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純喫茶「愛」~ラブフェアリーのお悩み相談~

【ラブフェアリー(以下L)】ラブラブリ~♡ 愛の妖精ラブフェアリーなり~。
めっきり寒くなったラブね。ラブフェアリーはこの時期はラブを狩りに夜の街に繰り出すことが多いラブ。脂がのったラブが大漁ラブ。うまいラブ。

今日は人間から寄せられたお悩みにラブフェアリーが答えていくラブよ。
ちなみに吉田は「トッケビ」※を見てるすきに捕まえておいたので今日は出てこないラブ。
目次を置いておくから興味のある話から読むラブ。

※「トッケビ」=韓国ドラマ。イケメンが出てくる。

1.モテたくない
2.セクシャリティーの話
3.好きな人の幸せと私の幸せ
4.この愛は暴力ですか

1.モテたくない


https://note.mu/quaijiu/n/na03e12689c5b
前回、顔がいい人間が好きだという吉田にツッコミを入れたら、川野からこんな悩みが送られてきたラブ。長いラブ……まあでも要約すると

「モテたくない」

ってことラブね。単純に見えて難しいラブ~

【吉田(以下Y)】わたしはモテたい
【L】あっ、吉田!? いつの間に逃げたラブか!?
まあいいラブ。モテたくない人間とモテたい人間、両方いたほうが話がしやすいラブ。
【Y】愛されたいよお~
【L】おまえ前回「他者の愛も自分の愛もコントロールできない」って自分で言ってたラブ?
これを前提にしたら、「モテたくない」も「モテたい」も「無理」ってことで終了ラブ。悩む必要ないラブ。あきらめるラブ。
【Y】それはそうだけど殺生な。人間なんてそうそう一貫性を保てないよ~ ていうか早すぎ。
【L】確かにここで終わったら企画倒れラブ。仕方ないラブね~
「モテたくない」なら「モテる原因」を、「モテたい」なら「モテない原因」を排除したらいいラブ。
モテたくない人間がモテる原因が「顔がいい」とかなら、万人受けしないメイクとかファッションにしたらいいラブ。マッドマックスのフュリオサとかイケてるしなめられないラブ♡おすすめラブ。
【Y】うーん、フュリオサはイケてるけど、自分がそれをしたいかどうかは人によるんじゃないかなあ……
【L】えー、じゃあ、人間と会うからモテてしまうラブ?森の奥とか無人島とかに住んだらいいラブ。「モテたくない女」が主人公の漫画『主に泣いてます』では、主人公の泉は無人島に移り住んで自由になったラブよ。
【Y】それもなあ……無人島ではできないことをしたい人には無理じゃん。
【L】キエーッ!ああ言えばこう言うラブ! ありのままで好きに生きてモテを回避したいとでもいうのかラブ!?
【Y】そうでしょ! わたしだってありのままに好きに生きてモテたいわ。
【L】とんだ甘ちゃんラブ。
【Y】そうはいっても自分が好きじゃない格好はしたくないんや……
【L】それなら他人の行為に対する認識を変えるしかないラブ。川野の話を聞いてて思ったラブが、川野は愛がどこか相互的なものだと思ってないかラブ?人の好意を、いつか返さなければいけない負債のように思っていて、自分にはそれができないという負い目がどこかにある気がするラブ。
違うラブ。愛はぜーんぶ独りよがりで、投げっぱなしのボールと同じラブ。キャッチボールになんかならないラブ。勝手に飛んでくるボールのことなんて気にしなきゃいいラブ。
【Y】そうかもしれないけど、好意を投げつけてくる人たちがキャッチボールを求めてくるから困ってるんじゃないの?
【L】それはもう川野の問題じゃなくて投げてくるやつらの問題ラブ。悪人ラブ。有罪ラブ。
【Y】それはそうだけどさ、今はいざ投げつけられたら痛いという話を……
【L】残念ながら、悪人にいきなりボールを投げられたときによけられるかどうかは運ラブ。突然の暴力から身を守る方法なんてないラブ。悪人をこの世から消すしかないラブ。
【Y】救いがない。
【L】おまえたちにできることは、他人にいきなり好意をぶつけたり、好意を理由にして相手をコントロールしたり、思い通りにならない相手に怒ったりすることは悪だと言い続けることと、犯罪者を刑務所送りにすることくらいラブ。
【Y】もっと何とかする方法はないのかなあ。
【L】他人の心をコントロールすることはできないラブ。だからおまえのモテたいという悩みも自動的に終了ラブ。
【Y】えー
【L】だいたいおまえの「モテたい」だって「誰でもいいから愛されたい」じゃなくて「自分が好きな人に愛されたい」ってことラブ?そんなの好きなやつ本人に聞いたらいいラブ!人間関係なんて最後は一対一ラブ。普遍的な法則なんてないラブ。聞いてみて愛されてなかったらおとなしく消えるラブ。
【Y】しくしく。
【L】わかったら「トッケビ」の続きでも見てるラブ!

