9条を守ろう
「いとし子よ。
どんなに難しくても、これは良い憲法だから、実行せねばならぬ。
自分が実行するだけでなく、これを破ろうとする力を防がねばならぬ。
これこそ戦争の惨禍に目覚めた本当の日本人の声なのだよ。
しかし理屈はなんとでも付き、世論はどちらへもなびくものである。
日本をめぐる国際情勢次第では、日本人の中から、「憲法を改めて戦争放棄の
条項を削れ」と叫ぶ声が出ないとも限らない。
そしてその叫びにいかにももっともらしい理屈をつけて、世論を日本の再武装
に引き付けるかもしれない。
もしも日本が再武装するような時代になったら、その時こそ、誠一よ、かやの
よ。
たとえ最後の二人となっても、どんなののしりや暴力を受けても、きっぱりと
戦争絶対反対を叫び続け、叫び通しておくれ。
敵が攻めだした時、武器が無かったら、みすみす皆殺しされてしまうではない
か、と言う人が多いだろう。
しかし、武器を持っているほうが果たして生き残るだろうか。
オオカミは鋭い牙を持っている。
それだから人間に滅ぼされてしまった。
ところが鳩は何一つ武器を持っていない。
そして今に至るまで人間に愛されて、たくさん残って空を飛んでいる。
愛で身を固め、愛で国を固め、愛で人類が手を握ってこそ、平和で美しい世界
が生まれてくるのだよ。
」
永井 隆