「ZOZOSUIT」への悔しさと感謝と、私たちはここからどう戦っていくべきなのかということ。

私は今、この文章を半分泣きそうになりながら書いている。

何の感情なのかは自分でもよくわからないが、とにかく「すごい」という言葉がずっと頭の中でぐるぐるしている。

ルールが変わる、ここから。

毎週アメリカや中国のニュースを拾って自分なりに解説する中で、遅々として改革が進まない日本のアパレル業界に歯がゆい思いをしてきたが、ここから大きく変わる。

昨日はそう確信した日だった。

ZOZOSUITはすごい。きっと世界をとる。

私が人並みにものを考えられるようになって以来、一番と言っても過言ではないほど衝撃を受けたこの「ZOZOSUIT」という商品のすごさを、私なりに解説して見たいと思う。

アパレル業界が次に解決しようとしていた "サイジング"という課題

私が未来を航海するためのコンパスとして常に読み返している「創造する未来」で、これからは「サイズ」がキーになると力説されていた。

ちょうど半年前にこれを読んだときはサイズの重要性にピンときていなかったが、サイズはアパレル業界が解決すべき直近の大きな課題だと最近になってようやく理解した。

その理由は
①EC化の最大のネックが「サイズ」であること
②今後「オーダーメイド」がさらに広がっていくこと
③サイズ展開と在庫の関係がグローバル化のネックになっていること

の3つである。

それぞれ簡単に解説すると、まずアメリカですらファッション分野におけるオンライン比率はやっと10%の大台にのったところだといわれている。ちなみに日本は7〜8%程度だ。

いまだに「試着したい」という希望は根強く、その理由の大半はサイズ感の問題である。(もちろん肌触りや顔映りといった理由もあるだろう)

この問題を解決するため、様々な企業がテクノロジーを駆使してサイズのデータを蓄積し、「あなたにはこのサイズがぴったりです」といったレコメンドをだすサービスなどを開発してきた。

しかし、そもそも採寸をしたことがない人も多く、そもそもデータをとるところで躓く事例が多かったように思う。

パッと見て気に入っても、「やっぱり、着てみないことにはわからない」と購入を諦め、そのうちお店に寄ろうと思っているうちに忘れてしまっっていた、という経験をしたことがある人も多いのではないだろうか。

その機会損失をなくすこと。これはアパレル業界の悲願といっても過言ではないのだ。

また、サイズが重要となる2つめの理由は、D2Cモデルと呼ばれる中間流通を排除した直販モデルがアメリカを中心に一般的になり、さらにカスタムオーダーも一般的になりつつある点だ。

しかし現在のカスタムオーダーは男性のワイシャツやバッグ・財布などの服飾雑貨が中心で、婦人服の領域に進出しているブランドはほとんどない。

婦人服はそもそも男性のスーツやワイシャツに比べるとオーダーの習慣も薄く、デザインのバラエティが膨大にあるため、その人のサイズすべてを所有していなければオーダーアイテムを作ることは難しいからだと思われる。

ただ、今後テクノロジーが進化していけば、いつか全ての人がオーダーメイドで洋服を仕立てる日もくるだろう。

オートクチュールと呼ばれるオーダーメイドの時代からプレタポルテと呼ばれる既製服に時代が移っていったように、今またテクノロジーの力で、オーダーメイドの時代が訪れようとしている。

しかも今回は、富裕層だけではなく一般層まで行き届くかたちで。

私たちはS・M・Lというサイズから自分にあうものを選んで着ているが、実際には人によって腕の長さや体のまるみや厚さなどはすべて異なる。

そしてファッションはサイズこそが重要であり、自分に合うものを着るだけで一気に垢抜けて見えるものである。

だからこそ、これから確実にオーダーメイドは増えていく。

そのときにネックになるのが「サイズのデータをどうやってとるか」だったのだ。

さらに、企業の戦略を考えたとき、このサイズ問題はグローバル化のネックにもなってきた。

婦人服を中心に日本では「F」、つまりフリーサイズの商品が一定数存在する。

これは企業の苦肉の策でもある。

例えばS・M・Lの3サイズ展開の場合、それぞれ綺麗にはけてくれるとは限らない。Mサイズは欠品するほど売れたのに、S・Lサイズは膨大に余っているということもよくある。

しかし、Mサイズの人に別のサイズを進めるのは難しい。すると、Mサイズなら需要があるのに、S・Lサイズの在庫は大量に抱えなければならない、という状況が生まれてしまうのだ。

だから、企業はできるだけサイズ展開を少なくし、ワンピースなど体型が大きく響かないデザインのものは極力「F」のワンサイズで展開しようとする。

ほぼ同じような体型の人ばかりの国内市場であればそうした戦略も意味があるものの、縦にも横にも様々なサイズの需要に答えなければならない海外市場では途端に通用しなくなる。

これは、在庫リスクを負わずに、ひとりひとりにあったサイズの商品を届ける仕組みさえ作れば解決する問題である。

この悲願が②のオーダーメイドブランドの勃興につながっており、つまりアパレル業界の問題の多くは「サイズのパーソナライズ」にあるといっても過言ではなかったのだ。

そしてZOZOSUITが世界を変える。

そんな中、彗星のように現れたのがZOZOSUITだ。

以前から前澤社長がTwitterで「キーワードはサイズ」と漏らしており、おそらくオーダーメイドの何かなのだろうと考えていたが、まさかプラットフォームをとりにくるとは思わなかった。

