人は何度だって立ち上がれる。立ち上がる意志さえあれば。

自分自身がスタートアップの世界にいるからかもしれないけれど、年々「起業」という言葉が身近になっているような気がします。

ベンチャーからスタートアップという呼び名が一般的になり、時代の先をいく仕事、働き方として周りから「うらやましい」と言われたり。

中にいると気づきづらいけれど、今の状況もある意味バブルなんだろうな、と思います。

そんな中、冬休みに読了した「再起動 リブート」。

市川さんの記事で "日本版「ハードシングス」"と書かれていましたが、まさにその表現がぴったりくる、頭をガツンと殴られたような衝撃のある一冊でした。

時代に翻弄され、首の皮一枚のギリギリな状況を切り抜け、うまく軌道に乗り始めたと思った矢先にまた世の中の流れに足元をすくわれ…と休むまもなく次々に起こるドラマに、ノンフィクションであることを忘れて思わず物語の中に引き込まれてしまいます。

何度も訪れる危機に一緒に胃を痛め、理不尽な要求に一緒になって怒っているうちにあっというまに読みきってしまう、そんな本です。

本を読む中で特に印象的だったのは、資金繰りに悩まされる日々の中で唯一心の支えになっていた深夜の読書のシーン。

偉人の言葉に触れるにつれて、主人公(筆者)の意識が変わっていきます。

僕はハッと気がついた。目の前で起きている厳しい現実を直ちに変える力は僕にはない。だが、その出来事をどう受け止めるか、心のあり方を決めているのは他の誰でもない、僕自身だった。僕の心は、僕にしかコントロールできない。今ここで、僕が何を考えるか、それを決めることができるのは僕だけだ。心の中は究極の自由なんだ。

辛いことや苦しいことに直面した時、人はそのことだけで頭がいっぱいになってしまい、その場しのぎの対処しかできなくなってしまうものです。

守られている立場であれば、ちょっと辛そうな顔をするだけでその場から逃げることもできるけれど、社長という立場はどんなに苦しくても逃げも隠れもできない。

であれば、辛いことを辛いと言い続けるだけではなく正面から解決するための糸口を見つけよう。

このシーンのあとも、復活するたびに何度も危機が襲ってきて主人公とともに心が折れそうになるのですが、ここでの気づきがあったからこそ乗り越えられたのではないか、と思います。

後半にはこんな言葉もでてきます。

迷いや悩みは、未知なる明日を恐れて自らの心が生み出した妄想にすぎない。そして、その妄想こそが僕たちの行動を著しく弱々しいものにしてしまう元凶なのだ。

どんな人でも、自分の未来を描いた先にあるのは希望ばかりではないと思います。

未来の選択肢を考えるとき、どちらの道を選ぶべきなのか逡巡しているうちにひとつふたつと選択肢がなくなっていき、気づけば消極的選択をせざるをえなかった、という状況になりがちです。

最悪の状況を考えてリスクヘッジを考えることは必要なこと。

だからといって必要以上に恐れていては、結果として望まぬ未来を引き寄せてしまいます。

腹をくくるとはこういうことなのだ、とこの本を読んで改めて感じました。

***

もうひとつ、本の中で印象的なのは主人公が "資本の論理"に振り回され続けることです。

銀行からの借り入れしかり、VC(ベンチャー・キャピタル)からの出資しかり。

そこにはビジョンや情熱などなく、ただ「お金を増やす」ことを目的にした人たちが集まり、お金が生めなくなると一斉に手を引いて取り立てる側に変貌します。

よく「銀行は晴れの日に傘を貸し、雨の日に取り上げる」と言われますが、これは銀行にかぎらず取引先の企業も、私たちひとりひとりでも同じこと。

注目されているときはちやほやし、一度でも失敗すると「あの人はもう終わりだよね」と背中を見せる。

本の中にでてくる銀行員や投資家にイライラさせられるけれど、実は私たちの姿が投影された存在なのかもしれません。

主人公である著者が何度も復活を遂げたように、人は立ち上がる意志さえあれば何度でも復活し、失敗を生かしてさらなる価値をだす可能性を秘めています。

だからこそ人を見るときには今の "ステータス"ではなく、その人の本質的な価値や能力で判断したいし、逆に私が社会的にどんな評価を受けていたとしても変わらず接してくれる人と付き合っていきたいと思う。

「上場はしたいと思ってするものではない。ある地点までいくと自然と上場せざるをえなくなっていく」
という話を聞いたことがあります。

企業だけでなく個人レベルでも、ある程度人気や知名度が高まってくると好循環が加速し、自分の手には負えなくなっていく。

その歪みが臨界点を迎えたとき、ちょっとしたことで足元をすくわれて一気に失脚してしまうのだと思います。

そうならないためには、常に自分の評判ではなく自分が価値を届ける相手を意識し、真摯に信頼を積み上げていくしかありません。

本の終盤にはこう表現されています。

多くの企業は資本の論理にしたがい、利益や拡大を追求し続けている。ビジネスにおける行動基準は「儲かるかどうか」だからだ。
しかし、つながりで力を持った生活者がビジネスに求めているのは「世界をよくするかどうか」であり、その意識のギャップは日に日に深刻になってきた。
自分だけが儲かればいい。そう考える独善的な経営者は力を持った生活者から嫌われ、市場からの退場を余儀なくされるだろう。これからは社員に愛され、地域に歓迎される、そんな三方よしの企業だけが生き残れる時代になるはずだ。

「無理な集客」「品質を犠牲にする仕事」「安易な業態拡張」を「しない」と決め、会社の状況も包み隠さず全員に共有する。

その姿勢を貫いてきたループス・コミュニケーションズが安定した利益をだしていることが、これがただの理想論ではないことの裏付けになるように思います。

まるでジェットコースターのような波乱万丈のベンチャー経営の末に行き着いた結論だからこその重み。

起業とは、自分のためではなく世のため人のためにあるのだと改めて感じました。

これから起業しようと考えている人、今まさに壁にぶち当たっている人にとってはあまりの辛さに読み進めるのが苦しくなるような内容ですが、「それでも自分がやるべきことなのか」を振り返るきっかけとして強く勧めたい一冊です。

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(Photo by tomoko morishige)

私のnoteの表紙画像について書いた記事はこちら。

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最所あさみ

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