おすすめの漫画

東村アキコ『主に泣いてます』
【L】「タラレバ娘」でアラサー女子を敵に回した東村アキコの漫画ラブが、まあこれは面白いラブ。アセクじゃないけど、モテたくない美人が苦しむ話ラブよ。顔で人を好きになりがちなやつらは読んで反省するラブ。

ヤマシタトモコ『ひばりの朝』
【L】自分の容姿にふりまわされる女子中学生日波里と、彼女の外見に惑わされて中身を一切見ようとしない人々の話ラブ。しんどいラブ。全ページしんどいラブ。薦めといてなんだけどメンタルがちょっとでも弱ってたら読まないほうがいいラブ。この世はクソだ!と叫びたいときに読むラブね。

次のお悩みラブ!

2.セクシャリティーの話

【L】画像で送られてきて、テキストに打ち直すのがめんどくさかったからそのまま貼ったラブ。そういうこともあるラブね。
ラブフェアリーのファンになってくれてうれしいラブ。この調子でジャスティン・ビーバーくらいフォロワーを増やしたいラブ~
セクシャリティーの話ラブね~ ラブフェアリーは妖精であってジェンダーとかセクシャリティーとかの専門家ではないラブから、「まやかしラブ!」とかは怖くて言えないラブ。ていうか専門家でもそういうこと言っちゃいけないラブ?
セクシャリティーは「子供のころから自然とわかる」っていう人もいるし、「わからない」っていう人もいるラブ。そもそもシスジェンダー×ヘテロセクシャルとして一生を終える人たちには「わかる」っていう過程もないことが多いんじゃないかと思うラブ。
シスジェンダーかつヘテロセクシャル(「普通」ってやつラブね)として生きてきても、成人してだいぶたってから同性のパートナーが見つかる人もいるし、多分みんな死ぬまでわかんないままラブ。
そこにロマンティック概念も投入すると、本人はともかく他人がどうこう言える話じゃなくなってくるラブ。アイデンティティの問題として悩んでる人に、恋愛的指向や性的指向の種類について「こういうのもあるラブ」って助言することはできるけど、「おまえはこれラブ!」っていう権利も能力も、誰にもないと思うラブ。
人間もセクシャリティーについてはこのごろ一生懸命研究してるみたいラブ。まだまだ新しい概念ラブから、どんどんいろんなことがわかったり、定義されたりしていくラブよ。
そうやって、自分自身にもわからない自分のことが、だんだんわかるようになっていくかもしれないラブ。それがおまえが望む答えかどうかはわからないラブけど、楽しみにしてるといいラブ。

おすすめの映画
『私と彼女(Io e lei)』
【L】これ、日本では多分イタリア映画祭とかいくつかの映画祭でしか上映してなくて、今後日本語字幕で見られることあるのか分かんないラブけど、いいレズビアン映画ラブ~ 中年レズビアンカップルがふとしたことですれ違うラブけど、片方が結婚歴あり、子持ち、同性との恋は今のパートナーが初めてで、自分でも「レズビアン」とか「バイセクシャル」というアイデンティティがいまいちしっくりこないまま恋愛とパートナーシップをやってるラブ。これはフィクションだけど、そういう人間も結構いる気がするラブね。

