メクネス

アザーンの音響空間ーUAE&アメリカの作曲家モハメド・ファイルーズ

「眠りこけた街」の異名を持つモロッコの古都メクネスの旧市街で早朝に聴いたアザーンの響きが忘れられない。「アザーンاذان 」とは礼拝の呼びかけの声のことで、街じゅうにある各モスクの拡声器から1日5回聴こえてくる。特に早朝の澄み切った空気に、四方八方からちょっとずつ時間をずらしながら、いろんな声質、間、音程の複数のおじさん(ムアッジンمؤذنと呼ばれる)の呼びかけ声が聴こえてくるのが素晴らしい。これを毎日・毎回ナマでやっているのだから驚きだ。「礼拝は睡眠に勝れり」(早朝アザーンで唱えられる一節)。まだ4時台でもこの音響空間を体験するために早起きして誰もいない屋上に上がりたい。壮大なサウンドスケープ。やがて、にわとりや犬が起き出して、いつもの街のバイクや人の声が聴こえはじめる。

↑写真はメクネスの朝 ©️MIHO WATANABE

そのアザーンを題材にした室内楽作品がある。モハメド・ファイルーズMohammed Fairouz محمد فيروز、

1985年UAE(アラブ首長国連邦)生まれニューヨーク在住の作曲家による「リタニ Litany」である。コントラバスと管楽器アンサンブルによる作品で、アザーンの声と街の喧騒が交感し合うような響きが興味深い。

Mohammed Fairouz/Litany (Spotify)

エミレーツ航空の機内チャンネルで自国出身の「The Modern Age」作曲家として紹介されていてこの作曲家を知って、さっそくこの室内楽のCDを手に入れたのだった。このアルバムには、「リタニ」の他に、アルトサックスとヴァイオリンのための『Four Critical Models」ピアノソロ「Piano Miniatures 1-6」、弦楽四重奏曲「Lamentation and Satire」、ピアノとアルトサックスのための「Three Novelettes」、ギター作品「Airs」が入っている。静謐でありながら不思議な響き。

Mohammed Fairouz『Critical Models』SONO LIMINUS,DSLー92146,2011年録音


関連記事:

Mohammed Fairouz BBC HardTalk(2017/8/28):https://www.youtube.com/watch?v=o9vax0BtewM  

The Washington Post (2017/5/2): American composer says he was detained at JFK because of his ‘super common’ Muslim name  



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