’22-’23WEリーグ第22節 アルビレックスレディース対ベレーザ

2023年6月10日
アルビレックス新潟レディース 2-3 日テレ・東京ヴェルディベレーザ

ローブロックを圧倒する2−3−5

前節既に監督の退任が決まっているAC長野パルセイロレディース相手に引き分け、ホーム最終戦を勝利で飾ることが出来なかったベレーザは、同じく既に監督の退任が決まっているアルビレックス新潟レディースとアウェーでの今季最終戦に臨んだ。

今節の前に引退を発表した羽座を最終ラインに起用した新潟は5−4−1のローブロックを敷き、ベレーザの攻撃に対応する。

一方のベレーザは4−3−3を基本形としながらポゼッション時はフルバックでプレーする宮川、宇津木がシングルピヴォットの木下の近くまで中に入り、2−3−5の形でプレーする。

試合開始直後から2−3−5で新潟のディフェンスラインの間にポジションを取り、スペースでボールを受けながら攻撃を組み立てるベレーザは24分、木下から右ハーフスペースでフリーで待つ藤野へボールが渡ると

山谷が藤野に引きつけられ出来た背後のスペースで小林がボールを受け、

その小林から高い位置までアンダーラップした宮川へボールが渡り、

高い位置でプレーするライトバック宮川から相手のラインの裏へ侵入した山本へスルーパスが通り、

ゴール前走り込んだ植木へ低く速いクロスを入れチャンスを作ったが、惜しくもクロスは相手にカットされた。

また、守備でも2−3−5の形から両フルバックが活躍する。

57分、新潟PA付近でベレーザ小林がポゼッションを失うと、滝川がボールを拾い新潟はカウンターを仕掛ける。
しかし、アンカーの木下にフルバックの宮川、宇津木を加えた3枚で中央を固めるベレーザは、宇津木が素早いカウンタープレスを掛け、滝川のパスミスを誘い、すぐさまポゼッションを回復した。

再三チャンスを作りながらも中々得点を奪えないベレーザに待望の1点目が生まれたのは60分。
最終ラインまで下がった木下から左ハーフスペースで待つ小林へ鋭いボールが出ると、

小林からフリーの藤野へパス、

そのまま藤野がゴール前まで運びシュートを放つと

一度は新潟GK平尾にセーブされるものの最後は山本が詰め得点を奪った。

今季これまで4−3−3の形で前線の5枚にFWの選手が並ぶと前がかりになり、チャンスを作れない場面も目立っていたが、

小林、藤野が8番の役割を全うしながら見事に得点を奪った。

価値ある失敗

終始試合の主導権をベレーザが握る内容となっていたが、この日の前半を終えた時点でのスコアは0−2のビハインドであった。

その最初の失点を生んだのが、試合開始直後2分の坂部のミスであった。

これまで坂部は守備の役割が大きくなると持ち前の攻撃参加を出せない場面が見られたが、この日は守備の要である村松が復帰し、さらに新潟は前線を道上1枚にし引いて守る形を採用していたため、序盤から積極的に攻撃に参加していた。

しかし、1失点目のシーンでは、自らがボールを運んで道上のプレスを剥がそうとしたところで引っかかってしまいポゼッションをロスト

そのまま左サイドを破られ上げられたクロスを石淵に決められてしまった。

だが、この日の坂部はこれでは終わらなかった。

その後も果敢に攻撃に参加し、ローブロックで守る相手の守備を何度もずらし周りにスペースを作り、

フリーの味方にパスを供給

攻撃に大きく貢献した。

一度の失敗を恐れずチャレンジを続ける彼女に、サッカーの神様がご褒美を与えるかのように、62分には右サイドに流れた木下からパスを受けた坂部はエリア外から豪快なシュートを放つ。

豪快にネットに突き刺さり、ベレーザは同点弾を決めた。

来季に繋がる3点目

勝ち越し点を決めたいベレーザは攻撃の手を緩めない。

同点にされた焦りからか、徐々に新潟はハーフスペースに対する守備が緩くなり始めると、64分には藤野が

69分には宮川が

右のハーフスペースからファーの植木を狙ったクロスを入れチャンスを作った。

71分にはレフトバックとして活躍した宇津木をベンチに下げ菅野を投入、ダブルピヴォットの形に変更し、右ハーフスペースへの攻撃に厚みを持たせる。

78分には一度はクロスからの攻撃を弾かれ、そのこぼれ球を宮川が拾うと、すぐさま菅野が右ハーフスペースでボールを受ける動きを見せ、

宮川からのパスを受け取った菅野はペナルティーアーク付近の小林へマイナス方向の速いボールを出す

これを小林が強烈なシュートで押し込み、ベレーザは勝ち越し弾となる3点目を奪った。

優勝争いへ最後の望みを賭けLAST 7 GAMESと銘打ち臨んだ最初の2試合では試合途中から3−2−5のフォーメーションに変更し機能しなかったが、

この試合では4-3-3から3−2−5への変更により、相手の弱点を上手く突くことが出来たことは、来季への確かな手応えとなるだろう。

また、今季は日本代表クラスが並ぶ前線を活かすため、サイドを突破した際には、最初からPA内で待つFWを目掛けたクロスでゴールを狙う場面が多くあったが、かつてヴィッセル神戸の監督を努め、またペップ・グアルディオラ監督の右腕として活躍したことでも知られるリージョ監督は

”マンチェスターにいた頃よく選手たちに伝えていたのは「最後にペナルティボックスに入ってきた選手が一番最初にシュートを打つことができる」ということなんだ(I used to say in Manchester that the last player to arrive to the box is the first one to be able to shoot.)”

https://theathletic.com/3981374/2022/12/08/juanma-lillo-world-cup/

と語るように、この3点目のようなマイナス方向のボールからシュートを狙う形を増やすことが来季の攻撃のバリエーションにおいて重要になると考えられる。

喜怒哀楽の全てを経験したような目まぐるしいシーズンの最終戦を勝利と確かな手応えで終えることが出来た今、来季の王座奪還に向けさらなる成長を遂げるベレーザに期待したい。

もし面白いと思っていただけたり、興味を持っていただけましたら、サポートではなく、ぜひ実際にスタジアムに足を運んでみていただけると嬉しいです。