次ラブ。

3.好きな人の幸せと私の幸せ

「こんばんは、ラブフェアリーさん。皆様のアドベントカレンダー、毎日楽しみにしています。
ラブフェアリーさんに質問です。
好きな人の夢が叶いそうです。嬉しいことですが、好きな人が夢を叶えると、私の今の夢が叶わなくなります。好きな人の夢が叶うことを素直に喜んで応援できない自分が情けなくて悔しいです。どうしたらよいでしょうか、よろしければご助言ください。
明日からのカレンダーも楽しみにしています。」

ラブフェアリー、こういう愛大好きラブ。
ラブフェアリーが好きな歌に、ミュージカル「レ・ミゼラブル」の「On my own」があるラブ。ぜひ英語の原詩を読みながら聴いてほしいラブ。

これは登場人物のエポニーヌがかなわぬ愛について歌ってる歌ラブけど、

Without me
His world will go on turning
A world that's full of happiness
That I have never known

「わたしがいなくても/彼の世界はうまくゆく/わたしが知りもしない幸福で満たされて」という歌詞があるラブ。
悲しいラブ。でもラブフェアリーはここにちょっとの幸せを感じるラブ。好きな人が幸せになる幸せラブ。
エポニーヌの恋はかなわなくて、恋の相手は彼女とは関係ないところで幸せになるラブ。それをエポニーヌもよくわかってるラブ。それでもエポニーヌは「彼を愛してる……彼を愛してる」と歌い続けるラブ。エポニーヌはそれで誰かを恨んだりしないラブ。
自分の恋はかなわなくて悲しくて、恋の相手は自分のことも知らずに幸せになって、でも彼の幸せはうれしくて、悲しくてもなお愛し続けるラブ。

自分の夢がかなわないのだから、残念さや悲しみを感じたり、好きな人と同じ気持ちになれないことが辛かったりしても、後ろめたく思う必要はないラブ。それが自分の気持ちラブ。大事にするラブ。そのうえで、好きな人を好きでいる喜びや、好きな人の幸せもめいっぱい感じるといいラブ。
まあ、ラブフェアリーはエポニーヌみたいに他人のためにすべてを投げうつヒロインよりも、おのれの欲望のためなら何でもやるスーパーヴィランが好きだったりするラブ。エゴ、だーい好きラブ!世界征服する悪の帝王みたいな気持ちで生きてみるのもいいかもしれないラブ。エポニーヌみたいな愛こそ、究極のエゴっていう気もするラブ。

おすすめの映画


【L】『ミニオンズ』は、謎の黄色い生命体ミニオンがとにかくかわいいし、フェミニズム的悪党スカーレット・オーバーキルが超いけてるラブ。『怪盗グルーのミニオン大脱走』は悪事をやりたいミニオンたちと、悪党を引退した元怪盗グルーが喧嘩別れしちゃうラブ。ミニオンズが出てくる怪盗グルーシリーズは全体的にちょっとアメリカ的家族主義が強すぎという気もするラブけど、ちょっと悪い子になって笑いたいときにさいこうラブ。

次行くラブ~

4.この愛は暴力ですか

性別移行していないトランスジェンダーの身体を愛することは暴力でしょうか?自分は男性の好きなルックス、女性の好きなルックスというものがあります。たとえば私が「この人は私の好きな男性のルックスだな」と思ってもその人の性自認が女性の場合、そのルックスへの愛は暴力ですか?

