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透明なものしか、生き残れない時代へ。

これからの時代のキーワードのひとつである「透明化」。

先日、話題の小説「ザ・サークル」を読んで改めて、透明化の流れが不可逆的であることを感じました。

あらゆる場所にカメラが置かれ、人々は自分の見ているもの・聞いたことを全自動で公開する。

物語の中では、こうした透明化を突き進めた末のディストピアが描かれていましたが、程度の差こそあれ、この先もしばらくは透明化の流れが変わることはないように思います。

「透明化=誠実さ」という価値観

「透明化」を語る上で欠かせないのが、アメリカの人気アパレルブランドEVERLANEです。

EVERLANEは「Radical Transparency(過激な透明性)」をコンセプトに据えている通り、原価から産地、自分たちのマージンまですべてをweb上で公開しています。

D2C(Direct to Consumer)と呼ばれる、ECを中心に直接消費者へ届けることで中間マージンをなくし、いいものを安く届ける新しいビジネスモデルの先駆者でもあります。

自分たちの商品がなぜ高品質なのに安いのか、その理由を提示する際に具体的な金額を提示することで、より説得力を持たせています。

EVERLANEはアメリカのミレニアルズから絶大な支持を得ており、商品のよさはもちろん、その企業としての姿勢や取り組みに共感しているファンが多いのが特徴です。

透明化とは誠実さである、という価値観が浸透し、情報の非対称性を利用して儲けようとする企業はどんどん淘汰される時代が到来しています。

もはや情報を「隠す」ことは不可能な時代へ

また、最近ではホールフーズやSumAll、bufferなど全社員の給与を公開することで、給与とパフォーマンスについてオープンに話し合い交渉する機会を与える企業も増えています。

全従業員の給与額公開は是か否か-米で増加中」という記事でも書かれていた通り、これまでは給与に関する情報が非公開とされていたことで、「ある従業員が同僚より稼ぎがずっと少ないことをたまたま知ってしまった」という状況において、気まずい思いをすることが多々ありました。

給与だけではなく、非公開情報を知って嫌な気分になるという体験は、誰しも経験があるのではないかと思います。

さらに今は、ネットやSNSが発達したことでその頻度は格段に上がりました。

機密事項ですらもウィキリークスのような告発メディアによって暴かれ、もはやどんな情報も隠し切ることが難しい時代になりました。

だからこそ、はじめから情報を公開し、公明正大であることをアピールする企業が増えてきたのではないかと思います。

つまり、これからは誰に見られても問題ない状態にしておくこと、隠しごとを作らないことが当たり前になっていくということです。

昔から「人の口に戸は立てられない」と言いますが、今自分がしようとしていることは誰に見られても恥ずかしくないことか?と一呼吸おいてアクションする意識がますます重要になっていくように思います。

透明化が、監視になってしまわないために。「ポジティブな秘密」も持っておく

今後透明化がますます進んでいくことは必然ですが、冒頭でご紹介した「ザ・サークル」で描かれていたように、透明化は突き進めすぎると監視社会に転じる危険も孕んでいます。

そこで必要なのは、知られても問題ないけれどあえて公表はしない「ポジティブな秘密」をもっておくことなのではないかと思います。

例えば誰かとごはんを食べたとか、どこかに遊びに行ったというのは、オープンに投稿しても問題ない話題です。

でも、あえて公開しないことで相手と自分の秘密になる。

フォトジェニックな場所、インスタ映えする場所がもてはやされる時代だからこそ、あえて行ったことを公開しない場所の価値があがるような気がするのです。

その筆頭がきっとバーやスナックであり、大人の社交場として、ますますその役割が重要になっていくように思います。

「誰に見られても問題ない状態にしておく」ことをベースにしつつ、宝物のような思い出は、消費されないようにあえて自分の中だけで楽しむ。

このバランスこそが、今後求められていく姿勢なのではないかと思っています。

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(Photo by tomoko morishige)

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