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教皇の責任感:権限集中と移譲

教皇フランシスコは、ローマ教区の統治者でもあるのですが、その役割を強化した、というニュースが新年早々に出ました。やはりフランシスコは、修道会の人なんだなあ、というのが最初の印象。自分が引き受けている組織・団体は自分の責任として、真摯に運営したい、という「管区長」「修道院長」だなぁと感じます。世界統治で多忙を極める中、どこにも手を抜かない「働き者」教皇の面目躍如(アルゼンチンだったらこういう人、manigeroって呼ばれるか?)。「部下」にしてみれば、「見落としのない、口うるさい」上司であることは間違いなさそうです(↑Annett_KlingnerによるPixabayからの画像)。

(「ローマ教区への掌握力を強める教皇フランシスコ」ラクロワ、2023年1月9日)
あまり知られていないことですが、カトリックの教皇には八つの「肩書」が決まっていて、世界のカトリック教会の「最高司教」であると同時に、ローマ「教区」(日本も東京教区[東京都と千葉県]、長崎教区[長崎県]……など16の教区に分かれている)の司教でもあります。
とは言っても、教皇は世界中の教会の世話と、バチカン市国の国家元首でもあるのでそうした職務で多忙を極めており、1教区としてのローマ教区の実務は代理者が行っているわけですが、その「グリップ」を強める使徒憲章という文書を発表した(2023年1月6日)という記事です。
具体的には、これまで教皇の代理となる枢機卿が実際の教区運営を担っていたものが、教区評議会の開催頻度を増やし、その役割が強化され、それを教皇自らが主導するように変わり、教皇代理の枢機卿は教皇の「補佐役」に徹することとなります。こうしてローマ教区の統治はより多くの人の参加によって遂行されるようになり、教皇が世界中で推進する「シノダリティsynodality」が教皇の足元、ローマ教区でも実現への枠組みが整備されることとなります。
その他、経済問題評議会の透明性を高め、教皇が直接予算決算その他を承認するようにし、また外部の監査委員会も組織します。さらに、刑務所司牧や児童保護のための部局を新設、将来の司祭候補の青年のための選考基準も作成しました。

この変更、実はデロイト社(デロイト トーマツ)のコンサルにしたがって行われ、それは他の教会機関、「オプス・デイ」「国際カリタス」「マルタ騎士団」「コムニオーネ・イ・リベラツィオーネ」に行ったのと同様のケースなのだそうです。行政もそうですが、宗教団体も組織変更にコンサルからのアドバイスを活用する時代です。
今回の変更の理由、狙いですが、「ローマ教区に福音化とシノドス精神のための推進力」を与えるためであり、これによって「ローマ教区の刷新と司牧的成長の奉仕において、交わり、対話、親しみやすさ、受容と透明性の模範となる場」となるよう、考えられています。
考えようによっては、教皇への「権限集中」となりかねない変更ですが、シノドスを進めている教皇の種々のやり方を見ていると、(それまで誰か個人や少人数が担ってきた権限を剥がし、)いったん教皇に権限集中させて、教皇の手元で、多くの人が参加し、共同で検討し決定できる状況へもっていきたいのでしょう。フランシスコの間は、このやり方でうまくいくのかもしれませんし、次の教皇の時代には、また別の方法を考え、試していくことになるでしょうか。
昨年後半、教皇の決定でトップ交代した国際カリタスもまだ混乱が続いているのかもしれませんが、このカリタスやら、ローマ教区やらの今後の変化は楽しみで、各地方教会でも参考にすべきことはありそうです。

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