数字はすべてを癒すが、魂は救えない

『売上はすべてを癒す』という有名な言葉がある。

売上だけではなく、スポーツであれば勝利だったり、勉強であれば合格だったり、達成による喜びはたしかにそれまでの苦労すべてを癒す。

でも、ひとつのハードルをクリアしたことによる喜びはレッドブルのようなもので、ずっとそれだけで走り続けることはできない。

ハードルを飛び続けた先に何があるのか、自分はどこに向かっているのか。走りながらいつかはその問いにぶつかることになるからだ。

数字という結果は、絶対にその問いには答えてくれない。

むしろ『もっと、もっと』のループに入って思考停止してしまう、そういう魔力を持っている。

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先週、ユーザベースの共同創業者・新野さんが全社MTGで「人間は何を失うのが怖いって、『意味』を失うことだと思うんだよね。人間は生きる意味を失ったときに、最も絶望的な状態になる」という話をしてくれた。

新野さんの言葉は本当に力強くて、経営者というのは言葉で人の心を動かす生き物なのだな、と改めて思った。

そしてこれから働く意味が大きく変わっていく中で、こうやって希望という行き先を示してくれる人に人はついていくのだろうな、ということも。

希望というのは単に大きい目標を掲げるということではなくて、『私たちが確信している正義は何か』を自分の言葉で語るということだと私は思う。

誰のために、何のために、どんな未来のために。
そうやって自分たちがやっていることに『意味』を付与していくこと。

究極的に言えば、経営者を含め、上に立つ人の仕事はそれだけなのかもしれない。

自分たちの存在意義を十分に理解した上で『今年はこれだけの人を幸せにできたね』『こんなに喜んでくれる人がいたね』と確認するのが売上という数字なのであって、目の前の数字の桁がひとつ増えたところで私たちの幸福度にはそんなに関係がない。

私たちに必要なのは自分を必要としてくれている人がいること、つまり自分が存在する『意味』を感じられることなのだ。

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漫画『キングダム』で秦王・政が『人の持つ本質は──光だ。』と語るシーンがある。

現実主義の宰相・呂不韋との問答に答えたこの言葉は、私が物語の中で一番心打たれた場面だった。

自分で事業をやったり、プロジェクトを回している人にとっては呂不韋の現実に即した考えの方がしっくりくる場合が多いと思う。

私も人は結局争いを辞められないと思うし、無駄に殺し合いをするよりは力を拮抗させたまま今をそこそこ豊かに生きるべきという呂不韋の考えにも賛同するところはある。

でも、それでも人は光を求める生き物だし、そして同時に自分も誰かの光にもなりうるのだ。

確かにそれは理想論かもしれない。でも光なくして生きていけるほど、人間は強くない。

例え理想論だと言われても、臆することなく理想を語るのがリーダーの仕事なんじゃないだろうか。

数字に追われがちな時代だからこそ、折に触れて『意味』に立ち返ることが、人を幸福に導く鍵なんんじゃないだろうか。

自分が幸せにしたい人に、自分の価値を届けて、幸せになった姿を見ること。

人の幸せは、そういう一見なんでもないところにあるんじゃないかと私は思っている。

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今日の余談は、最近ずっと考えていたことを質問できていろいろ解決したという話。自分用メモなので特に役に立つような話ではありません。

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最所あさみ

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最所あさみ

Retail Futurist / curator。「知性ある消費を作る」をミッションに掲げています。 将来は世界一の店舗メディアを作る予定。noteの有料マガジン「余談的小売文化論」とコミュニティマガジン「消費文化総研」もよろしくどうぞ!

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