数字の「意味」を見る

私が『数字の意味』を考えるようになったきっかけは二度あった。

一度目は、高校三年生のとき大学受験のために数学を猛勉強した時。二度目は、大学で管理会計を専攻したときだった。

私はもともと数学が大の苦手で、200点満点中2点という奇跡の点数をたたきだすなどなぜ理系クラスにいるのかわからないレベルだった。

ところが高校三年生で数学の担当になった先生が『数IAで100点とれないやつは人間じゃない!センターの数学はIIBあわせて9割とって当たり前だ!』という過激派(?)で、1年しごかれた結果実際にセンターで9割弱の点数をとった。

今思い返してみれば、いちいち初歩的なところで躓く私に『お前は国語も英語も得意だろう。数学だって数字という「言葉」でできている。だから物語だと思って読め』と教えられたことが、苦手克服の一番のきっかけだったように思う。

そのあと無事に大学へ進学し、管理会計を専攻して来る日も来る日も決算書を眺めてはROIやPERを算出しながら教えられたのが『数字は時に言葉より雄弁である』ということ。

そして『ただし、数字は作る側の人間の意思が多分に反映されるものだ』ということも。

同じ赤字でもそれが単なる業績悪化なのか先行投資の償却コストなのかで評価がまったく異なるし、そもそも会計基準が変わると黒字だったものが赤字に変わったりもする。

管理会計専攻の学生としては落ちこぼれだったけれど、数字を正しく見ることの難しさを体感できたのは自分の中で大きな財産だったと思う。

なぜなら、数字を見た時にその数字が構成されている要素は何か、そしてその奥にある本当の意味と実態に自然と思いを馳せる癖がついたからだ。

今はまったく会計と関係ない仕事をしているけれど、どんな仕事をしようと私たちは数字からは逃れられない。

しかし、誤った目標を置いて数字を誤った見方で評価してしまうと、長期的に見てどんどんボタンを掛け違っていってしまう。

四則演算さえできれば分析をした気にはなれるけれど、本当の意味で数字を読むには、経験に裏付けされた想像力が必要だと私は思っている。

例えばこのnoteにしても、多くの人が一番気になるのはPV数だと思う。

しかし、たとえ自分の書いた記事が10万PVを超える『バズ』を生み出したとしても、その半数以上が『批判してやろう』という気持ちで流入してきているとしたらそれはどちらかというと『炎上』であり、自分や所属組織のブランドを傷つけている可能性がある。

10万PVという数字は同じでも、それによって人の心がどう動き、どんな態度変容を起こしたのか、そして一見さんで終わるのかフォロワー獲得に寄与したのかによってその記事の価値は大きく変わる。

上記は極端な例ではあるけれど、数字の見方とKGIに対するKPIの置き方を誤ると、短期的には目標を達成できても中長期的に伸びなくなるという事象がよく起きる。

PV数でも売上だけでも株価でも、数字が動く時には必ず『意味』がある。

そしてその数字を動かしているのは『人』であり、大抵の数字は人の感情によって動いている。

数字はニュアンスの違いなどなく全員に同じ意味を届ける雄弁な言語ではあるけれど、シンプルであるがゆえに1つの数字の中に様々な意味を内包していて、単に足したり引いたりしているだけでは本当の意味は見えてこないものだ。

さらに言えば、これまで成長だと捉えられてきた数字的な成長が本当に『いいこと』なのか?という問いも最近は生まれてきているように思う。

ちょうど昨日見たニュースでファストファッションの話題が上がっていたのだけど、たくさん作ってたくさん売り、店舗をどんどん増やして成長するというモデルはもう限界になりつつある。

この流れはリアルなモノだけではなくコンテンツも同じだと思う。

急に流行ったりバズったりするのはライトファンの増加にしかすぎず、新しいものが好きな人たちはまた別の新しいものを見つけたらどんどんそちらに移っていく。

だからこそ『SNS活用=バズらせる』という時代は徐々に終わりを迎え、ゆるやかに、でも強固な関係人口を作っていく方向にシフトしつつあるような気がしている。

もちろん数字を見ることはとても大事だし、一定規模まで成長しなければやりたいことも実現できないのだけど、数字の意味を考えず空っぽなまま数字だけ成長することに、人はもはや意味を感じられなくなっているのかもしれない、と思う。

すべての数字には意味があり、その裏には必ず人がいる。数字を扱う仕事だからこそ、そのことを忘れずにいたいと思うのだ。

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今日のおまけは、『数字の意味』の先にある『数字の意志』について。

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最所あさみ

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最所あさみ

余談的小売文化論

役にたつかどうかわからない余談のような話を中心に書いていきます。 主なトピックは小売や消費、店舗、そして文化について。 (Photo by tomoko morishige)
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