見出し画像

「体験時代」の新たなビジネスモデル

体験の時代と言われる今、ビジネスモデルも大きな転換を求められている。

例えば音楽業界はCDの売上が下がり続けている一方で、ストリーミングやライブの売上は伸びづけている。5年前と比べても、音楽フェスの数が圧倒的に増えた。

またアパレルブランドもファッションを軸に飲食やイベント事業に着手しており、その場でしか得られない体験の価値が上がっていることがわかる。

しかし体験を軸にしたビジネスの難しさは、ストックが難しく稼働数が成長の足枷になりやすい点だ。

これまでCDで確保していた売上をライブで補填した場合、売上金額は同じでもコストが大幅に異なる。たとえ利益額が同じだったとしても、一度レコーディングしてしまえばあとは製造すればいいだけのCDと異なり、ライブの場合は本人たちの稼働が必要になる。

体験はこれからの時代のビジネスに必要不可欠な要素だが、それだけでは再現性に乏しく成長が稼働量と比例する仕組みに陥ってしまうのだ。

そしてそのひとつの解決策のひとつの流れがサブスクや会員モデルではないかと思う。

ただサブスクモデルは基本的に個人がそれぞれ楽しむ範囲で閉じてしまいやすく、飽きたり他のものに目移りすることも増える。ひとつのものを深く楽しんでもらうには、同じ目線で一緒に楽しめる "仲間"が必要だ。

では体験時代に仲間を増やしながら収益を上げるためのビジネスモデルとは何か。

そのヒントは『パブリックビューイング』にあるのではないかと私は考えている。

今年フジロックがYoutubeで配信されて話題になったけれど、TLの盛り上がりを見ながらせっかくなら東京でサテライト鑑賞できる場を作ればいいのに、と考えていた。

サテライトパブリックビューイングの主催者は申し出制にして、フランチャイズのように本家にコンテンツ使用料として売上の何割かを支払う。

この仕組みであれば主催者も自分たちが作り上げた一次コンテンツを元手に収益を増やし、それをまたコンテンツに再投資することもできるし、ファン同士の横のつながりが勝手に生まれていきやすい。

そしてイベントオーガナイザーとしてもすでにあるコンテンツを使えることで集客もしやすくなる上に、コンテンツクオリティが担保されているので体験づくりに注力することができる。中途半端なイベントに参加するくらいならNetflixで映画を見たりスマホのゲームをしたりと選択肢が溢れている時代、人が集まるコンテンツを作るのはそれだけで至難の技だ。

これは音楽に限った話ではなく、スポーツやトークイベントでも同じことが言えるのではないかと思う。

テクノロジーの進化によってコンテンツの配信は可能になったとはいえ、人はいいコンテンツに触れれば触れるほどその感想を分かち合いたいと考える生き物だ。

とはいえコンテンツメイカーが自分たち自身でコンテンツ流通すべてを賄おうとすれば手間もかかるし、全体で見たときに非効率であることも多い。

だからこそCDやレコード、テレビの発明によってコンテンツの流通が大きく変化したように、これから体験の流通もテクノロジーによって進化していくのではないかと思うのだ。

★noteの記事にする前のネタを、Twitterでつぶやいたりしています。


ここから先は

0字

「余談的小売文化論」の内容に加え、限定のSlackコミュニティにご招待します!

消費文化総研

¥2,500 / 月 初月無料

「消費によって文化を創造し受け継いでゆくこと」を考えるコミュニティマガジンです。 有料マガジンの内容に加え、購読者限定Slackで議論を深…

余談的小売文化論

¥800 / 月 初月無料

「知性ある消費」をテーマに、現代の消費行動や理想論と現実的な問題のギャップについて考え、言語化しています。「正解」を語るのではなく、読み手…

この記事が参加している募集

コンテンツ会議

サポートからコメントをいただくのがいちばんの励みです。いつもありがとうございます!