’22-’23WEリーグ第18節 ベレーザ対エルフェン

2023年5月14日
日テレ・東京ヴェルディベレーザ 9-0 ちふれASエルフェン埼玉

先手を取ったWMフォーメーション

前節、首位を独走する浦和レッズレディースとの一戦を引き分け優勝争いから大きく後退したベレーザは、今節はホーム西が丘にちふれASエルフェン埼玉を迎えての一戦となった。

前節、前々節とポゼッション時4−3−3の形でスタートし、試合の途中で3−2−5の形に変更していたベレーザは、急遽のフォーメーション変更に選手がついていけず、本来WMフォーメーションで目指したい中盤でボックスを形成するようなポジショニングが出来ないまま、相手ブロックの外側に立つ時間が多くなり、両試合とも引き分けに終わった。

第17節 三菱重工浦和レッズレディース戦

しかし、今節のベレーザは試合開始の時点からWMフォーメーションを採用

優勝した皇后杯では4バックからWMフォーメーションへ可変する際に右の高い位置にポジションをスライドさせていた宮川が右のCBとしてプレー、その横に村松、坂部が3バックの形で並び、その前に菅野と木下がダブルピヴォットを形成した。

前線には右から山本、藤野、小林、植木、北村が並び、5トップの中央9番の位置に植木理子ではなく小林里歌子が起用される並びとなった。

非ポゼッション時には北村が最終ラインまで下がり4バックを形成し

エルフェンの攻撃に対応した。

前節、前々節で課題となっていた前線の選手のポジショニングはこの試合では大きく改善され、5枚でエルフェンの4バックを常にオーバーロードし、相手にマークの的を絞らせないベレーザは

試合開始から僅か9分、スローインから菅野が藤野とワンツーでピッチ中央へ侵入すると

その菅野からピッチ中央の小林へパス、小林が相手2枚を引きつけ、さらに外側に北村がいたことで外側を守るエルフェン祐村の対応が遅れ空いたスペースへ走り出す植木へ繋ぎ先制点を奪った。

この試合のエルフェンは非ポゼッション時に1トップの髙橋雛のすぐ後ろに瀬戸口が、その両脇に吉田、祐村が並びベレーザ最終ラインへプレスにいく並びを採用していた。

おそらく直近のベレーザの4バック+アンカー木下の並びから、髙橋がベレーザCBのどちらかを、両フルバックに吉田、祐村が、アンカーの木下に瀬戸口がマークに行く形を想定していたと推測されるが、ベレーザは3−2(またはGK田中が加わり4−2)でビルドアップをすることでエルフェンは常に人数が足りない状態でプレスを掛けることとなり、41分にはエルフェンがマークにつけない菅野へGK田中から直接ボールが渡ると、菅野は相手のプレスのラインをそのまま突破し、

右のアウトサイドで裏へ抜ける植木へスルーパス。植木のシュートは惜しくもポストに弾かれたが、WMフォーメーションで相手の守備プランを崩すことにより、ベレーザは自陣及び敵陣の両方で先手を取り主導権を握ることとなった。

試合中の変化に対応した柔軟性

小林の9番起用が的中し、幸先の良いスタートを切ったベレーザであったが、15分にアクシデントが訪れる。

中央CBとしてプレーする村松がエルフェン吉田の強烈なシュートをブロックした際に負傷し、治療の為ピッチを一時離れることになる。

その間ベレーザは非ポゼッション時に目指す4バックによるブロックの形成を前線から山本、北村が下がってくることで対処し、

ポゼッション時に目指す最終ラインからのビルドアップはチームで一番パス能力のある木下が最終ラインまで下がることにより実行。

直近2試合では試合途中の戦術変更が上手く機能していなかったベレーザであったが、突然のアクシデントに動じず、ベンチからの的確な指示に加え、選手が戦術の意図を理解しないと出来ない柔軟な対応を見せることで安定したゲーム運びを見せた。

また、試合序盤からベレーザの3バック+ダブルピヴォットのビルドアップに対応できていなかったエルフェンは後半から6番の位置でプレーする大曽根に菅野をマークさせるが、58分のこの場面ではGK田中が相手のプレスを冷静に見極め、相手のプレスのラインの後ろの植木へロングパス

フリーの植木は胸でボールをコントロールした。
また、この直後の59分には、前掛かりになる相手の裏を宇津木がロングパスで一気に狙うと

小林が頭で流し、裏へ北村が抜け、

そのまま3対2の状況を作り、北村が低く速いボールをファーに走り込む植木に供給

植木がチーム7点目となるゴールを確実に決めた。

確実なチャンス、確実なゴール

これまでクロスから植木の得意な頭を狙う形が多かったベレーザであったが、ヘディングによるシュートは難度が高く、xG/shotや実ゴール数−xGの大きな下振れが見られていた。

しかし、この日のベレーザは全18本のシュートの内、ヘディングによるシュートは僅か3本であり、先制点のようなPA内で仕掛けシュートを打つ形や、先述の7点目に代表されるようなサイド突破後に低く速いクロスを入れ足でフィニッシュする狙いを多用。WEリーグの歴史に残る9−0の大勝となった。

次節ノジマステラ戦には169cmの大賀、その翌週のINAC戦には172cmの竹重と長身CBを擁するチームとの対戦が続く中、今節見せたような最終ラインに人数をかけて割っていくプレーや、サイドからでも足元でフィニッシュできる形の重要性は高くなる。

今季残り4試合、自らが目指す最高のサッカーへ一歩でも近づけるよう奮闘を期待したい。

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