そう、ZOZOSUITはプラットフォームだ。だからこそ、アパレル業界に与える影響は計り知れない。

ZOZOSUITによって何が起きるかというと、まず前述の②で説明したブランドのオーダーメイド化が加速する。

わざわざお客様にサイズを測りにきてもらわなくても、ZOZOSUITでデータをとっているお客様であれば、オンライン上だけで完結できる。

つまりブランドは、魅力的なビジュアルとZOZOSUITを活用したものづくり工程さえ用意できれば、最小限の在庫リスクで洋服を販売できるようになったのだ。

そう遠くない未来、「既製品」という概念が過去のものになる可能性がある。

過去に富裕層たちがランウェイを見て「あれをちょうだい」と注文していたように、ゆくゆくはオンライン動画や大量の画像をチェックするだけで自分のサイズにぴったりの商品が送られてくるようになるだろう。

そのくらい、ZOZOSUITはこのオーダーメイド化を加速させる存在なのだ。

そしてその次に何が起きるかというと、ベーシックな既製品を大量生産して稼ぐビジネスモデルがそう遠くない未来に崩壊する。

なぜならば、既製品を買うのとあまり変わらない価格で自分のサイズにぴったりの洋服が手に入るのであれば、誰でも後者を選ぶからだ。

もちろん「今すぐにほしい」を叶えるためにある程度の既製品在庫は残っていくものの、主流ではなくなる。

すると、規模の経済がきかなくなり、価格が相対的に上がっていく。

「既製品を買う」はむしろ贅沢品になる可能性すらあるのだ。

そしてこの影響は二次流通にまで及ぶ。

自分にぴったりの着丈が、他の人にもぴったりだとは限らない。

おそらく自分の体型と近い人との間で洋服をシェアしたり、売買の際にはZOZO IDに紐づいたZOZOSUITのデータが必要になる未来も考えられるだろう。

そして「既製品」という概念が過去のものになったとき、実店舗の「売場」の意味も大きく変わる。

そこはもはや「売場」ではなく、「ショールーム」に近い空間になるだろう。

私たちはZOZOSUITありきですべてを考えなければならない

たった一撃で、オセロの駒がすべてひっくり返った。

私はこのニュースを見たときにそう感じた。

なぜならば、アパレルに関わる誰もが、ZOZOSUITを抜きにしてこれからの戦略を考えられなくなってしまったからである。

そしてZOZOSUITの強さは、はじめに無料で配りまくると明言しているところにある。

開発コストや製造コストがいくらかかっているかは不明だが、これだけの投資をするということは、「勝てる戦」だと判断したということだ。

勝ちにきている、この人たちは。そう思ったのだ。

これからおそらくAmazon、アリババとがっぷり四つで戦うことになるだろう。

このままいけば、少なくともアパレル分野においてはZOZOSUITを擁するZOZOTOWNがグローバルの市場をとっていくだろうと思う。

サイズのデータを握るということは、それだけアパレル業界を牛耳るための要諦なのだ。

いち個人としては、この覇権を握ろうとしているのがZOZOTOWNで、前澤さんでよかったと心から思っている。

私なぞがいうのもおこがましい話だが、ファッションを深く愛し、理解し、「ファッションで世界を平和にする」と心から信じている人がプラットフォーマーであり続けなければ、ファッションという花は枯れてしまう

少なくとも前澤さんがトップであり続けるうちは、アパレル業界全体を底上げする方向で動いていくのではないかと思う。

だからこそ私たちは、このプラットフォームをいち早く使える立場として、次の一手を自分たち自身で考えなければならない。

ずっと遅れをとっていると焦ってきたけれど、日本発でファッションを変えるときがきたのだと思う。

2017年、時代の波が大きく変わる瞬間に、私たちは生きている。

「ここから、私たちはどうすべきか。」

一人一人の思想が試されている。

(表紙画像は前澤さんのTwitterより)

【追記】

D2Cモデル分野でめちゃくちゃ信頼している会社・TO NINEさんが同じ日に「サイジングマーケティングの時代」という記事を書かれていて、めちゃくちゃ専門的で且つわかりやすい内容だったので、私の記事を読んで「もっと深く知りたい!」と思われた方はぜひ一読をおすすめします。

ちなみに彼らが手がけているD2Cブランドはこんな感じ👇

・オーダーシャツKEI
https://ke-i.co/
・オーダーハイヒールgauge
http://gauge.shoes/

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最所あさみ

これからの、小売の話をしよう。

ショップは、ただモノを"売る"だけの場所ではなくて。そしてお客様は"買ってくれる"だけの相手でもなくて。明日がくるのが楽しみになるような、そんなショップがそこら中にある世界について考えたことを書いていきます。 (photo by tomoko morishige)
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コメント2件

いつも勉強になります!
今頃読みましたが、今流行りの古着屋なんかも改革を迫られそうですね…
古着屋で良さそうなデザインを見つけてもやはりショールーム的な役割となりそう。
それを自分のサイズで作ってくれるような材質とデザインを集約できる会社が出来そうな予感です。色々な問題が山積みでしょうけど…
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