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"公平"を求めるとセンスが死ぬ問題

私にとって、東京で好きなスイーツショップの二大巨頭といえばHIGASHIYAJANICE WONG

おいしいものは数多あれど、心ときめくおしゃれさと手の届くラグジュアリーを体現している空間は、そう多くないと思います。

そんな大好きなJANICE WONGの目の前を通った時、衝撃を受けたのが店舗外のガラス部分に「ルミネカード10%オフ!」のステッカーが貼られていたこと。

あまりのミスマッチぶりに目眩がしそうな思いでした。
衝撃すぎてその場でツイートしてしまったくらい…。

このツイートにも書いた通り、ステッカー自体は当たり前にかわいくて、さすがルミネだなというデザインなんです。

ただ、すごくポップな雰囲気のデザインだったので、JANICE WONGのラグジュアリーモダンな世界観との差が大きすぎて、銀座のショーウィンドウにきゃりーぱみぱみゅのポスターが貼られているような違和感が…。

私も元・館側の人間なので、例外を作ってはいけないというルールもよくわかります。

「あそこは貼らなくていい」という例外を作ってしまったら、他のブランドにどう説明するのか?

この「公平性」の問題は、商業施設というリアルの場にかぎらず、オンラインのプラットフォームでも起きる問題だと思います。

そしてふと思い出したのが、先日話題になった校則問題。

地毛が茶髪の子に黒髪を強要するのは明らかにやりすぎですが、これは先生だけが責められる問題ではないように思います。

1人茶髪の子がいたら、その子の体質や背景をまったく知らない人から見れば「なぜあの子だけ茶髪が許されているの?」
という話になります。

校内ならまだしも、外を歩くあらゆる大人に説明して回るなんてできませんし、「私は地毛が茶髪です」という札を首から下げておくわけにもいきません。

だったら例外を作らないようにその子に黒髪にしてもらおう、という心理がこの問題の根っこにあるように思うのです。

***

先日、とあるインタビューでこんな話を聞きました。
私たちのよさは公平じゃないこと
ここがやったから次はここで持ち回り、なんてことは絶対にやらない。
判断基準はいつも、『自分たちがいいと思うかどうか』です。」

ちなみにこのときに私がした質問は、
「なぜ、これだけクオリティにこだわったものが作れたと思いますか?」
というもの。

「公平」を重んじるなら、行政がやればいい。
私たちは民間だからこそ、全員が美意識に則って判断できるんです、という回答に我が意を得たりという心持ちでした。

「公平」は、常に善とされている概念です。

誰にでも等しく平等であれ。
抜け駆けもえこひいきも、ずるいやつのすることだ。

それが、私たちが小学校から教わってきた「道徳」です。

しかし一方で、公平性を重んじることは、「調整」に甘んじることにもつながります。

冒頭のステッカー問題でいえば、「みんながつけているのであなたもつけてください」と甘んじることは簡単です。

しかし、今回のようにどう見てもテイストがあっていないテナントもあるわけで、みんなが横並びで合わせる必要がないことも多々あると思うのです。

それを認め始めたら誰もつけたがらないのではないか?という心配もあるでしょうが、そもそも誰もつけたらがらないものを作る方が悪いのでは?と私は思います。

「10%オフ」という情報自体は、テナント側にとっても発信するメリットがあるものです。
それをつけたがらないテナントが多いということは、デザインを変えるなり掲示場所を変えるなり、何か策を講じる必要があるという気づきにもつながります。

テナントと館は本来同じ利益(=お客様が買い物を楽しんでくださること)を目的にしているのだから、仕組みさえ整えれば同じ方向を向けるはずだと思うのです。

有名なエスニックジョークに、こんなものがあります。

様々な民族の人が乗った豪華客船が沈没しそうになる。それぞれの乗客を海に飛び込ませるには、どのように声をかければいいか?
アメリカ人に「今飛び込めばあなたは英雄ですよ」
イタリア人に「美女たちも泳いでいますよ」
フランス人に「決して海には飛び込まないでください」
ドイツ人に「規則ですから飛び込んでください」
日本人に「みなさん飛び込んでいますよ
(出典:Wikipedia

私たちは、世界的に見ても「みんなやっているのだから」という説得に弱い。
そして負担も利益も、平等に分かち合おうとする癖がある。

もちろん平等や公平性は大切なことだけれども、「みんながそうだから」という公平性に甘んじる心が思考停止を引き起こし、誰も惹きつけない丸いものが出来上がってしまうのだと思います。

尖ったものでなければそもそも見つけてもらえない時代、「公平」なんてぶっちぎって無視して、クオリティを最優先できるものだけが生き残っていくのではないか。

そんなことを考えた晩秋のお散歩タイムでした。

【追記】
話の核心に至るための導入として例に上げただけなので、新宿ルミネの施策についてどーのこーの言いたいわけではありません。
基本的に商業施設というものは、この点に関しては国内外問わず同じ姿勢だと思うので、こう変えたらいいのにという現実的な提案でもありませんので悪しからず。

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(Photo by tomoko morishige
今日は久しぶりのtomoko morishige写真!

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