私たちが短期的視点で決断をしてしまう理由

私はあらゆる意思決定において『将来価値が最大化するか』が一番の指標なのですが、この見ている時間軸の違いによる齟齬はよくぶつかる壁でもあります。

短期的な利益と長期的な利益が合致する施策もありますが、それと同じくらい、今を消費し尽くすことによって将来価値を下げてしまう施策もたくさんあります。

わかりやすいところで言えば、まるで嫌がらせかのような誤クリックを誘発するようなバナーだったり、SEOに引っかかることだけを指標にした中身のない記事だったり。

もちろん短期的な利益を追うことこそが人生の楽しみだという人もいるでしょうし、ない袖は振れないというようにそんな悠長なことは言っていられないという人もいるでしょう。

はじめから短期的な利益のためと腹を括る必要があるタイミングもあるので、それ自体は特に問題ないと私は思っています。

ここで問題なのは、『ここは我慢すべきところ』とわかりつつも、つい目の前の売上や利益に意識を引っ張られてしまい、やりたい方向と実際の行動が乖離していってしまう人が多いことです。

私自身も目先の売上や数値目標に一喜一憂することがあるので、なぜ人は長い目で見て考えようと思いつつ、短期的な利益に引っ張られてしまうのかを自分の心境の変化を観察しながら考えていました。

そこで気づいたのは、先の話になればなるほど自分の意思決定に自信が持てなくなっていくということです。

しかもこれは皮肉なことに、自分の得意分野であればあるほど顕著に意思決定に影響します。

例えば10年後の業界や市場の変化を考えたら今こういう手を打っておくべきだとわかっていても、その結果が出るまで10年辛抱している間に
『本当にこれが正しいのか?やっぱり業界の常識に則った方がいいのではないか?』
と疑心暗鬼になっていくのです。

特に同業他社が目先の利益を狙った施策でうまくいっていると、
『うちも同じことをした方がいいのではないか?』
『そうこうしているうちに市場をとられてしまうのではないか?』
と不安が押し寄せてきます。

もちろん、本当に戦略を練り直した方がいいことも往々にしてありますが、信頼やイメージを考えるとそこには手を出さない方が5年、10年後に強固なブランドを作れるとわかっていても短期で結果がでるわかりやすい施策への誘惑を断ち切るには相当の覚悟が必要なのです。

さらに短期的な視点で行う施策は、結果がどうあれ自分にも周りにも言い訳しやすく、責任を逃れやすいというメリットもあります。

『まずやってみよう』
『失敗は成功の母だから仕方ない』
スタートアップカルチャーが広まった今、こうした隠れ蓑になる言葉も同時に世の中にあふれていますが、ほとんどの場合はPDCAにほぼ寄与せず『とりあえずやってみてダメだったリスト』が更新されていくのみです。

実はその失敗によってブランドを毀損してしまっているかもしれないという可能性や、我慢すればブランド価値が上がったかもしれない機会損失について省みられることはほとんどありません。

以前書いた下記の記事でも紹介した『小さなチーム、大きな仕事』という本の中に『失敗を過大評価しない』という言葉がでてくるのですが、明確に失敗だとわかるものだけが失敗ではないという意味もあるのではないかと思います。

ではどうすれば短期視点に陥らずに未来を考えられるのかというと、『将来価値の増大に確信を持つ』しかないのではないかと個人的には思っています。

自分たちが描く未来に確信を持ち、そこから逆算して今やるべきことを考える。

このプロセスを通してしか、目の前の誘惑に打ち勝つことはできないのではないかと思うのです。

そしてそのために多くの企業はブランド価値について考え抜き、それを明文化し、美意識とプライドを持って『やらないこと』を決めているのだと思います。

目先の利益を追い求めそうになったら、まずは自分たちの未来に立ち返る。

言葉にするとシンプルですが、こうしたシンプルなことをやり続けられる組織が長く生き続けていくのだろうと思います。

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今日のおまけは、MadewellやReformationといったD2Cブランドが米百貨店・Nordstromに出店することで彼らの収益に貢献している理由について。

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最所あさみ

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最所あさみ

Retail Futurist / curator。「知性ある消費を作る」をミッションに掲げています。 将来は世界一の店舗メディアを作る予定。noteの有料マガジン「余談的小売文化論」とコミュニティマガジン「消費文化総研」もよろしくどうぞ!

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