"プラットフォーム"の意義

先日、キングコングの西野さんが「オンラインサロンサービスって、なんで成立してんの?」という記事を通して、「プラットフォームの価値って何なの?」というとても本質的な疑問を投げかけていました。

ここ数年プラットフォームに携わり、ユーザーへの価値を自分なりに考え抜いてきた立場として、今の私が思う「プラットフォームの価値」について書いて見たいと思います。

サービスの初期ユーザーは「応援」を軸に集めるもの

ちなみに上記のブログはいつもの調子とは異なり、自分の中で結論がでていないからみんなの意見を聞きたい!というスタンスで、コメント欄も解放されていました。

そうやって集まった意見を集めて、彼なりの結論として書かれたのが「それでもオンラインサロンサービスが成立している理由」という記事です。

ここで出された結論は「オンラインサロンサービスはシステム上は破綻しているけれど、上位20%のメガ主催者から、サービス運営者が応援されているから成立している」というもの。

この結論は私も同意で、特に立ち上げ初期のベンチャーが運営するプラットフォームから、カリスマユーザーに提供できる価値は、実際のところほとんどないと言えるのではないかと思います。

むしろ、自分で使いこなせるほどリテラシーが高く、ネームバリューもあるカリスマユーザーに無料で使ってもらい、その信用を担保にしてアーリー層を取り込み、徐々にマスに広げていくという方法しかないと言っても過言ではありません。

だからこそ、サービスの立ち上げ初期のコアユーザーは「人」を起点に集めるしかない。

私が前職中に粛々とnoteを書き続けていたのもそのためです。

プロダクトとしての信用や実績がない中で、多少使いづらくてもこの人を支援する意味で使ってあげようと思ってくれる人を増やすこと。

これからサービスを立ち上げようと考えている人は、プロダクトを磨くと同時にそうした個人的信用の積み上げていくことをおすすめします。

立ち上げ直後からある程度軌道に乗るまでの間、プラットフォームがユーザーに提供できる価値は「夢を見せる」ということであり、ある意味投資のようなものだと割り切って、長い時間軸で相手に貢献することを考えるしかないのです。

プラットフォームは「20点を70点に引き上げるもの」

とはいえ、いつまでも応援してくれる人に甘えていいわけではありません。

将来的にプラットフォームとして提供できる価値は何なのかを考え抜き、そのための準備をしていく必要があります。

西野さんのブログで取り上げられていたオンラインサロンプラットフォーム・シナプスの例でいえば、「入会チケットの販売と、非公開チャットグループへの招待」がメリットであると書かれていました。

しかし、本質的なシナプスの価値は、入会したときにもらえるグループ運営のためのマニュアルではないかと個人的に思っています。

以前開催したコミュニティ・マネージャーの勉強会で、シナプスでサロンを立てた際にもらえるマニュアルをチラ見せしていただいたことがあるのですが、ベストな投稿頻度や文章の作り方など、かなり細かいアドバイスが載っていました。

また、すべてのサロンに担当者が入っていて、運営で困った時や入会者を増やすための施策など、随時相談に乗ってくれるのだそうです。

そのイベントを通して、シナプス内に溜まっているオンラインサロンのナレッジが、想像以上に厚いことを知りました。

これはシナプスの例に関わらず、「ナレッジ」こそがプラットフォームの最大の武器です。

なぜならば、そのプラットフォームを使えば、最低でも60点、70点はとれるようになれば、加速度的にユーザーを増やすことができるからです。

シナプスの例に戻ると、西野さんが指摘しているような「自分で集客もできて、運営もできる」人、つまりはじめから自分で80点をとれる人というのはほんの一握りです。

前述の通り、プラットフォームの立ち上げ初期はそうした一握りの人たちにお願いして使ってもらうしかありません。

しかし、ある程度情報が蓄積されてきたら、それをまとめて誰でも同じレベルでできるようにサポートするのがプラットフォームの仕事です。

自分一人では集客も運営もできない20点の人が、シナプスを通せば一気に60点にはもっていくことができる。

それを実現することによって、オンラインサロンの母数が増え、これまで限られた人にしかできなかった特殊なものではなく、誰でもできることへと変化していくのです。

これは「プラットフォーム」と呼ばれるものすべてに言えることで、わかりやすいところで言えば、メルカリもBASEもminneも何もかも、普通の人が20点しかとれないことを簡単に60点とれるように整え、人の可能性を大きく広げています。

このように、プラットフォームの価値を真に享受できるのは最低限の点数をとれない人です。

だからこそ、はじめから80点をとれる人である西野さんが疑問をもつのも自然なことで、彼の主張自体は何も間違っていません。

ただ、ある程度最低限の点数がとれるようになったら、あとは点数を伸ばしていくフェーズに入るはずなので、今後は80点以上の人に向けて、+5点、10点を目指すためのオプションが提供される可能性もあるかな、と個人的には思います。

「仕事」の本質的な価値は、誰でもできるようにすることである

最近、今さらながら「無印良品は仕組みが9割」という本を読んで、マニュアルの重要性を改めて感じました。

本の中でも繰り返し書かれているのですが、マニュアルとは誰でも、入った瞬間から最低限の仕事がこなせるようになるために作り、運用するものです。

無印良品では未だに毎月マニュアルが新しく更新されているそうで、基礎となるマニュアルがあるからこそ、日々の業務に余裕が生まれ、気づきを得たり考えたりする時間を作ることができるのだと思います。

実際、マニュアルづくりの基準は大学に入りたての19歳でもわかるようなレベルに設定されており、品出しやディスプレイなどもすべてマニュアルを見ればその日から即戦力になれるように作られているのだそうです。

ちなみに今のかたちになるまでにはなんと5年もの歳月がかかったそうで、ナレッジを蓄積させるというのは、それだけ手間ひまがかかるものなのだと改めて感じました。

自分たちの根幹となる部分のマニュアルであれば、たしかにそれだけ時間をかける価値があります。

しかし、新しいものを取り入れるのに毎回それだけの歳月をかけていたら、コストを回収できないものもでてきます。

そこで各社に代わってナレッジを蓄積し、さらに何百社ものデータを分析することで最適解を素早く提供することが、プラットフォームに求められている共有の価値であるはずです。

そもそも、「仕事」でもっとも価値が高いのは、誰でもできる仕組みを作ることです。

私たちは、誰が何を実現するための仕組みを作ろうとしているのか。

そのために提供すべき必要な知識やツールは何なのか。

プラットフォーマーだけではなく、仕事をする上でこうした問いに向き合うことこそが、「仕事」なのではないかと思います。

再現性のある仕組みづくりというプラットフォーム的な考え方は、常に私たちひとりひとりが意識すべきもの。

プラットフォームの意義について整理してみて、改めてそう感じたここ最近でした。

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(Photo by tomoko morishige)

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最所あさみ

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