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日本が「世界のデパート」を目指すべき理由

その国の特徴を表すとき、よく「世界の◯◯」という言い方をします。

中国であれば「世界の工場」、アメリカであれば「世界の警察」、古くはイギリスが「世界の銀行」と呼ばれ、今はスイスがそう呼ばれているように、グローバルで見たときにどの分野で一番秀でているのかが端的に理解できる表現だと思います。

日本が今現在他国から何と呼ばれているのかはよくわからないのですが、今後に関して言えば私は「世界のデパート」を目指すべきだと思っています。

「世界のデパート」というと「爆買い」のイメージをもつ人も多いかもしれません。

しかし、「爆買い」は一時のブームではなく、「爆買い」を引き起こすほどの品質と目利きへの信頼が、日本のもつ強さの一つではないかと思うのです。

例えば、掃除機で有名なダイソンが、新商品を本国より先に日本市場に投下するという話は有名です。

日本の消費者は品質への要求レベルが高く、日本人に受け入れられさえすれば、どの国で販売しても受け入れられるというのがその理由なのだそうです。

ちなみにこれは卵が先か鶏が先かという話と同じで、日本のあらゆるプロダクト・サービスのレベルが高いために消費者の「当たり前」レベルが上がり、それにあわせてさらに商品やサービスが改善されていく、というスパイラルの成せる技なので、急にどこかの国が真似しようと思ってもなかなか真似できるものではありません。

この「簡単に真似できないこと」をきちんと強みとして自己認識し、その強みが発揮される環境を整えることは、個人だろうと会社だろうと国家だろうと等しく重要な考え方です。

さらに言えば、日本人の新しいものに飛びつくミーハーさや、同時に飽きるのが早い国民性も、ダイソンのように「実験の場」として使うにはぴったりの特徴を兼ね備えていると言えるでしょう。

こうした強みを生かして様々なブランドを誘致し、日本人の厳しい目でフィルタリングされたユニークな店舗がたくさんできれば、ただブランドものを買い漁るだけではなく世界中から「いいもの」を求めて観光客が集まり、定常的に「爆買い」が発生する可能性を秘めていると私は考えています。

また、ニセコのリゾート開発などを見ていても、日本人が望むと望まざるとに関わらず、日本は観光立国へと向かっていくことになります。

そこにマーケットチャンスがあれば、法規制でもしないかぎりは誰かが既存の資産に付加価値をつけてより大きなお金をうむのがグローバル資本主義の原則だからです。

事実、この時期のニセコは「オーストラリア村」と呼ばれるくらいオーストラリアからの観光客が多く、またそこにチャンスを見た外国人がこぞって土地を購入し、ペンションやホテルを作って経済を回しています。

そしてこうした観光客増加の動きは、東京や大阪、北海道、沖縄といった国内旅行でも人気の場所ばかりではなく、むしろあまり知られていない通な場所として盛り上がる地域も増えていくはずです。

海外は日本とは休暇の概念が異なるため、長期間滞在する外国人観光客が日本全国津々浦々に増え、さらにこちらは万国共通の心理である「旅行先で財布がゆるむ」という現象により、消費が促進される可能性は大いにあります。

相対的に日本の物価は下落傾向にあるとはいえ、アジア諸国にしろ欧州・米国にしろ、日本まで来て長期滞在できるのは富裕層も多いはずです。

だからこそ、大都市だけではなくあらゆるエリアで質の高いものを揃え、地域の体験とセットで訴求することで、「世界のデパート」として繁栄する勝算はかなり高いと思うのです。

***

では、これから日本が「世界のデパート」を目指す場合に足りないものは何なのでしょうか。

私は、もっとも重要なのは「消費者教育」だと思っています。

渋沢栄一は、「論語と算盤」の中でこんなことを言っていました。

「お金の本質を本当に知っている人なら、よく集める一方で、よく使っていくべきなのだ。よく使うとは、正しく支出することであって、よい事柄に使っていくことを意味する。
「よく集めることを知って、よく使うことを知らないと、最後には守銭奴になってしまう。いまの若い人たちは、金づかいの荒い人間にならないよう努力するのと同時に、守銭奴にならないよう注意すべきなのである。

私は「知性ある消費」を自分のテーマにしているのですが、これだけ世の中には「稼ぎ方」が溢れかえっているのに、「使い方」を学ぶ機会はほとんどないことにずっと疑問を持ってきました。

「買う」とは、ただ単に自分の欲を満たすためのものではなく、後世に伝え残したいものを買い支え、次世代に繋いでいくという意味もあると思うからです。

毎日同じものを着て似たようなものを食べて同じ場所で過ごすこともひとつの幸せですが、誰かの魂が込められたもの、神経を張り詰めて作られたものに触れる体験は、漢方のようにじわりじわりと体の内側からその人を変えていくと私は思っています。

もちろん無駄遣いをしたり、享楽的なことばかりに使って身を破滅させるのは言語道断ですが、「稼ぐ」と「使う」にメリハリをつけ、いいものと触れる時間をとるこは、あらゆる人に必要な栄養だと思うのです。

私自身もまだまだ勉強中の身ではありますが、そうしたいいものに触れて感性を磨く場を作ることで、品質だけではなく感性の部分でも日本の目利き力への信頼が大きくなれば、世界での立ち位置もまた変わっていくはずです。

作って売るという「稼ぐ」発想から、感度の高い個人を育て、消費レベルの高い国へ。

大げさではなく、それが日本のこれからの戦略のひとつなのではないかと思います。

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最所あさみ

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最所あさみ

Retail Futurist / curator。「知性ある消費を作る」をミッションに掲げています。 将来は世界一の店舗メディアを作る予定。noteの有料マガジン「余談的小売文化論」とコミュニティマガジン「消費文化総研」もよろしくどうぞ!

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