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バチカンのシノドス 3週目

バチカンに世界中から代表の枢機卿、司教、司祭、シスター、信徒が400人近く集まって、現代のカトリック教会の諸課題について討議する「シノドス」は、10月4日に始まり、3週目(〜29日)を迎えています。↑ Yolanda CoerversによるPixabayからの画像。
数年に1度開かれるシノドスはこれまで、家庭、若者、などのテーマに沿って、各国からの報告を聞きながら、大筋の課題は方向性は事前の意見聴取などから決まっていて、それに沿って微調整しながら進める、といったやり方でした。しかし今回、第16回通常総会は、テーマは「シノダリティ(ともに歩む教会)」という教会のあり方についてなのですが、やり方が変わっていて、どういう教会になりたいか、400人が10人ずつの小グループに分かれて、徹底的に話し合いが続いています。
したがって、小グループの途中経過は公表されていません。「秘密」というわけではなく、ことしは第1会期となっていて、そこで代表者が徹底的に話し合い、それをベースに、来年の秋、再度集まって何かを決めていく、という行程となっています(この、シノドスのやり方の変更自体も、教皇フランシスコによる「教会改革」の一部)。
そこでメディアに対しては、毎朝、参加者数人が行う「ブリーフィング」という記者会見があるのですが、ここでは批判めいたことも言えないので、皆「礼儀正しく」、シノドス的教会の意義、各国での進捗のようなことが発表されています(バチカンの公式ニュースは、シノドス事務局サイト(下の方、「VaticanNews Feed」で)でまとめて読める)。

「シノドス内部の不協和音」ラクロワ、2023年10月17日

そんな中、珍しく、参加者たちの声を拾って、批判的に状況解説した記事が出ていました。
開始から、丸2週間経ったところの記事ですが、「ここ数日、多くの反対意見が提起されています」とのこと。この会議のやり方、方法論に関する批判です。
「レベルが下がった」「神学が軽視されている」「議論が制限されている、幼児化している」という声があるようです。というのも、小グループでの話し合いでは、神学概念について討論するのではなく、むしろ個人的な体験をシェアすることが求められるからです(シノドス本会議で使用されている質問票[ワークシート]は『討議要綱』として事前公表されている)。
これまで、シノドス参加者は、各国からの代表司教と、バチカンの高位聖職者だった(オブザーバーという人はいたものの)のですが、今回は、フランシスコの改革として、70人ほどのシスター、信徒も、司教らと同じ投票権をもって参加者として参加していることも、こうした「違い」「戸惑い」を生む原因でしょう。
したがって、高邁な神学論争が得意な、シノドス「常連」の高位聖職者(枢機卿たち)にとってみれば、「現場」からの声・実践などを聞くことは、「レベルが低い」という評価につながるのかもしれません。小グループでの話し合いなので、「発言は1人4分」に制限されているのも、不満を増しているようです。「説教垂れたい」人には、これも苦痛でしょう。「4分では神学的思考を展開することは不可能」と言いたくもなるのでしょう。
しかしこれは、教皇やシノドス事務局にとって、想定内の批判でしょうし、このプロセスこそが、改革への道筋という狙いのうちにあるでしょう。今回のやり方に批判的な、ドイツのゲルハルト・ミュラー枢機卿やイタリアのブルーノ・フォルテ大司教などの発言は、あまり賛同を得られなかった、と記事は述べています。
また別の批判される問題点は、「感情に重点が置かれていること」だそうです。参加者が個人的な体験をシェアするため、たとえば障がい者であったり、性的指向のために苦しんだ体験が語られ、拍手で迎えられるということが繰り返しているそうです。これを批判する人は、「全部証言と感情です。でも信仰とはそういうものではない。イエスをすべての人を受け入れましたが、回心せよと呼びかけられます」。感情を大事にするか、しないかという、方法論についてのすれ違いは大きいようです。さらに同じ人は、「性道徳問題や教会によって傷つけられた人」に今回焦点が当てられすぎている、とも批判しています。
さらにもう一つ、緊張を生む要因として、「一部の参加者がプロセスへの参加を明らかに拒否していること」もあるそうです。ある人が話し合いの前に席を立った理由は、小グループの別の参加者の1人と根本的に対立する立場だった、という例を報告しています。
記事は、これらは「シノドス総会が順風満帆でないことを示すもの」と結んでいます。しかしながら、「改革」しようとするわけですから、追い風だけでなく、多くの逆風もあって当然だし、教会が生きている、ということなのではないでしょうか。あと、10日ほど、シノドス第1会期は続きます。

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