【L】これは怪獣メンバーの山城からラブ。
どんな愛もいつもどこかで暴力的ラブ。「モテたくない」への回答でも言ったけれど、投げっぱなしのボールみたいなもんだからかもしれないラブ。キャッチしたりよけたりできたらいいけど、急所に当たると痛いし死んじゃうかもしれないラブ。
この質問で問われている、「トランスジェンダーの人の、性自認とは違う体を愛すること」というのは、そういう意味ではとても暴力的に思えるラブ。おそらくその人たちがずっと葛藤してきたまさにその部分を愛することは、急所にボールを投げ込むのと同じくらいやばいことな気がするラブ。
一方で、「好きになっちゃう」という問題があるラブ。暴力的だとわかっていても、「好き」という気持ちは生まれてきちゃうラブ。愛とボールが違うのは、愛は勝手に生まれて気がついたら飛んでいっちゃってることがあるってことラブね。勝手に飛んでいったボールが誰かの急所に当たってしまったら、ボールの生みの親は罪を問われるラブ?こういうのは法学とか判例とか、あるいは倫理学や神学で議論されまくってると思うラブ。でも、とにかくいえることは、傷ついた人は確かに存在しているってことラブ。
正直、ラブフェアリーはこの問題に一般化した答えが出せるとは思わないラブ。一対一の生身の人間がそれぞれ答えを出すしかないと思うラブ。ちょっとずるいラブ?
性別移行していないトランスジェンダーにもいろんな人がいるラブ。身体のもつ性別の「らしさ」とどうつきあってきたのか、他者から向けられる視線とどう向き合ってきたのか、いろんな場合があると思うラブ。愛する方の人間も多様ラブ。人対人の関係もいろいろあるラブね。きっと、それらの要素の一つでも違ったら同じ答えは出ないラブ。
だから、それぞれの場合について愛の暴力性とか愛を投げつけられる人の急所や痛みのことをちゃんと考えることしか、人間にはできないんじゃないかなあラブ。
いうまでもなく、自分が好きな状態のままでいてほしいなんて言っちゃダメラブ。他人をコントロールしようとするのは悪ラブ。

で、山城からはもう一つ質問が届いてるラブ。

次回は吉田さんではなくラブフェアリー様が書くんだっけ。ラブフェアリー様にはtwitter経由で既に質問をしたので、吉田さんに質問をしますね。この前みんなだいすきジュディス・バトラーの講演会行ったら内容とか理論より先に「美しい~!」が感情として想起されてしまいました。私はルッキストですか?

これは吉田宛ラブね?吉田!吉田ー!

【Y】コン・ユ、かぁっこいい~♡♡
【L】ほら、ちゃんとアドベント交換日記を回すラブ!「トッケビ」見てる場合じゃないラブ!
【Y】見てろって言ったり見るなって言ったり、はっきりしてよね!
【L】いいから答えるラブ。ラブフェアリーは小腹がすいてきたからラブ狩りに行ってくるラブ~ みんな、さよなラブリ~♡

【Y】行ってしまった……
ルッキズムかどうか、っていうのを顔大好き人間のわたしに聞いてどうするんだという感じもしますが……
内心で美しいな~と思う分にはいいんじゃないでしょうか。べつにジュディス・バトラーという人間の本質が思想や言論や運動のみにあるわけでもなし、外見など様々な要素も含めてその人だと思うし。
わたしは大学時代「先生の顔がめっちゃ好き」(顔以外も好きだったけど)という理由でドイツ語と美学の勉強めちゃめちゃにやった人間なので、「顔が好き」から始まる学びとかあるし……
倫理的な善悪については山城さんとわたしの考え方が全然ちがうからわたしが「悪じゃないよ~」って言っても納得してもらえないかもなあという気もする。
わたしは「誰がどれくらい傷ついたり損なわれたりするか?」に重きを置いてしまうけど、山城さんは「行為には普遍的に善悪がある」って考えてる気がして、その前提からして戦いが始まる予感があります。

ラブフェアリーがたっぷりお悩み相談をやったので、めちゃめちゃ長くなってしまいましたね……アドベント企画も折り返し、長すぎて読者が離れないことを祈るばかり。

次回は、文フリ配布ペーパーの再録です。
皆さんは、ピンク好きですか?わたしは幼少期完全に逆張りで青が好きって言ってました。好きなセーラー戦士はセーラーマーキュリー。
母親や祖母もピンク嫌いで「中性的な」服を着せられがちだったのですが、なんか変な茶色いスウェットとか着せられてブチ切れた思い出があります。

今は好きな服を着て、好きな顔をしていいはずだけど、ちょっと迷ってしまう自分もいる。どんな色を着て、どんな顔で生きていったらいいのでしょう?ねえ、川野さん。

この記事は怪獣歌会アドベントカレンダー14日目の記事です。

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