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土地への愛と、アイデンティティと自立。

ディズニーのプリンセスシリーズで一番好きなのは誰ですか?

私は断然ポカホンタス派。
家にあったビデオは何度も見返しすぎて、文字通り擦切れてしまったほどです。

何度も見て結末までわかってるのに、子供心にも最後のシーンのポカホンタスの決断が切なくて。
未だに見返しては泣いてしまいます。

シンデレラや白雪姫みたいなハッピーエンディングのビデオもたくさん持っていたのに、小さな私が何度も見たのは今思い返してもポカホンタスだけでした。

きっとその頃から、人に幸せにしてもらうのではなく「自分の道は自分で選びたい」という意識が強かったんだろうな、と思います。

ポカホンタスは誰よりも自分たちの土地と仲間を愛していて、一方で前時代的な考えに縛られない自由さもあわせ持つチャーミングなキャラクター。

ディズニープリンセスらしく動物とも話せるし、木のおばあさんとも仲良しだし、風の声を聞くこともできる。

ポカホンタスと同じくらい大自然な環境で育った私は、映画の影響で一時期自分も本気で風の声が聞こえると思ってました…。

自分の育った環境は大好きだったけど、小さい頃から好奇心旺盛だった私はポカホンタスと同じように外の世界に興味津々で、きっとそこには素敵な出会いがあって素敵なことが起こるんだ!と思っていました。

ポカホンタスが巧みに山や川を駆け抜けてジョン・スミスに自分たちの素晴らしい世界を見せるシーン、逆に彼から新しいモノや世界を学ぶシーンをいつも胸躍らせながら見たものです。

そんな楽しいシーンもつかの間、二人の仲は民族の壁によって引き裂かれてしまいます。
どんなに個人レベルでは理解し愛し合っていても、組織レベルの憎悪はそれ以上に大きく、不毛な報復合戦にしかならないということもこの作品から学んだ気がします。

そしてポカホンタスが心のコンパスに気づく場面と、「彼を殺すなら私も殺して」と凛とした態度で実の父に迫る場面。
これは大人になった今見てもハッとさせられるものがあります。

そのあとディズニーらしく平和なエンディングに向かうのですが、ここで普通のプリンセスらしくない行動をとるポカホンタス。

重症を負ってイギリスへ帰ることになったジョン・スミスがポカホンタスに一緒にイギリスにこないか?と提案(まさにプロポーズ!)するのですが、彼女の答えはまさかの"ノー"。

周りもみんな驚いてざわざわします。もちろん見ている側もざわざわします。笑

彼女は「自分はこの土地から離れては生きていけない」とジョン・スミスに伝え、彼を乗せた船が少しでも早くイギリスにたどり着けるよう崖の上から追い風を吹かせます。

今とは違って1回1回が命懸けだった航海。
お互いにもう二度と会えない覚悟で離れるシーン、そして風を吹かせながらずっと船を見守り続けるポカホンタスの凛とした後ろ姿で終わるエンディングは大人になった今だからこそより胸に迫るものがあります。

子供のときはポカホンタスの決断がわかるようでわからないようなもやもやした気持ちだったのですが、大人になってようやく彼女が守りたかったもの、大切にしたかったものが理解できるようになりました。

人にとって、愛する人と一緒に暮らす以上の幸せはないと思います。
でもそれ以前に、自分が自分らしくあること、自信をもって自分の足で立つことが必要なのではないかと思うのです。

もしポカホンタスがあのままイギリスに行っていたら(※)、今までの生活で培われた自信と誇りを維持できただろうか。
きっと自分らしさを失って怯えて生きていくしかなかったのではないか、と私は思います。

(※ポカホンタス2では実際にイギリスに行っていろいろいあるのですが、1の感動を完全にぶち壊す駄作なのであまりおすすめできません。笑)

その土地に生まれ、暮らすということは、その土地からパワーをもらいながら育んでもらってきたということです。
そしてそれは、無条件にその土地に受け入れられているということでもあります。

無理して着飾ったり自分を大きく見せようとしなくても、ありのままの自分を受け入れてもらえるという自信。

そういう自然な自信は匿名性の強い都会ではなかなか得にくいものだから、Uターンや移住が注目されはじめてきているのではないでしょうか。
絶え間なく自己主張し続けなければ、自分にラベルを貼らなければ、一瞬で透明人間になってしまうという不安がつきまとってくるのが都会というものだから。

とはいえこのアイデンティティと自立のもとになる土地への愛は田舎ならどこでもいいわけではなくて、自分の感性にぴったりくる場所が誰にでもひとつはあるものだと思います。
もちろんそれが東京やNYなんかの大都会な人だっているでしょう。

どちらにせよ、自分にとって「ここだ」と思う心のふるさとにいれば無理に自分を大きく見せようと思わないし、誰かに依存したくなる気持ちも消えるんじゃないだろうか。

結婚しても子供ができても友達や職場に恵まれていてもなんとなく自分に自信がない人というのは案外多いものです。
でもそれは自分になにかが足りないのではなく、自分が立っている場所に愛され受け入れられている自信がないことから生じるものなのかもしれない、と最近になって思い始めました。

私は今、東京に住んでいます。
東京という街は刺激的だけど、永久に自分には振り向いてくれないみんなの憧れのアイドルのようなもの。

そんな片思いに疲れて、優しく包み込んでくれる幼馴染みのもとに帰りたいと感じる人が増えるのは当然のことだと思います。

どこで生きていこうと、他者の評価や価値観に振り回されない自立した人間になるためには、自分が何者で、なにに幸せを感じ、なにを大切にしたいのかを明確にする必要があります。

苦しいことから逃げて誰かに幸せにしてもらおうと思うのではなく、自分の足で大地を踏みしめて立つということ。

ポカホンタスという作品は、自分の力で自分の幸せを選び取る生き方を教えてくれているような気がしてなりません。

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