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これからの時代、洋服を売る上で必要なこと

私は学生時代にアルバイト代のほとんどを洋服に使うくらい洋服大好きだったのですが、そういえばここ3、4年はめっきり洋服を買わなくなりました。

時々ユニクロやGUでシンプルなアイテムを買い足すくらいで、平日の多くはノースリーブニット+ミモレ丈スカートが定番コーディネートです。

なんで洋服を買わなくなったんだっけ、と思い返してみると、学生時代に比べて"新しい洋服を着て行きたいイベント"が圧倒的に減ったことが一因なのかも、と気付きました。

学生時代って時間が潤沢にあって、学校に行くのも半分遊びみたいな気分だし、学内を歩いているだけで知らない人に会う機会もたくさんあります。

だからこそ毎日何を着て行こうか、これはこないだと同じコーディネートだから新しい服を買い足したいな、という気持ちになりがち。

でも社会にでて毎日同じメンツとオフィスで顔を合わせ続けるだけだと、私がかわいかろうがボロボロだろうが誰も気にしなくなり、徐々にかわいく見せたい気持ちって薄れていくと思うんです。
(時々すっぴんでオフィスに現れてごめんなさい…w)

毎日同じ電車に乗ってオフィスに行って、同じ場所で同じ人と仕事して、いつもと同じように家に帰る、そんな"ケ"ばかりの日が続きすぎると、人は見た目に頓着しなくなってしまう。

もともと洋服というアイテム自体が好きな人はそれでもちゃんと毎日見た目に気を使うのだろうけど、大多数の人は「今日は仕事だけだし全身ユニクロでいいや」と考えがちなのではないでしょうか。

だからこれから洋服を売るために必要なのは、"ハレ"の場をどう作っていくかなんじゃないかと思う。

会社帰りにデートするとか、出勤前に素敵な朝ごはんを食べに行くとか、そういうちょっとだけ特別な日をどう演出していくのか。

「ここに行くならちゃんとかわいい格好をしたいな」と思わせる場所づくりは、これからの小売に密接につながっていくような気がしています。

最近はアパレル企業の飲食への参入が増えていますが、単純にブランドのコンセプトカフェを出すのではなく、一歩進んで「適当な格好をして行きたくない、このブランドを着て行きたい」と思わせる雰囲気作りができるかどうかが差別化のポイントだと思います。

たとえば、水曜日には毎週異なるドレスコードが指定されるレストランやバーがあったら面白い。

スタンダードにカラーの指定だけでもいいですし、男性は全員蝶ネクタイに付け替えないといけないとか、なんならそのブランドのアイコンとなるアイテムを無料で貸し出してお店の中が白シャツの人しかいない状態にするとか、そういうファッションを楽しめる飲食店こそアパレル企業にやってほしい。

もちろんこれからは洋服を買うことだけがスタンダードではなくて、ファッションレンタルのairClosetがデート向きの飲食店と提携して、入り口でかわいいワンピースをその場でレンタルできたら楽しいのにな、なんてことも考えたりします。

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ファッション業界にいる人は、大多数が"洋服というアイテムが好き"な人だと思うんです。

だからデザインや素材、ディティールにこだわって語られることが多いのですが、洋服にそこまで興味がないほとんどの人にとっては、洋服ではなく自分が主人公なんですよね。

まず自分がどこで何をするのか、誰にどう見られたいかがあって、はじめて着たい服というのが決まる。

だからファッション誌もこれからは、ファッションページ、ヘアメイクページ、レストランやおでかけのページとそれぞれ分けずに、どんな場所にどんな服を着て、どんなヘアメイクをしていくのかを1Pで表現するところとかでてきたら面白いんじゃないかと思っています。

まず「ここに行きたい!」「ここでこんなことしたい!」と感じてもらって、「ここに行くならこういう格好がいいよね」と思ってもらう。

女性って、そういうイベントベースの洋服の買い方なんじゃないかなと思うんです。

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以前1着何十万もするドレス(もはやワンピースではない)を勉強のためにとっかえひっかえ試着させてもらっていたときにはじめて、この「着ていく場所がない」問題を強く感じたことを今でも覚えています。

グッチのドレスもヴァレンティノのドレスも、女性の体やそれぞれの素材について知り尽くしたデザイナーが作り上げたものだけあって質感からデザインに至るまですべてが最高で、着るだけでお姫様になったような気持ちになりました。

でもプロダクトとしてどんなに魅力的でも、使う場所がなければ買おうとは思えない。
これってすごくもったいないことだなと思っていて。

ハイブランドのドレスの例は極端ですが、たまたま見てかわいいと思った2、3万のワンピースも、別に着ていく場所もないしな…と思ってそっとラックに戻した経験は誰にでもあるはずです。

いつも気を張った格好をしつづけるのは大変だけど、時々は素敵な自分を演出したくなる場所があること。

そういう場所を作ることで、街にたくさん素敵な人が増えて、人生を楽しむ大人で溢れる世界になっていけばいいなと、そんな思いをもって今日も粛々とサービスに向きあっています。

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