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家族は、何度だってつくり直せる。

人の悩みや課題に向き合うたび、人格形成は幼少期の育ち方に起因することが多いのだなとつくづく思う。

いい面も悪い面も、辿っていくと小さい頃の記憶や習慣がベースになっていることが多い。

特に自己肯定感は、家族からどういう風に愛されてきたかの軌跡が如実に出る。

私は教育に関しても心理学に関しても専門家ではないけれど、生まれつきの素質よりも育ち方によってある程度考え方や感じ方の基礎ができてしまうと、そこから大きく修正するのは難しいのかもしれないと感じることがよくある。

例えば、よく言われる『条件付きの愛情が自己否定感を作る』という話は実感としても真実だと思う。

特にエリート家庭で何でもできて当たり前とか、物心ついたときから言外に他の子と比べられてきた人の『これができない自分に価値はない』という思い込みの強さは、素人がどうこうできる域を超えている。

私は運良く何をしてもかわいいかわいいと親戚中から褒めそやされ(という都合のいいこと以外忘れただけという可能性もあるけど)、ちゃんとした受験なんて大学受験ではじめて受けたというくらいのんびり育てられたタイプだけど、今の性格は天性のものよりもやはり生育環境によるところが大きいと自分でも思う。

人からの愛情を無条件に信じて受け入れられるかどうかは、自分が愛されるに値する人間だと感じる訓練を幼少期にどれだけ積むことができたかに大きく左右される気がしている。

でも大人になって思うのは、その訓練を積む場所を血縁関係や戸籍上の家族だけに求めなくてもいいんじゃないかな、ということ。

前述の通り私はわりと普通の家庭で普通に育ってきたけれど、それでも自分自身の家族を『つくり直す』ことの大切さを感じている。

いつだったか『結婚相手は唯一自分が選べる家族』と誰かが言っていたけれど、私はそんなことないと思う。

社会的身分はさておき、自分が家族だと思った人が家族だ。そう考えた方が選択肢が広がって気が楽になるし、未来に希望も持てる。

何より、家族というのは人為的に作られるような類のものではなくて、『なっていく』ものなんじゃないだろうか。

私には何人か勝手に家族だと思っている人たちがいるのだけど、別に声高に『私たちは家族!』と言い合っているわけでもなくて、ある日ふと『あ、これが家族というものなのかもしれない』と思って、そこから私の中で家族という位置付けになっている。

むしろ相手からしたら私は『家族』の定義には当てはまっていないかもしれないけれど、別にそれはそれでいいかなと思っている。

じゃあ私は何をもって家族と定義しているのかというと、お互いに相手が自分らしくあることを心から祝福し、祈ることができるかどうか、というのが今のところの私の答えだ。

自分の利益のためでもなく、マウンティングでもなく、説教欲を満たすためでもなく、ただ相手が自分らしくあることを嬉しいと思いあえる相手は、すごく貴重な存在だと思う。

それはつまり、何かの役割やできることがあるからではなくて、ただその人であるということがその場における存在理由になるということだ。

もちろんそれぞれが感じる『その人らしさ』にもバイアスはかかっているとはいえ、嬉しそうでよかったねとか楽しそうで安心したとか、そういう感情はとても『家族的だなあ』と思う。

人はその場所を大抵は結婚やもともとの家族関係に求めるのだろうけど、別にそういう形式をとらなくても、いくらでも家族はつくり直せる。

自分の育った環境があまり恵まれていなかったり、自分の作り上げた家庭が歪んでいったりすると人はその中で立て直さなければと焦るけれど、まず別のセーブポイント作ればいいんじゃないかと思うのだ。

その上で、自分の歩いてきた物語を肯定するために過去の記憶の塗り替えが必要だったら改めて過去と向き合えばいい。

人が戦いに出られるのは、帰る場所があるとわかっているからだ。

自分の帰る場所や所属している場所がもはや安息の場所ではなく、自分を傷つけるだけでしかなかったら、誰だって戦えなくなるに決まっている。

そして回復するための場所は、自分で見つけて編み直すこともできるのだとわかっていれば、人は思いの外強く生きていけるんじゃないかな、と思うのだ。

もちろん、必要に応じてちゃんと専門家もセーブポイントとして認識しておくことは前提で。

***

『家族』にかけられた呪いは、自分自身が思っているよりもはるかに重い。

でも、自分の意思さえあれば、新しく家族をつくり直してその呪縛から自分を解放することは誰にでもできる。

だからもう少しだけ未来に希望を持ってみてもいいんじゃないだろうか。

ということを伝えたい人の顔が何人か浮かんだので、その人たちにいつかこのnoteが届くといいなという願いを込めて。

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