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「気持ちよくお金を払えるポイント」をどれだけ作れるか

小売業、その中でも特に実店舗が好きな私にとって、「店舗経営」は常に興味の尽きないテーマです。

とはいえ自分の資本で店舗を経営した経験はないので、無責任にあれやこれや言っているだけではあるのですが、最近の私は「キャッシュポイントをどれだけ多く作るか」についてよく考えています。

キャッシュポイントが多いということは、その場を楽しむための方法に多様性があるということだと思うからです。

例えば、小売店であれば普通は入店してから商品を吟味して、買うと決めてから最後にお金を支払います。

これは入店の時点で誰でも店舗を楽しめるように見えますが、実際には「買わないといけない」というプレッシャーから、高級店ほど敷居が高くて入りづらく感じたり、入っても店員さんが寄ってくると逃げるように出ていったり、という人も少なくないでしょう。

であれば、入店の時点でお金を払って自由に商品を見て触って試着して、さらに追加料金を支払えばプロがじっくりコーディネート相談に付き合ってくれるという方が、本来のその場のポテンシャルを最大限に引き出すことができるのではないか、と思うのです。

さらに言えば、場をメディアととらえて他ブランドの商品を置ける広告スペースを作ったり、スポンサー企業を募るといった、個人ではなく企業という「別の財布」へのアプローチの可能性も考えられるはずです。

このように、単にモノを仕入れて売る以外のポイントが複数あることで、店舗側としても「売らなければいけない」というプレッシャーから解放され、よりチャレンジングな取り組みができるようになります。

そんなことを考えていたとき、bar bossaの林さんが初台のカフェ「フヅクエ」について書かれた記事を目にしました。

フヅクエは私語禁止のブックカフェで、チャージ料をとるところまでは知っていたのですが、追加でコーヒーやスイーツを注文すると後からその金額分だけチャージ料が戻ってくる仕組みだということは、この記事を読んではじめて知りました。

そしてこの仕組みには、「キャッシュポイントをたくさん作る」上で重要な要素が隠れているように感じたのです。

先日、課金やコンバージョンの考え方について、こんなツイートをしました。

単に「キャッシュポイントを作る」だけであれば、前述のフヅクエの例はチャージ料も追加の飲み物代もすべてプラスオンでとるのが正しいやり方になります。

しかし、その場合ほとんどの人はコーヒー1杯でギリギリまで粘ることになるでしょう。

結局課金が起きないモデルなのであれば、それは本当の意味で「キャッシュポイントを作った」とは言いません。

フヅクエのビジネスモデルがうまいのは、「消費の言い訳」を価格設定に盛り込むことで、「どうせ2,000円支払うなら、ついでにスイーツを食べたり追加のコーヒーを飲んだりしよう」と消費するきっかけを作っているところなのです。

とはいえ、この場合一見すると上限2,000円で原価のかかるスイーツや追加のコーヒーを出すのは、フヅクエにとって損でしかないようにも感じます。

この場合は、おそらく全員がスイーツと追加コーヒーを頼んでも十分店舗が回るだけの利益が出せる価格設定になっていて、先に「2,000円」という情報があることによって相対的にお得感を演出し、満足度を高めるという仕組みなのではないかと思います。(結果的にそうなっている、という意味も含め)

私は自分の価値観としてできるだけ「長く続くもの」を作りたいと思っているので、一見さんばかりが列をなしていつのまにか忘れ去られてしまうよりも、長く通ってくださるお客様を一定数もつこと、そして満足によって自然な口コミで人が集まることが何より大事だと思っています。

そう考えると、単に複数のキャッシュポイントを積み上げてたくさん儲かればいいという発想ではなく、お金を払う選択肢を複数作った上で、お客様の満足度と価格が釣り合うように仕組み自体を調整する必要があるのだとフヅクエの仕組みを知って改めて気づかされました。

「お金を払う」ことを、ストレスではなくひとつのエンターテイメントとして感じてもらえるように。

引き続き、「気持ちよくお金を払えるポイント」の作り方について研究していきたいと思います。

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最所あさみ

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最所あさみ

Retail Futurist / curator。「知性ある消費を作る」をミッションに掲げています。 将来は世界一の店舗メディアを作る予定。noteの有料マガジン「余談的小売文化論」とコミュニティマガジン「消費文化総研」もよろしくどうぞ!

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