豚さんの話
子供のころ近所に豚舎がありました。
はい、ド田舎出身ですけどなにか?
田んぼの向こうにポツンと立つ豚舎でした。
体育館位の広さでどのくらいいたのかな?百頭以上はいたと思います。
社会科見学で行った時正確な頭数を教えてくれたきがしますが、オジサンのコメカミの巨大な黒子しか覚えていません。
豚の排せつ物が流れる排水溝にイモリがゴマンと居た(マジで5万居たかも)覚えがあります。学校帰りにカビたパンやら拾った謎のウリなんかを投げ込むとおいしそうにパクついていましたっけ。
夏場はハエの量がエグく、においとともに家までやってきてはハエ取り紙をまっ黒にしたり、ペットのカナヘビを太らせたりしていました。
そんな夏のある日、冷たい風と共に夕立がやってきました。
日が暮れても夕立はやまず雷が鳴り始めます。
寝る時間になり歯を磨きながら外を眺めていると、
目の前に巨大な光の柱が立ちました。
落雷です。
件の豚舎に落ちたようです
一瞬おくれて轟音が響きます。山々を反響し合ってずいぶん長い間ゴロゴロと鳴っています。
雷鳴がなり終わるころ、小さな赤い炎がみえました。
灯油にでも引火したのでしょうか?炎は見る見る大きくなり、雨などものともせず豚舎全体を包みます。
「母ちゃん豚さんが、」
雨の音に紛れてかすかに豚の鳴き声が聞こえます。
そのかすかな声もけたたましいサイレンの音にかき消されました。
「さあ消防車来たから安心して寝なさい」
「、、、うん」
布団の中で考えます。
(消防団って大変だな)
(何頭ぐらい死んだかな)
(パンとかウリとか喜んでくれてたかな?)
(死ぬってどんな感じかな?)
(…………)
翌朝、
音が消えたような静かさ、
雲一つない青空、
田んぼの向こうの全焼した豚舎
そして圧倒的に香ばしい良い香り
そりゃそうなるよ。
百頭以上の新鮮な豚さんがメイラード反応起こしたわけですから。
腹が鳴る鳴る。
普段オカワリしないおじいちゃんまでオカワリしてましたから。
その日の昼になっても町全体を良い香りが覆い、
いつもは大量にあまる給食のグリンピースご飯もからっぽ。
米屋は大繁盛したとかしないとか、
糖尿病患者が増えたとか増えなかったとか、
めでたくなし、めでたくなし
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