マ社長の星屑レビュー☆第28回「Both Sides of the Sky/The Jimi Hendrix」

没後48年。2018年の現在でもニューリリースがあるというのは凄い事ですね。
13曲中10曲が初だし音源という事で、まあ、バージョン違いなどもありつつですが、これだけのアーカイブが残っているということにまず驚きでございます。
ジミヘンといえば、高校生の時にベースを始めた時に初めて耳コピをして、半音下げという概念を知らなかったんで、どこと弾いているのか全然わからなかった記憶があります。それ以来学生時代はよく聴いていたのですが、最近はとんとご無沙汰なもので、楽しみに聴いていきたいです。

まずは1曲目「Mannish Boy」。Muddy Watersへのオマージュなのかは分かりませんが、歌詞も違うし関係ないのでしょう。いきなりイントロで「everything's gonna be alright~」と口ずさんだのにジョン・レノンを感じました。なんじゃそりゃ。というわけで、ベースはビリー・コックス、ドラムスはバディ・マイルスで後のBand of Gypsysメンバーでレコーディングされているようです。そんなにミュートされていないドラムとプレベっぽいブリブリサウンドのベースがロックっぽく、みんな自由。3分過ぎのブレイクでよれたベースの後にジャストタイミングで被せてくるギターのオブリとタイコのおかずのハーモニーが最高です。そして当たり前ですが、いつものストラトキャスターの音がしています。あんま歪んでなかったり、めっちゃ歪んでたり、ゆらゆらしてたりしますが音程感がしっかりあるサウンドです。あっ、2回目のブレイクはうまくいきました。

2曲目「Lover Man」こちらはライブ盤やオリジナル盤にも収録されている曲なんですが、多分ですが一番真面目。ドラムのハイハットワークがめっちゃ細かくてかっこいいんですが、なんかギターが一番ちゃんと弾かなあかんと思っている感じがして、若干の不自由さを感じます。やっぱこういう曲ってライブの勢い一発で演っちゃうほうがかっこいいのかもしれません。しかしながら、曲をちゃんと覚えてなかったのかもしれませんが、若干スライドを行き過ぎたりしてズレるジミが聴けるのも良いものです。

3曲目「Hear My Train a Comin’」こちらは7分半の大作と思ったらミッチ・ミッチェルとノエル・レディングのエクスペリエンスチームでした。この曲もいくつかのライブ盤含めたアルバムに収録されてはいるのですが、自分が何バージョンを聴いてたのかは分かりません。
あと、ジミヘンの王道でもあり、曲調とアレンジがいくつかの曲と被っていたりするので、一部分聴いてもなんの曲かわかりません。
しかしミッチ・ミッチェルはやっぱ良いですね。圧巻のギターソロのバックでキース・ムーン的な好き勝手ドラムをやったかと思えば、その後の静か目パートでは流れるような長いフレーズで、何一つ突然じゃない、全部が繋がっているようなプレイを聴かせてくれます。カッコいい。

4曲目「Stepping Stone」。Queenの「Keep Yourself Alive」が始まるかのような雰囲気のギターから始まる軽快な曲。
ってか、ブライアン・メイはこの曲に絶対インスパイアされたやろうとも思ってしまった一曲。この曲はもうジプシーズのリズム隊に戻っているのですが、後半ソロでテンポが上がって収拾がつかなくなっていって、ギターはダビングされているものの早めのフェードアウトってところがツボです。

5曲目「$20 Fine」。イントロ、なんでドラムだけシンコペーションしてシンバル打って入っているのでしょうか。あから様にズレているようにしか聴こえないというかズレているんですが、その意図がわかないところがいいですね。そしてゲストでスティーヴン・スティルスが参加して歌っているのですが、オルガンの音色がここにきて鳴っているのがなんだか新鮮です。スティーヴンが右のギターを弾いているのですかね対照的な二人が共演しているのが面白いです。しかしやっぱちゃんとした人が歌うとあくが薄いです。やっぱジミヘンの濃さはギターと歌セットでありきなのかもしれません。

6曲目「Power of Soul」。こちらはしっかり録音されてる曲で、珍しくギター3本にパーカッションまで入ってます。
なんだかプログレバンドにインスパイアされたような若干の宇宙観を出してくるのですが、歌詞はなくたまにウーとかイェーとかを歌われるのみかと思ったら歌が始まりました。と同時にいつもの感じに戻りました。しかしながらセンターのギターは基本ソロで右のギターはバッキング、左はリフとオブリという役割が一応あるのですが、全部自由で全部のクセが強い。気付いたら役割変わってるし、それだけ聴くのも楽しいものです。

