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本は編集者で選び、イベントはモデレーターで選ぶ時代へ

昨年あたりから、急激に『編集者』という仕事に注目が集まっているように感じるのは、私の周りに編集者が多いことばかりが理由ではないと思います。

編集者という仕事を説明する言葉は多々あれど、その役割をキュレーターとメーカーの合わせ技だとするならば、この情報化社会の中で『トレンドを読んで作る』ところまで一貫してできる人の存在は今後ますます重要になっていくからです。

たとえ同じ情報を渡されたとしても、編集者によってその切り口や構成の作り方はまちまちです。

それは言い換えれば『何を面白いと思うか』であり、今後はその感性にファンと信頼がつく時代だと言えるのではないでしょうか。

なぜなら、私たちはこれから『作り手の飽和時代』を迎え、コンテンツの差別化がますます難しくなっていくからです。

以前noteの加藤さんが『現代人は誰でも必ず文章を書ける。なぜなら、人類史上類を見ないほどに誰もが1日に多くの文章を書いているからだ』とおっしゃっていてとても納得したのですが、文章に限らず今は人が何かを作ることが容易な時代になりました。

ハンドメイドでアクセサリーや洋服を作ることも、音楽や動画を作ることも、おしゃれな写真を撮ることも、昔は専門職の人しかできなかったことが趣味でできるようになっただけではなく、販売まで容易になりました。

私が日々書いているこのnoteも、毎日発信する人も増えたし、マガジンもこの半年ほどでかなり増えています。

つまり普通に作るだけでは誰の目にも止まらないし、逆に言えば情報が溢れすぎて自分の好きなコンテンツを見つけることが困難な時代になりつつあります。

こうした流れを受けて生まれたのが『キュレーター』という存在だと思うのですが、今編集者という存在が注目されているのは、キュレーションから一歩進んで新しいものを作り出すことが期待されているからなのではないでしょうか。

ちなみに私は、キュレーターと編集者の違いは『作り手にどれだけ影響を与えたか』なのではないかと思っています。

情報を集めてきて並べるキュレーターと呼ばれる人たちは、基本的に作り手に影響を与えることはありません。出来上がったものを自らの感性で並べ替えたり少し見せ方を変えたりして、受け手との新しいチャンネルを作ります。

一方で作り手の感情を揺さぶり、そもそもに立ち返らせたり、自省を促すような存在を私は編集者と呼んでいます。

究極の壁打ちであり、作り手の奥底にあるものを引き出す仕事。これからはどの分野でも、そうした役割の人が求められていくのかなと。

つまりそもそもいいクリエイターに出会うためのハブという機能に加え、作品に影響を与えるその編集者自身の切り口がこれまで以上に評価される時代になりつつあると言えるのではないかと思います。

だからこそ書籍であれWeb記事であれ、これまで黒子とされてきた編集者にスポットが当たるようになり、『この人が編集した本/記事なら』という信頼によって手にとったりページをクリックする人がますます増えていくのではないかと思うのです。

ちょうど昨日、クラシコムジャーナル で編集/ライティングを担当している長谷川さんについてこんなツイートもしたのですが、本当にびっくりするくらい編集者によって読みやすさも読後感も変わるんです。

これまではいいコンテンツとの出会いを創出するキュレーターは『メディア』という単位でしたが、今後フリーランスも増えていく中で、人軸でコンテンツを選ぶ時代になっていくのかもしれません。

そしてこの話でふと思ったのが、モデレーターという役割も、その場の編集者かもしれないということ。

しかも取材や記事の編集に比べると一発勝負のライブ感がある分、緊張感も並大抵ではない『編集作業』です。

モデレーターもここ最近イベントの感想で言及されているのを見るにつけ、広義の編集者というコンテンツを調理する人への注目度の高まりを感じます。

私もたまにイベントに参加者として行ってみて思うのは、たとえ同じゲストでもモデレーターによってイベントの内容は大きく変わるということです。

もしかしたらそのうち、ゲストだけではなくモデレーターの顔ぶれによって集客が変わってきたりする可能性もあるんじゃないかな、と個人的に思ったりしています。

『この人がモデレーターだったら面白くなりそうだから行ってみようかな』という動機でそこまで興味がなかったテーマに人が集まるようになったら、それが一番モデレーター冥利につきることなんじゃないだろうか、とも。

もちろん文章にせよイベントにせよコンテンツ自体や作り手、ゲストの魅力が一番大事であることに変わりはないのですが、その輝かせ方の手腕と受け手との相性は今後ますます重要になっていくことは間違いないと思います。

本は編集者で選び、イベントはモデレーターで選ぶ時代へ。

そんな時代の変化をうっすらと感じるここ最近です。

★noteの記事にする前のネタを、Twitterでつぶやいたりしています。

以前「『モデレーター』で稼ぐために必要なこと」という私なりに重要だと思ったことをまとめたnoteを書いてから早半年。

あれからいくつもイベントでモデレーターをする機会をいただいてきた中で感じた、モデレーターをやる上で一番大切な、それでいて『元も子もない』話について、今日のおまけで書きたいと思います。

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