’22-’23WEリーグ第14節 レジーナ対ベレーザ

2023年4月23日
サンフレッチェ広島レジーナ 1-3 日テレ・東京ヴェルディベレーザ

敵地で輝く個の力

なでしこジャパンの欧州遠征を挟み3週間ぶりの開催となったWEリーグ、日テレ・東京ヴェルディベレーザは敵地でサンフレッチェ広島レジーナとの一戦を迎えた。

代表合宿中に負傷した小林里歌子を欠くベレーザは、前節彼女が担ったポゼッション時に4−3−3の8番に、非ポゼッション時に4−4−2の6番の位置まで下がる役割を藤野あおばに託し、

非ポゼッション時に前線に残る役割を土方に託す布陣となった。

対するレジーナは非ポゼッション時4−2−2−2の形で積極的にベレーザのビルドアップにプレッシャーを与える形を採用。ベレーザ最終ラインがボールを持つと、中盤の底でプレーする柳瀬が木下をマークしほぼマンツーマンになる形で高い位置でのボール奪取を狙う。

立ち上がりから思うようにボールを前進させられず、自陣深い位置でボールを奪われる場面も度々見られたが、そのレジーナのプレスを突破したのはポゼッション時シングルピヴォットとしてプレーした木下桃香の個人技であった。

開始5分、ディフェンシブサードでレジーナFW大内に寄せられながらボールを受けると、

その場でボールを背後の大内の頭上を越えるように浮かせターンし、フリーで味方にパス。レジーナの守備を物ともせず高い技術を見せつけた。

相手のプレッシャーに交わしきれず、自陣深い位置でボールを失ったときには右サイドで先発出場した松永未夢がディフェンシブデュエルで抜群の強さを見せた。

17分にはレジーナのエース中嶋が左サイドでボールを持つと、対峙した松永は相手の一瞬の隙きを見逃さずにボールを奪取。

さらに、彼女は攻撃でも持ち前のドリブル突破でチャンスを作る。

52分、右サイドで松永がボールを持つとそのまま相手エリア内へドリブルで侵入

一度はレジーナDF塩田にボールとの間に体を入れられるが、松永はその外からスピードを活かして回り込み、

ライン際でボールを奪取、土方からPA内にゆっくり侵入することで押し下がったレジーナ最終ラインとの間にスペースを確保した植木がシュート、

見事に先制点を奪った。

同点に追いつかれて迎えた64分、レジーナPA内で松永が中嶋と対峙すると縦に一気に加速し突破、

ゴール前中央へボールを送ると、

松永の突破、土方のポジショニングで押し下がったレジーナ最終ラインと距離を取り待っていた藤野が冷静に流し込み勝ち越し弾を決めた。

広島ハイプレスのハイリスク

試合序盤から何度も高い位置でボールを奪取することに成功していたレジーナのプレッシングであったが、激しい守備にはいくつかのリスクを伴っていた。

激しくチェイスする前線の選手は体力の消耗が激しく、序盤からプレスを掛け続けた谷口、瀧澤、大内はそれぞれ61分、72分、79分に交代でベンチに下がることとなった。

また、前線から守備をかける人数が増えると、当然後ろの守備が手薄になるが、このリスクに対してレジーナはGK木稲が最終ラインの後ろの広いスペースをカバーすることで対処する。

53分には木下が少ないタッチからアウトサイドで裏へ抜ける植木へパスを出すと、

GK木稲が飛び出して対処した。

しかし、終盤に近づくにつれ、このリスクマネジメントに綻びが生じ始める。

79分に木﨑が最終ラインから一気に前線へボールを送ると

レジーナは木稲が対処しようとするが、ベレーザ9番植木がチェイス

慌てた木稲のパスミスを拾った藤野が遠くからシュートを放ち、

無人のゴールにベレーザの3点目となるシュートを決めた。

さらに、81分には植木が落としたボールを菅野がファーストタッチでアウトサイドで裏へ走り込む藤野へパスを出すと、

GK木稲がクリアしようと飛び出し、

ファールで藤野を止めた木稲は決定機を阻止したとして一発退場のレッドカードとなった。

前半から体力の消耗の激しい守備をしていたレジーナは、この時点で既に3度の選手交代のタイミングを使い切っており、DF塩田が急遽GKとしてプレーせざるを得ない最悪の状況に陥ることとなった。

ホーム連勝に向けて

次節はWE ACTION DAYとなり試合の無いベレーザは、次戦は5月3日ホーム西が丘でジェフユナイテッド市原・千葉レディースが対戦相手となる。

前回対戦時は自PA内で村松が短くパスを繋ごうとしたところを千葉FW大澤にカットされ失点してしまったが、

今節でも自PA内へ相手に押し込まれた際に、大きくクリアせず短く繋ごうとしたり、相手とボールの間に体をいれゴールキックにしようとするもボールを奪われたりする場面があり、

前線から大澤や鴨川が激しくプレスを掛けてくる千葉相手にはリスクマネジメントをさらにはっきりさせる必要があるだろう。

また、先述の相手GKの退場を誘った菅野パスのように、この試合では前線の選手が落としたボールを6番の位置でプレーする木下や菅野が少ないタッチで前へ展開させるパスが効果的であったが、

一方で、前線あるいは8番の選手とアンカーの選手の距離が遠いときはこのようなプレーをする前に相手に寄せられてしまい上手く行かない場面も目立った。

WE ACTION DAYで次の試合まで期間が空くのは、怪我や代表戦でメンバーが揃わなかったベレーザにとって、改めて連携を確認する有意義な時間になるであろう。

前節大宮戦で、今季なかなか手にすることが出来なかったホームでの勝ち星を手にしたベレーザ。
アウェイでの勝利の勢いに乗り、今季初のホーム連勝を飾って欲しい。

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