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神は前立腺を創りたもうた(か?)

 前立腺という器官がある。男性器のオーガズムを司っており、女性器におけるスキーン腺(いわゆるGスポット)と相同である、とウィキペディアにはある。あとは精液の成分を作ったり、排尿なんかも担っているらしい。そんな前立腺であるが、わたしには常々疑問があった。

 なんで肛門から刺激すると気持ちよくなっちゃうの?

 残念ながら(?)わたしには前立腺がない(多分。エコーで見たら子宮と卵巣が見えた)ので、ほんとうに気持ちよくなっちゃうのか、どんな感じなのかは検証不可能なのだが、どうも聞いた話によるとそうらしいのだ。
 別に気持ちよくなっちゃってもいいのだが、この世には創造主という存在を信じる人々がおり、その考え方に乗っ取れば前立腺も創造主がちょちょいとあの場所につけたに違いない。そうなると、俄然その意図が気になってくる。だって偶然あそこにくっついたわけではないのだから。

 創世記で人間を創った神は、「生めよ、ふえよ、地に満ちよ」(創世記1:28、『聖書 [口語]』日本聖書協会、1955年)と言ったらしいので、人間の生殖を促進するべくペニスとヴァギナに気持ちよくなっちゃう器官をつけるのはわかる。でも肛門は排便を担う器官であって生殖とは関係ないのだ。

 それだけならまだいいのだが、「創世記」の中で、膣外射精を行ったオナンは神の意に反したとして、神によって殺される(創世記38:9、38:10)。このことは、膣以外で射精することを神が否定すると読める。

 これらのことから、「男性の肛門にペニスを挿入してその中で射精する行為」や「肛門内の前立腺をなにがしかの方法で刺激してオーガズムに達し、膣以外に射精する行為」は、神の意に反すると考えられる。
 うーむ。一見すると人体の仕様の不具合というか、禁じるくらいならそういう風に作らなければいいのに、と思ってしまう。

 しかし、神にはうっかりとかないと思うので、なんとかその意思をくみ取るべく頑張ろう。

・男性器スイッチ説
 生殖のためには男性器をスイッチオンする必要がある。前立腺はそのための隠しスイッチであるという説。体表面にスイッチがあると誤作動を起こす可能性があるため、その予防として穴にスイッチを創った。体表面にスイッチがある(開発する)人もいるけど……
 意外としっくり来る。しかし、実際に生殖のために肛門を使ってスイッチオンする話をあまり聞かない。

・人類に課された試練説
 神の言いつけを守って肛門性交をしないでいられるか、試されているという説。なんなら人間の堕落の程度を測る指標にもなりうる。「おまえ!気持ちいいことに気づいたな!」みたいな感じで罰せられる。わりと神がやりそうな感じのことである。

・創世記聞き間違い説
 そもそも、「創世記」を書いた人が神の言葉を聞き間違えたり聞き逃したりしていて、前立腺の存在についての話に抜けや間違いがあるという説。
 たしかに、神は無限だがその言葉を聞いて記述した人間はどんなに一般人より神に近くてもやはり有限な人間なので、そういうこともありそうだな、と思う。ただ、この説を採用してしまうと新たな預言者が現れるまで、前立腺を神が創りたもうたその意図をわれわれが知ることはできないので残念だ。新たな預言者がちゃんとその話を聞き取ってくれるかもわからないし……

・肛門性交禁じてない説
 オナンが怒られたのはその時の個別の事案について神の意に反しただけであり、普遍的に避妊や肛門性交は別に禁じられていないという説。
 神が肛門性交の選択肢を人類に与えているなら、前立腺があることになんら矛盾はないだろう。

 と、ここまでいくつかの可能性を考えてみたのだが、一人で考えることに限界を感じつつあるので、アンケートを実施し皆さんのご意見を聞きたいと思います。
 下のリンクからアンケートフォームを開くことができますので、じゃんじゃんご回答ください。

神はなぜ前立腺を創ったかについてのアンケート

 いただいた回答をご紹介したり、それらを踏まえてもう一度考えたことを怪獣の媒体でまた書きたいなと思っています。ウェブか紙媒体かその両方で公開する可能性がありますのでご承知おきください。
 皆さんからのご意見をお待ちしております。

文:吉田瑞季
本人による紹介:妖怪・猫檀家
鳥居による紹介:「文化が危険にさらされるとき、私が憤りを覚えるのは、文化が滅ぼされうるというのに、私の生が奪われないということである。私は自分自身に憤るのである」(ブスケ『傷と出来事』より) みたいな人。

この記事は2018年11月に文フリ東京で配布した怪獣のフリーペーパー「Quaijiu Free 1」に収録した文章の再録です。

怪獣歌会アドベントカレンダー企画1日目の記事でもあります。

2日目の記事はこちらです


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