二極化するリアル店舗の未来
先日参加した「本はインテリアになったのか?」というイベントで内沼晋太郎さんと浅子佳英さんのお話を聞いてきました。
タイトルの通り本にまつわる話題がベースだったのですが、本の領域を超えて小売全般の未来について語られていたこともあり学びの多いイベントでした。
やはり売ることを真剣に考え抜いてきた人たちの話は、領域が違えど面白い。
今回のイベントで思わず唸ったポイントをまとめると下記の3点。
1.本、特に雑誌は毎日入れ替わるからこそ本屋は人を惹きつける
2.これからのリアル店舗はここにしかない体験を売るか、圧倒的に便利になるかの二極化
3.蔦屋書店が誠品書店から学んだのは、テナントリーシングで稼ぐというビジネスモデル
この中でも2.のリアル店舗の未来はちょうどBOPIS(Buy Online, Pickup In Store=オンラインで買ってリアル店舗で受け取る)という考え方を知ったばかりだったこともあり、非常に納得しました。
トークの中ではYAECAの白金店を例に出されていたのですが、探すのも一苦労で入るのも心理的ハードルが高い、「ファンでないといかない」お店でブランドの世界観を感じてもらうというのはこれから確実に増えていくと思います。
対して帰り道ですぐに買い物して帰りやすい駅ナカ店舗や、Amazonのリアル店舗のように利便性が高い店もリアル店舗の意義として残りつづけていく。
購買体験をいかにワクワクしたものにさせるかというエンターテイメント的な側面と、いかに無駄な行程を排除してスムーズに買い物できるかという利便性。
これからのリアル店舗はこの二極化にどんどん向かっていくというお話は非常に納得感がありました。
そして個人的には、前述のBOPIS的な考え方もさらに広がると考えていて、オンラインで予約した商品を好きなだけ試着できるというお店のあり方もこれから増えていくのではないかと感じています。
現在日本のEC化率は7%前後と言われていますが、商品の配送・受け取りがひとつのネックになっているような気がします。
別にみんなECが便利で買っているわけではなく、選ぶところまではZOZOTOWNやAmazonを使って、商品を受け取るのは実店舗でもいいわけです。
だってECがなかった時代はそうしてきたんだから。
特にこれから単身世帯が増えて行く中で、この受け取り問題はますます深刻になっていきます。
そもそも都心で働く単身世帯で、平日の20時〜21時に家にいることができる人はどれほどいるのでしょうか?
土日だって朝早くから夜遅くまででかけていることもあるでしょう。
自分のタイミングで受け取りたくても、指定した時間に家でじっと待つしかないのが現状です。
また返品無料とどんなに打ち出していても、やはりいらないものを梱包してコンビニや郵便局にもっていくのは手間なもの。
私たちにとって一番便利なのは、オンラインで試したいものを選び、家や会社の近くのお店で試し、必要なものだけ買う、という流れです。
(新宿ニュウマンは全館23時までにしてこういう使い方にチャレンジしてみてほしいと常々思っている)
これならば同じ量の商品を運ぶにしても、配送先をある程度集約できるので運送業界もかなりラクになるはず。
そしてこうやって試着してもらう場を各地に作るということは、必ず売り上げにもつながります。
試さずに買うのは怖い、でもお店に行ったら買わされそうという恐怖で袖も通してもらえない洋服たち。
ユニクロに行けば試さずともほどほどおしゃれに見えるとわかっている「80点」の服が並んでいるのだから、皆がそちらに向かうのは当然のことです。
だからこそこれから立地のいい、便利な場所にある商業施設内の使い方は「売る場所」から「試してもらう場所」に変わっていくのだと思います。
そこで試して興味を持ってくれた人を、「わざわざ行く必要がある」世界観を体験できる自分たちのショップへ招く。
エンターテイメント性と利便性という2つの側面を、リアル店舗においてうまく使い分けられるブランドこそがこれから伸びていくのだろうなと改めて考えさせられたイベントでした。
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(Photo by tomoko morishige)
私のnoteの表紙画像について書いた記事はこちら。
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