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どこで生きるかは、どう生きるかだ

おいしいお店や楽しい場所の話をすることが多いからか東京生活を謳歌していると思われがちな私ですが、実はゆくゆく実家に帰りたいなあ、とふんわり考えている移住女子予備軍です。

18歳で地元をでたときは「もう二度とここに住むことはないだろう」と思っていたけれど、人の考えなんてどこでどう転ぶかわからないものです。

ふと福岡で暮らしたい、と思ったのは何回めの帰省のときだっただろう。

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ここ数年なんとなく「移住」「Uターン」という言葉が目につくようになってきて、30歳までに帰るとしたらもうあんまり時間がないなとか高校を卒業して東京にでてきちゃったから福岡にコネクションないなとか「帰りたい」と「帰ろう」の間をふらふらしてきました。

そんなとき伊佐さんからいただいた「移住女子」という一冊の本。

移住へのイメージがガラリと変わる内容でした。

私はかなりの田舎で生まれたのでそのリアルを知っているし、地方で暮らす上で仕事を見つける難しさも身にしみて感じています。

でもこの本にでてくる女性たちはみんな、仕事があるかないかをそもそも悩んでいないことに心底驚きました。

この土地が好き。ここで暮らしたい。

その想いが先にあって、後から自分で仕事を"創っていく"。

地方にはたしかに雇ってもらえる仕事は少ないけれど、誰も手をつけていない資源は山ほどあって、若手がいればやりたいと思っていることもごろごろ転がっているということをひしひし感じました。

そしてもうひとつ驚いたのは、インタビューされている女性たちの多くが関東圏の都会育ちということ。

自分が田舎出身の分、これまで都会育ちの人から田舎に移住したいという話を聞くたびに「そんなに簡単じゃないよ、違う国だと思わないときついよ」とやや上から目線で諭していましたが、この本を読んで田舎で生きるということに対して、都会育ちか田舎育ちかは関係ないのかもしれない、と感じました。

田舎は娯楽が少ない分、消費には向いていない土地です。

でも生産が楽しい人にとっては、都会にいるよりも刺激的で時間がいくらあっても足りないくらい面白い場所なのだと思います。

その土地に馴染めるかどうかをわけるのはどこで育ったかではなく、どんなマインドで生きてきたか・生きていきたいかなのだと気付かされました。

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以前「土地への愛と、アイデンティティと自立。」という記事の中で、愛よりも自分らしく生きられる場所を選んだポカホンタスというキャラクターを引き合いに出して、暮らす場所とアイデンティティについて考えたことがあります。

なぜ地元に帰りたいのかを考えたとき、そこが私という存在を受け入れてくれる場所だということが大きいように思います。

「移住女子」の中にでてくる新潟に移住した佐藤可奈子さんも同じようなエピソードを語られていて、思わずわかるわかる!と何度もうなずいてしまいました。

その後も、「太い指は働いている手なんだから、いいじゃない」「丸々して可愛らしいから、可奈子なんだ」「おいしそうに食べている姿が一番お前さんらしい」と、今の私を肯定してくれるような言葉をたくさんもらって…。私は、もしかしたら私のままでもいいのかもしれない。氷が溶けていくように、ゆっくりと私の中の価値観も変わっていくのを感じました。

背伸びしなくても、自分にお砂糖をまぶさなくても、ただ私が楽しそうにしているだけで幸せになってくれる人たちがいる。

それは怠けていいということではなくて、私の「幸せ」が自然と周りの「幸せ」につながっていくという関係性。

自分の好きな自分を引き出してもらえる場所が、誰にでも必ずあると思うのです。

そんなことを考えながら思い出したのは、人気漫画「東京タラレバ娘」の中で主人公が仕事で伊豆に行くことになり、若い若いとちやほやされここに住むのも悪くないかも…と思うシーン。

人の評価は相対的で、東京で評価されなくても場所を変えれば180°評価が変わることもあるということを端的に表したエピソードだと思います。

以前「「田舎」は逃げる場所ではなくて」という記事の中で、逃げの姿勢では帰りたくないという主旨のことを書いたのですが、これを書くきっかけになった映画リトル・フォレストの主人公いち子も一度は逃げのUターン移住をしているんですよね。

そして一番自分が健やかにいられる場所で心が回復してみてはじめて、これからどうしたいのか、自分がこの場所に対して何ができるのかを考え始める。

今いる場所に違和感があるのなら、それはもしかして自分のせいではなくて環境を変えてみたら解決することなのかもしれない。

自分を責め続けるのではなく、視野を広げて他の選択肢を見て、体験してみたら「なーんだ、場所を間違えてたんだ!」と気づくかもしれない。

自分が評価されづらい価値観の中で無理して生きるのではなく、「今の自分が一番好き!」と思える場所を選ぶことこそが自分を大切にしてあげるはじめの一歩なのだろうと思います。

もちろんそれは移住だけではなくて、転職にしてもパートナー選びにしても同じこと。

どこで生きるかは、どう生きるか。

移住する/しないに関わらず、自分の人生と真剣に向き合う女性たちの強さを感じた一冊でした。

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