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可処分時間を、いかに「まとめて」とるかの時代へ

現代は、可処分時間の奪い合いだといわれます。

スマホにはSNS、ゲーム、ニュース、ショッピングとあらゆる機能をもつアプリが入り、それぞれが消費者の細切れの時間を奪い合っています。

これからもこの傾向は続いていくと思いますが、競争が激化しすぎた結果、これ以上広告を投下しても費用対効果が見合わないという分岐点がもうすぐそこまできているように思います。

最近話題の動画も、面白くなければ10秒ほどで視聴を辞められてしまうシビアな世界です。

細切れの時間を埋めるための選択肢は無数にある中で、自分たちを選んでもらうにはすぐにわかる強い刺激が必要になりますが、刺激に慣れた消費者はより強い刺激を求めるようになり、より多くのコストが必要になります。

一方で消費者が集中できる時間はどんどん短くなっており、さらに世の中の情報量は増え続けているため、記憶に残るブランドメッセージを伝えることが難しくなっています。

ここ数日の間に見た動画や写真、記事やツイートの中で、印象に残ったものをすぐに思い出せますか?
ほとんど覚えていないのではないでしょうか。

そして、こうした可処分時間の奪い合いに限界を感じた企業が着手しているのが、レストランやホテル、旅行、住居といった体験との連動なのではないかと思います。

無印良品が一番わかりやすい例ですが、もともとはメーカーでありながら、ショップだけではなくMUJI CAFE、MUJI HOTEL、また「無印の家」のプロデュースも行なっています。

最近ではティファニーも直営のカフェをはじめたり、earth music&ecologyで知られるストライプインターナショナルが渋谷に「KOE HOTEL」をオープンさせるなど、従来の「売る」という機能以外の場所の使い方をしています。

アパレルブランドのカフェなどはこれまでも多くの事例がありましたが、最近の変化としては、集客のための誘引要素としてではなく「過ごす」ことを目的になっているということです。

特にホテルは私自身とても注目しているのですが、その理由は顧客の関心をまとまった時間とりつづけられるフォーマットだからです。

例えば、Web上のコンテンツはどんなに世界観を作り込んだ素晴らしいものだったとしても、少しでも飽きたらすぐにホームボタンを押して中断されてしまいます。

しかし、レストランやホテルといったリアルの場所は、一度入店したら最低でも数時間、長ければ数泊もの間まとめて顧客の関心を集め続けることができるのです。

この拘束性こそが、リアルの空間の大きな強みと言えます。

だからといって、単にブランド名を冠したレストランやホテルを作ればいいというわけではありません。

その空間を「メディア」として見たとき、指名買いされなければ他のレストランやホテルと横並びの過当競争に陥るだけだからです。

スマホで受け取る受動的な情報ではなく、受け手自身が積極的にブランドメッセージを受け取りに行きたくなることこそが、リアルの空間を作る意味です。

つまり、顧客との関係をより強固なものにしていくためには、表面的な一瞬の関心ではなく、より深く知ってもらうために長いまとまった時間を過ごしてもらい、感動のある体験を提供することが必要不可欠なのです。

これからは、細切れの時間の奪い合いから、いかに可処分時間を「まとめて」とるかの時代になる。

最近はそんなことを考えています。

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今回ピックしたのは「消費者を誘惑する店舗の役割」という話題です。

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