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THBT commercial feminism has done more harm than good. (SOLA Cup 2023: R1)


はじめに

新緑杯全国決勝のモーション解説(というか紹介)が終わったので、次はジャッジで出たSOLA Cup 2023を始めてみたいと思います。SOLA CUPジャッジするのは初めてだったんですが、全体的にはモーションレベル高めで驚きました(とはいえ、最近の高校生サーキットのレベルを考えるとこのくらいになっちゃうのかもしれません…)。

R1はCommercial Feminism(商業フェミニズム)でした。ちなみに、Infoはありませんでしたが、Organizerによると、Commercial Feminismとは、「when the mass media appropriates feminism for commercial purposes, using it as a vehicle to sell consumer products and services.」ということでした。

参考情報:Enting Leeのレクチャー

おそらく関係ありそうなので、Enting LeeのSocial Justiceについてのレクチャー動画を参考資料的に置いておきます。社会運動系のモーションで何をしなければならないのかということが網羅されていてとても良いレクチャーだと思います。

対立軸ーConfrontational vs Conformist Strategy

Enting動画の12分目くらいから社会運動のいろんな戦略とそのtrade-offが出てきます。そのなかで、

Ideological purity vs Effectiveness
Confrontational vs Conformist strategy

という感じの対立軸の話があるかと思います。
これは言い換えると、
①運動としてのアイデンティティとか純粋さ(ideological Purity)を守りましょう!そのためには旧勢力(フェミニズム論題で良く出てくるMale Dominant SocietyとかPatriarchical Structure)と徹底的に戦いましょう(Confrontational Strategy)という立場。
②他方で、そうすると「フェミニズム怖~い」ってなってしまうので、なるべく多くの人が参加できるように、社会に順応的(Conformist)で、皆が参加しやすい効果的(effective)な運動にしていきましょうという立場があります、ということです。

社会運動モーションでは、このように①と②(つまり、Confrontational strategyとConformist Strategy)が対立軸になることが結構多く、今回のモーションで言うと、Govが①、Oppが②の立場になると思います。Oppから行くと、Oppは(ビジネスという手段で、「フェミニズム」に絡めた商品を沢山流通させることで(Commercial Feminismいまいちよくわかってませんが、具体例は次のセクションで!))、フェミニズムや女性のEmpowermentという認識やawarenessが上がっていきますという話をします。Govは、それは本来のFeminismの在り方を歪めてしまう。フェミニズムじゃない人たちもフェミニズムを自称したり、フェミニズムがお金儲けのために利用されてしまうというスタンスになるかと思います。

Commercial Feminismがいまいちよくわかりませんが…

ググってみたらこんな記事がありました。femvertising=feminisim×advertisingの例がいろいろわかりやすかったです。例えば、伝統的なジェンダーステレオタイプを打ち破るような女性像(全力疾走する女性)とか、所謂リケジョ推し(サイエンスは男性だけのものではない)というコンセプトのもとにサービスや商品を考えていくということのようです。

このモーションの話に戻ると、does more harm than goodが女性にとってなのか、フェミニズム運動にとってなのか、社会全体にとってなのかはセットアップしておきたいですね(前二者のほうがなんとなく喋りやすい気はします)。

では具体的にArgumentを見ていきましょう。

Gov①フェミニズム運動の衰退

  • フェミニズムが女性の権利と機会の拡大を訴える思想や運動であるのに対して、商業フェミニズムによってフェミニズムのイメージが単純化され、流行のトレンドがフェミニズムであるかのような誤解が生まれる。

  • 新しい人たち(非伝統的なフェミニストの人たち)も運動に入ってくる。

  • 従来のフェミニズム運動の人たちと新しくフェミニズム運動に加わった人たちで温度差があるため、コンフリクトが生じる。

  • 従来からフェミニズム運動を支えてきた人たちがやる気を失い、運動から離れていく。運動が衰退する。

  • フェミニズム=金儲けみたいなイメージが蔓延して、(保守派からフェミニズムに対しての)バックラッシュが強化される。

Gov②本当に救わなければならない人が救えなくなる

  • 企業の目的は営利追求なので、フェミニズムの要素の中で儲かりやすい要素(市場でウケやすい要素。以下これをMarkeableと書きます)がより重視されるようになる(例:キャリア女性が持てはやされる一方で、貧困層の女性・家事労働している女性・教育機会に恵まれない女性に目がいかなくなる)。

  • 商業フェミニズムが広がることによって、フェミニズムのMarkeableな要素ばかりが注目されるようになる。その結果、上の例で挙げたようなmarketableでない部分・アクターは救われなくなる(Gov①から伝統的なフェミニズム運動が衰退してしまうので、「marketableでないアクター」が救われなくなるという状況がさらに悪化する)。

  • 結果、貧しかったり、教育機会を受けられなかったり、本当に救わなければならないアクターを救うことができなくなってしまう。

Opp①Awarenessが広がります

  • 商業フェミニズムが社会に浸透することで認識や意識が向上する。

  • それによってフェミニズム運動への支持者、支援者が拡大する。

  • フェミニズム運動が社会に浸透し、より多くの女性を救うことができる(メディアが報道してナラティブが生まれますとか、ナラティブが生まれてPolicy Changeが起こりますという点を含めても良いかと思います)。

Opp②企業文化の変容

  • 商業フェミニズムの浸透によって、企業はフェミニズムと経済的利益が結びつくことを学ぶ(フェミニズムを推進することが企業にとっての経済的インセンティブになる)。

  • 企業内での女性の待遇や福利厚生も向上する。

  • 社会的なAwarenessが上がっているので、企業のさまざまな部署で女性が起用され、女性が活躍する場面、幅も増えていく(つまり、商業的フェミニズムが、フェミニズムが拡大するためのステップになる)。

戦略:タイムフレーム

これはどっちもですが、相手が言ってるインパクト(Govから見たらOppの言ってるawareness広がるとか企業文化の変化とかの話。Oppから見たらGovの言ってるVulnarable Female)はあくまでshort termのものでLong termで見るとAwarenessが広がって/あるいは〇〇なナラティブが広まって、より良くなる/悪くなると言いたいです。なので、それぞれのArgumentのImpactがshort/longでどう変わるのかということは考えておきたいです。

おわりに

GovもOppも説明しないといけないことは多いし、戦略的な立ち回りも求められるので、いきなり厳しいモーション来たなと思いました(笑)。とくに改めて書くことはないんですが、どっちのサイドが支持を増やしやすいとか、女性(ゴール設定したアクター)を救いやすいとか、Exclusivity・Effectivenessをきちんと話すのが大事だなと思いました。

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