7曲目「Jungle」。スティービー・サラスが大好きそうなコーラスのかかったクリーントーンでの6/8のバラードと思いつつ、2分経っても歌が始まりませんと思ったら、リズムチェンジして4/4になって若干レゲエ感が出てきました。どうすんにゃろと思っていたらフェードアウトになりました。作りかけやったんですかね。こういうのを聴けるのも醍醐味ですよね。

8曲目「Things I Used to Do」。いたってシンプルなブルースナンバー。こちらも右左でギターが鳴っているんですが、ジョニー・ウィンターが参加しているみたいです。右のスライド使ってるのがジョニーですかね。後半盛り上がってくるところでバディ・マイルスのタイコにジョニーのバッキングが全然合わないところがミソです。バディ・マイルスはそんな綺麗なシャッフル叩こうとも思ってないのにギターでそう持って行こうとするところが素敵。

9曲目「Georgia Blues」。こちらもゲストボーカリストにロニー・ヤングブラッドが参加しています。この曲も普通のブルースの曲なんですが、ゲストボーカルが入るとやっぱオルガンが鳴ってきます。やっぱ音作りが変わるんですかね。ジミヘンの割ときっちりした真面目なソロの後にはロニーさんもサックスソロを吹いておられます。やっぱこういう音楽にはサックスは合いますよね。そしてロニーさんが歌い出すとモータウンっぽく聴こえてくるのも不思議で楽しかったです。

10曲目「Sweet Angel」。わかりやすいタイトルとそしてどこかで聴いたことのあるような感じ。そして来るやろうというところで入らない歌。こちらも作りかけのトラックだったものですかね。ええ曲で遊び心満載のいいトラックなので、残念ですよねと思いつつ、これを聴けるということはやっぱすごいありがたい事だなと改めて思いました。珍しくビブラフォンみたいなんが鳴っていたりするんですが、何よりバンドのアンサンブルが素晴らしかったです。

11曲目「Woodstock」。わかりやすいタイトルでこちらもゲストボーカル入りですね。こちらも5曲目に続いてスティーヴン・スティルスさんでした。この曲もですが、オルガン鳴ってます。ってかオルガンメインで、ギターがいない。ドラム、ベース、オルガンです。
ジミさんは何してはんにゃろ。意外とベース弾いてんのかもしれません。そう思ってベース聴いたらやたら民生さんみたいなベース弾いたはるし、後半ソロっぽいのもあるし、ピック弾きやし、あながち間違ってないかもと思いますなうです。しっかり残り香残しよったから絶対そうですね。

12曲目「Send My Love to Linda」。エレキギターの弾き語りなんですが、なんかニルバーナの曲みたい。デモ段階の音源なんですかね。
それでもいたるところにオブリを放り込んでいるのがかっこいい。って思ったら取ってつけたかのようなバンドが入ってきました。
やっぱリズム入りでギターのソロは弾きたいけど、リンダへの愛は弾き語りしたかったって事ですかね。しかし、ギターの熱量とドラムベースの熱量が全然違うのが面白いです。あと、みんなリンダ好きやな。ってか誰やねん、リンダって。

13曲目「Cherokee Mist」。最後の曲ですが、こちらも7分越えの大作です。初っぱなからシタールが鳴っていてオリエンタルな風が吹いています。しかしシタールになってもジミヘンのフレーズはジミヘンでしかないです。左のギターはアーミングとハウリングのやりたい放題ってとこもいいです。そろそろ4分くらいですが、さてはインストやな。と思ったらブレイクしました。パーカッションがなくなってドラムが入ってきそうです。入ってきました。さてはこのまま終わるな。シタールを手にしてやりたくなった鬼のインプロでしかない曲かもと思ったらやっぱ終わりました。

というわけで、一枚聴いたのですが、結構楽しかったです。レコーディングしているときに適当にやった演奏をテープ回しっぱなしにしていることはよくあるのですが、そんな録ったはいいけど忘れてたとか、それを踏まえて違う曲できたとか、歌つくれへんかったとか。いろんな理由で世に出なかったものを聴けたという意味でもよかったです。クオリティーは高いですよ、やっぱり。あと別バージョン。やっぱみんな作ってんねんなと思いました。同じ曲の別バージョンとライブバージョンとかを集めたものもジミヘンやったら聴いて見たいと思った作品でございました。

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