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凡人は"天才"の夢を見る

ここ最近NewsPicksの記事をテーマにnoteを書くことが多くて「回し者かな?」という感じがあるけれども、よく考えたら中の人なのである意味堂々とした回し者である。

まあいいや、それはさておき。

私がNewsPicksに所属しているとか川谷絵音大好きだという立場を差し引いても、この絵音さんへのインタビューはとてもよかった。彼のことをあまりよく思っていない人ほど読んでほしいと思う。

なぜならこれは、単なる川谷絵音というアーティストの話ではなく、『天才とは何か』を考える上で貴重な材料となるインタビューだからだ。

この記事を読んで、自分自身が明日から何かアクションを起こすのは難しいかもしれない。

でも天才の生態を知ることで、私たちの生き方はきっと、少しだけ変わる。

がんばってもどうしようもない世界があり、追いつけない人がいるという事実は、残酷だけれども、誰もが知っておくべきことだと思う。

有料の箇所はなかなか引用しづらいのだけど、この記事における彼の受け答えには天才の意識が随所に表れている。
(下記のツイートは、実は公開前の前夜に記事を読んで思ったことだったりする)

ちょうど先週、「人には、人生に期待されただけの器がある」という話を書いた。

才能と努力の関係はここ最近ずっと考えているテーマなのだけど、あらゆる事象が白と黒に二分されるわけではないように、努力さえあれば何かが為せるとも思わないし、才能だけがすべてでもない。

ただひとつ言えるのは、努力によって『秀才』にはなれても『天才』にはなれないのだろうということ。

川谷絵音は作曲においても作詞においても完全なる『天才』なので、そのプロセスを聞かれて「それ、聞いてどうするの?」「これは僕以外、誰もわからない感覚であり、誰とも共有できない感覚」と答えるのは当然のことだろうと思う。

なぜなら、彼は選ばれた人なのだから。

***

私は12歳のとき、「自分は天才ではないのだ」と気づいた。

物心ついたときから小説家になりたいと思っていたけれど、私はいわゆる「おりてくる」タイプの天才ではないのだと子供心に感じて、芸術家の道は諦めようと思った。

あのときから今まで、私は一貫して凡人としての戦い方を考え続けている。

そして同時に、自分に才能がないからこそ、「天才」にどうしようもなく惹かれるのだと思う。

天才は、努力ではどうにもならない世界だ。だからこそ私たちは彼らの才能という翼に憧れる。

でも、自分に羽が生えていなくても人が飛行機を発明して空を飛べるようになったように、私たち凡人が持つ翼と彼らの翼は違うというだけのことなのだ。

私は天才ではない、ただの凡人だ。だからこそ今日も、凡人としての翼を得るために粛々と努力を積み重ねていこうと思っている。

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ちなみにNewsPicksのインタビュー記事がすごくよかったので少しでも多くの人に読んでほしくて、前日夜にPickコメントを何度も推敲して書き直したのだけど、せっかくなので全文載せておきます。
彼のことをあまりよく思っていない人にこそ読んで欲しい。きっと、彼を見る目が変わるから。

「天才とは多作である」とはピカソやモーツァルトの例を出さずともよく言われることですが、ここで重要なのは彼らは「天才ゆえに多作であり続けられた」とも言えることです。そういう意味で川谷さんの「作り方を教えたところで真似なんてできないし意味がない」という言葉には、「天才とは何か」を考える上で重要なポイントを含んでいるように思います。
「自分はそういう星のもとに生まれてきたんだと思う」という発言は、フラットに見ても本当にそうだと思います。世の中には一定数、神に愛された人というのがいる。
「才能論」というと努力すれば誰でも無限大の可能性を持っているというような話が多いですが、後半のビジネス書のくだりでばっさりその期待を切り捨てているところが明快で気持ちいいですね。
「そこでハッとしている人がいたら、どうしようもない。でも、そのどうしようもない上に、エンターテインメントは成り立っている。」
こういう天才ならではの絶望と孤独が根底にあるからこそ彼の作品は美しいのですが、彼のすごいところは自分の天才性に飲まれることなく、まるで人ごとのように観察しながら平熱で語るところだと思います。
以前別のインタビューで「孤独や絶望がなければいい芸術家にはなれないから、姪っ子にはこのまま友達のいない子に育って欲しい」と話していたのが印象的だったのですが、作家性を守るために自己破壊を繰り返してきた太宰治の考え方と通づるものがあり、ハッとしたことを覚えています。
スキャンダルの話が取り上げられがちな川谷さんですが、彼の生き方への哲学や音楽への姿勢の話を丁寧に聞くメディアがもっと増えて欲しいと個人的に強く思っていたので、NewsPicksでこうした記事が出たのは望外の喜びです。
また、これまでミュージシャンは音楽雑誌や音楽メディアで作品について語るものとされてきましたが、今回の川谷さんしかり、サカナクションの山口一郎さん、ぼくのりりっくのぼうよみさんなど、その哲学や仕事としての音楽に向き合う姿勢はビジネスパーソンも学ぶ点が多々あるはず。
エンタメビジネス、音楽ビジネスも大きく転換していく中で、NewsPicksでも今後、ビジネス誌ならではの切り口でこうしたアーティストの方々にインタビューできたらと個人的な願望を持っています。

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