見出し画像

不定期特集 岸田繁の「電車の花道」第二回:北陸に残る日車ロマンスカーたち

大きな2枚窓が特徴の湘南顔の車両も、大手私鉄で見かけることが殆どなくなってしまいました。かろうじて、西武新101系や3000系くらいでしょうか。しかしそれも最早、風前の灯です。

1950年代、国鉄モハ80系から流行に火がついた「湘南顔」の電車に会いにいくために、一路北陸へと向かいました。

北陸新幹線開通で賑わう富山駅のすぐ隣に、電鉄富山駅、たるターミナル然とした4面3線の櫛形ホームに個性豊かな車両が並んでいます。富山地方鉄道、略して「地鉄」の始発駅です。

「地鉄」はここから、立山、黒部、宇奈月温泉、アルペンルートへと向かいます。大きな観光需要を武器に、1950年代半ばより、自社発注の日本車両製ロマンスカーを次々にデビューさせました。

2015年春現在、そのグループの中でいまだに活躍している形式は2つ。1961年から製造された10020系と、1962年に製造された14720系です。地鉄の車両は何故こんなにインフレ・ナンバーなのかというと、型式の付号が主電動機の出力に伴うものだからなのです。

10020系など、営団(現東京メトロ)日比谷線3000系流用品など、100馬力(75kw)モーターの車両の型式番号上3桁は「100」。

短編成用の車両はMT比同率で走ることもあるためパワーアップされ、14720系では147馬力(110kw)相当のモーターを積んでいます。

立山をバックに、富山の美しい田園風景を走る14720系も、残り2両1編成となってしまいました。別項にアップしておいたサウンドは、東洋電機製初期カルダン車特有のものです。起動時の低音と、中高速域のさみしげな高音を聴くことができます。

ところ変わってこちらは福井と武生を結ぶ福井鉄道200形。こちらも、1960年から活躍する日本車両製ロマンスカーのひとつです。

車内外ともに古さが目立つデザインですが、美しく整備されています。台車など下回りの一部はJRの発生品に取り替えられ、冷房改造なども行なわれていますが、それ以外はデビュー当時のイメージを比較的保っていると言えます。

連接車で、併用区間も走るため、路面電車のイメージもある同車ですが、大型で収容力があるので、急行やラッシュ用に重宝されているようです。

モーターはJR発生品のMT54で、歯車比は4.82。JR113系などと似た音を立てますが、600V仕様のため98kw相当にダウンチューニングされているので、音もそれ相応に小さいです。換装前は東芝のモーターを積んでいたらしいですが、どんな音を立てていたのか気になるところですね。

かつては主力だった200形も、新型低床車や、名鉄から移籍してきた小型車の増備により世代交代が進められており、どうやら最後の活躍をしているようです。

かつては長野電鉄や北陸鉄道などにも自社発注の日車ロマンスカーが存在していましたが、それぞれ鬼籍に入っています。地方の中小私鉄では、北陸に限ることなく全国的に、大手私鉄やJRからの譲渡車が主力として活躍しているのが実情です。そんな中、彼らのようなオリジナリティー溢れる車両が、また地方から出てきてほしいと思うのは欲張りでしょうか。(岸田繁)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?