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岸田繁のウマウマ放浪記 #6

濃いラーメンって、歳をとるごとに食えなくなってくるけれど、これだけは話が別だ。

古くから京都市北区、元町にあった屋台ラーメンは、その後府庁前に移転し、2代目店主の引退とともに閉店した。

2010年音博の頃、私は泣きながら最後の一杯をスープまで飲み干した。

スープは豚の三枚肉、鶏ガラなどを煮込んだタネと、特製の醤油ダレが効いておりなかなかパンチがある。色は茶色を通り越して黒さすら感じるほど。

このパンチの効いたスープ、脂っこさやしつこさとは無縁で、塩気こそ強いものの、飲み進めるとサッパリとコクがあり、獣くささもない。酸味と苦味がちょうどいい塩梅なのだ。

麺は京都ならではのストレート麺で、柔らかめ。スープの色が麺にうつり、麺がどんどん茶色くなってゆく。

九条ネギと言われる青ネギと、たっぷりのモヤシがいいアクセントになっている。

惜しまれつつ閉店したこの店を偏愛していた私は、実はひっそりと、京都市中京区のど真ん中で、3代目が「元町ラーメン」を営業していたことを、知っていた。ただ、2代目に思い入れがあり過ぎたので、なかなか行く勇気がなかったのだが、遂に暖簾をくぐった。

麺の硬さは、今風に少し固ゆでだが、スープ、モヤシ、雰囲気、全てがあの味だったのだ。全ラーメン好きに食べてほしい一杯だ。

http://www.motomachira-men.com


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