Ten Years From Now

実家は落ち着かないが、安心する。
自分の部屋は物置と化しているし、猫は余所余所しいし、はっきり言って所在がない。
でも、父も母も、それなりに健やかに暮らしている。
志村けんに始まり、チバユウスケまで、夢中になったスーパースターの訃報に年齢を自覚する。そして、遠くない未来、両親も彼らと同じ場所に行ってしまうんだと、永遠だと思っていたわけではないが、タイマーがある事を突きつけられた気分だ。
少しでも残り時間が長い事を祈る。

喪中につき年末年始は関東で過ごすため、墓参りがてら両親の顔色を見に帰ろうと思っていた。
タイミングよく毎年恒例の同窓会が、今年は恩師を囲む会にグレードアップし、日程が今日になった。どちらがついでかは決めず、新幹線のチケットを予約した。

「10年後の自分を見てみたい」
と稀代のパンクギタリストは歌った。
想像を超える成功は、失敗よりも辛いのかも知れない。
自由の代償に疲れ果て、彼は1人で進む事を選んだ。アンダーグラウンドの王者はバラバラになった。
彼が想像していた10年後に、仲直りして3人で音を出すというものがあったのかは分からない。
それでも彼は毎日ギターを弾いている。
激しくギターを弾く彼の姿にはこれからも勇気づけられるだろう。
しかしハイスタでギターを弾くという事が最上なのかどうかは、少し聞いてみたい気がする。

恩師は25年前に比べて少し痩せていたが、変わらぬ優しい笑顔だった。
これが部活になると鬼と化すのだが、幸いバットとグローブの代わりに刺身とビールグラス。恐怖エピソードは思い出話の中だけで、終始和やかに進行した。
先輩にも昔ほどビビらず、生意気な後輩も大人になり程よく近い距離で話す事ができ、最後に写真を撮り、再会を約束して帰路についた。

あの頃は未来を想像する余裕もなかった。今日のこの酒が、鬼の顧問にビクビクしながら白球を追いかけ、泥だらけになるまで走り回ったあの頃の自分からの褒美だとすると、これは最上のものだなと思った。

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