰将棋のルールにも詰将棋独自のルール以外は「本将棋のルールに従う」とされているので、結論の出しようがなかったというのが正しいらしい。本将棋の方でも話題にはなったが、普通の対局で起きうる状況ではないので、解決はそこまで重要視されなかったものだと思う。

そんな詰将棋界ひいては将棋界の最大の問題について、22年経った最近ふと思い出した。今だったら日本将棋連盟の公式ホームページにきちんと公式のルールが載っていてもおかしくないな、と。しかし、調べても残念ながら出てこない。かわりに、将棋ガイドブックという書籍が日本将棋連盟から公式に出版されていることを知った。2003年、なんだずいぶん昔じゃないか。

作者の縫田氏のホームページにも以下の記述があることを後から発見した。

(2004年3月15日追記)2003年11月に、『将棋ガイドブック』という本が日本将棋連盟より発行されたようです。 これには将棋のルール(日本将棋連盟が発行しているのだから、公式ルールということになるのでしょう)も記載されているとのことですが、そこでは「詰み」や「禁手」についてどう定義されているのか、興味深いところです。 まだ内容を確認できておりませんが。

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この作品を理解するためには、以下の2つのルールの理解が必要だ。

・打ち歩詰め
・連続王手の千日手

大雑把に説明すると、打ち歩詰めというのは、歩を打って王を詰ますのは反則というルールで、連続王手の千日手は、王手を続けながら同じ局面が何度も繰り返される時は、王手をしている方が違う手を指さなければいけないというルールだ。普通はこの程度の理解で十分だが、実はこの程度の定義では不十分で、この2つを組み合わせると矛盾が起こってしまう。

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僕はさっそく「将棋ガイドブック」を手にした。打ち歩詰めや連続王手の千日手の定義を注意深く読み、論理を構成した。

結論から述べると、このガイドブックからも、明確な結論を引き出すことはできなかった。しかし、素直にルールを読むとこうなるのではないかという、80%くらい自信のある結論を出すことができた。

この後は、打ち歩詰め、連続王手の千日手について、ガイドブックを参照して説明しながら、自分の解釈としての結論を出そうと思う。将棋を知らない人にもわかるように説明するつもりだ。マガジン形式で投稿していこうと思うので、最後まで読んでくれる人はぜひ登録してほしい。

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