見出し画像

“紳士淑女のみなさま、これこそがゴールです”「マラドーナ独白」読書記

アルゼンチンが優勝した1986年のメキシコW杯の一部始終をマラドーナがしゃべりまくる。何度読んでも胸がジンと熱くなる。

マラドーナの小刻みなタッチ、予測不能さ、躍動感溢れるプレースタイルは、しゃべっても同じで、文章からも十分に伝わってくる。
激情、速いテンポ、反骨心、遊び心とユーモア、自由。マラドーナの魅力が詰まってる。翻訳の宮﨑真紀さんは素晴らしい仕事をしたのだと思う。

出色は、イングランド戦での伝説の5人抜きゴールを本人が解説しているところ。ユーモアを交えた熱い話に涙が出た。

マラドーナ - 今世紀最高のゴール

何度も何度も見たシーン。パスを受けトントントンと軽い3タッチで身体を反転させ2人を置き去りにしてゴールに向かう。ここが一番好きだ。非凡すぎるアイデアと軽やかすぎるトラップ。アルゼンチンタンゴが流れ出すようなスタッカート。イングランドの2人がトラップ(罠)にかかったと気づいた時には置き去り。情熱的なメロディに乗り、マラドーナが全速力でスルスルと敵をかわす。ゴールキーパーさえかわして足先でチョンとボールに触れてゴール!まさに音楽的、タンゴ的なフィニッシュだ。

もっとも、マラドーナ本人はタンゴではなく、実況という音楽が流れるようだ。
「あのゴールのことを思うと、音楽が聞こえてくる。ビクトル・ウーゴ・モラーレスの実況という音楽だ」

ビクトル・ウーゴ・モラーレスの実況をこの本から引用して読書記を終える。

「ディエゴにボールがパスされた。マラドーナがボールを持った。2人がディエゴにつく。マラドーナがボールを蹴る。サッカーの世界的天才がピッチの右方からドリブルを始め、今3人目を抜き、ブルチャガにパスするのか!いやまだマラドーナだ•••••天才、天才、天才•••••タ•タ•タ•タ•タ•••••ゴオオオーーーール!ゴオオオーーーール! ああ、もう泣きたい!神よ!ビバ•サッカー!ゴラッソ!ディエゴオオオ・マラドオオオナ!ああ、申し訳ない、だが泣けてくる!マラドーナ、忘れられないロングドリブル、永遠に歴史に残るプレー、まさに彗星だ!いったいどこの天体から来たのか?あんなに大勢のイギリス人を抜いて、国をひとつの握り拳にした!アルゼンチンのために叫ぶ!アルゼンチン2点、イングランド0点。ディエゴ、ディエゴ、アルマンド、マラドーナ!神よ、感謝します、サッカーのために、マラドーナのために、この涙のために、この試合のために。アルゼンチン2点、イングランド0点」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?