見出し画像

応援したい人がいる人生

ヤクルトが負けている。

いやまあ、もともと常勝軍団とはいえない我が贔屓チームではあるのだけど、なんと16試合連続で負けている。

年間140試合あるうちのたった16回黒星がついただけではあるのだけど、それが連続してしまうとまた別の意味合いが出てきてしまう。

派手に負ける日もあれば、ギリギリ1点差で負けたり、お互い打ち合ってわけがわからなくなった末に負けたり、一打逆転まで追い詰めながら負けたり、負け方のバリエーションも豊富だ。それでこそ我らがヤクルトスワローズである。

こうなってくるともう勝ち負け自体に一喜一憂するのではなく、毎日肩を落としながら引き上げていく彼らがお立ち台に立ってほしいと、そればかりを願うようになる。私たちのためじゃなくて、とにかくもう、自分たちのために勝ってくれと。

辛いことがあるたびに、私は栗山監督のこの言葉を噛みしめる。

『これだけうまくいかないからこそ、人間は努力するんだ。こんなに大事なことはない』

ヤクルトもまさに『大事なとき』なんだと思う。

打てない、抑えられない、たった一勝が果てしなく遠く感じる。

でも必ずそこに意味はある。意味はあると思ってやるしかないんだよな、うん。

よく考えたら私がこんなに気を揉んであげる必要はないし、勝てないときはDAZNもスポナビも立ち上げなければこんな暗澹たる気持ちになることはない。彼らが勝とうが負けようが私の人生には何の関係もなくて、ヤクルトが何連敗しようと私の日常は淡々と過ぎていく。

だけれども、と私の中の魂がさけぶ。

自分以外の何かのために泣けるほど心を動かすことができる人生は豊かだと思うんだよ、と。

哲人の100本塁打に立ちあった日も、私が観戦した試合で樹理がはじめて勝った日も、2015年に優勝したときも、私は神宮で泣いていた。

大人になるとよくも悪くも泣くほど感情が揺れることはどんどん減っていくけれど、野球は毎年飛び跳ねるほど嬉しいことや、悲しくて立ち直れないようなことを運んできてくれる。それを人生の彩りと呼ぶのだと、私は思う。

勝利の喜びも敗北の悔しさも、若者への期待もベテランとの離別も、ギリギリの勝負への緊張も奇跡への興奮も、野球には色彩豊かな感情がぎゅっと詰まっている。

そしてそこに足を運ぶ私たち自身の歴史もまた刻まれ、コンテキストが何重にも折り重なった結果、自分だけの物語が生まれていく。

他の人にとってはいつもと変わらない試合でも、私にとってはその場から動けなくなるほどの衝撃を受ける試合だってある。

何年もかけて回収されるドラマが、そこにはあるから。

これは野球に限った話ではなくて、他のスポーツや音楽やアイドルにも言えることだと思うのだけど、自分以外のことで泣けるほど感情移入できるものがあるって、すごく豊かなことだと思う。

いつも楽しいばかりではなくて、ときには辛いこと、悲しいことも起きるのだけど、それも引っくるめて、彼らは私たちの人生を豊かにしてくれている。

応援する側にできるのはただ信じて待つこと、そして彼ら自身が楽しんでくれるように祈ることくらいだ。こう書くと無力な存在に見えるけれど、何があっても待っていると言ってくれる人がいることは大きな力になると、私自身が経験として理解できるようになったからこそ、確信をもって彼らを応援していきたい、と思っている。

ヤクルトには、やっぱり能天気なほどの笑顔が似合う。

勝ってほしいという気持ち以上に、彼らには楽しく野球をしてほしい、と思う。

大人だから、プロだから、重圧も責任も焦燥感もあるし、『楽しい』と一言で片付けられるほど単純な感情で野球に向き合えるものではないということもわかってはいる。

わかってはいるのだけど、それでも、ファンのため以前にまず自分たち自身が野球をできる喜びを感じながら、楽しんでほしいと思うのだ。

そしてきっと私はまた泣くのだろう。明日にでもお立ち台に立つあなたたちの姿を見て。

私には、泣きたいほど応援したい人たちがいる。

がんばれヤクルト。トンネルを抜ける日は、もうすぐそこ。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

note.user.nickname || note.user.urlname

いただいたサポートは、今後のnoteに生かすための経験や他のクリエイターさんたちへのサポートに回していきます!note内で優しい循環を回していきたい。

ありがとうございます。おかげさまで明日もnote更新がんばれます。
186

最所あさみ

Retail Futurist / curator。「知性ある消費を作る」をミッションに掲げています。 将来は世界一の店舗メディアを作る予定。noteの有料マガジン「余談的小売文化論」とコミュニティマガジン「消費文化総研」もよろしくどうぞ!

白球を追いかけて。

"野球"の面白さについて、女子的なきゃっきゃした視点とか突然ビジネスっぽい視点とかちょっとななめな感じからおとどけします
6つ のマガジンに含まれています