サブスクリプションの未来と、人は何にお金を払うのかということ

ここ数年アメリカを中心に盛り上がっていたサブスクリプションモデルも、最近は徐々に落ち着いてきて、サブスクリプションに向いている商材と向かない商材の明暗が分かれてきたように思います。

「毎月商品を送る」というモデルの走りであるコスメサンプルのサブスクリプション・GLOSSYBOXは紆余曲折の末、日本での事業は@コスメに買収されBLOOMBOXという名前で成長を目指し、サブスクリプションビジネスで必ず名前がでてくるカミソリのDollar Shave Clubもユニリーバに買収されました。

他にも香水やコールドジュース、ワインなどの「お試しサイズ」を毎月種類を変えて送るサービスがたくさん生まれましたが、比較的成功した企業でもIPOではなく売却でのEXITであることを考えると、サブスクリプションモデルは単独で事業スケールを拡大することは難しく、何かしら既存事業があった上でシナジーを出すことに向いているのかもしれません。

そしてこうした状況を見ていて改めて思うのは、「そもそも人はもうモノは欲しくない」ということ。

分野によって平均的な継続率は異なるとは思いますが、個人的な肌感覚としては3ヶ月スパンで継続or解約を検討するユーザーが多いのではないかと思っています。

というのも、限りある家計の中で、常に新しく現れる「ほしいもの」「したいこと」のためにお金が足りないとなったとき、一番最初に見直されるのが嗜好品と固定費だからです。

例えば夏休みに海外旅行をするために貯金しようと思った時、ほとんどの人が外食を減らしたり、毎月の出費を見直して不要なものは解約するといった決断をします。

嗜好品のサブスクリプションモデルはほとんどが「嗜好品」であり、且つ「固定費」でもあるため、真っ先に解約検討の俎上に乗せられてしまうのです。

つまり、実はサブスクリプションモデルは世の中で言われるほど安定的な収入にはならず、常に新規会員を獲得するための広告費を投入する必要がでてくるため、事業としてスケールしづらいのではないかと私は思っています。

では、必需品であれば継続するかというと、これはAmazon Dashボタンとがっぷりよつの市場になるため、長期的に見るとどちらにせよ大勝ちできる分野ではないように思います。

特にサブスクリプションの場合は毎月商品が届くのが一般的ですが、人によって消耗のスピードは異なるため、自分がほしいと思ったときにワンタッチで注文できるAmazon Dashボタンの方が利便性が高いと感じる人の方が多いのではないでしょうか。

ちなみに、私が思うこうしたサブスクリプションモデルの最大の欠点は、モノが届いてしまうが故に良くも悪くもユーザーに契約を「思い出させてしまう」ということです。

例えばAmazon PrimeやNetFlixやジム、英会話といった無形サービスへの課金は、お金を払っていることを忘れたまま契約し続ける人が一定数いることが前提になっています。

それがビジネスの本質として健全かどうかはさておき、使わなくてもお金を払っている人がいるからこそ、事業規模が担保できるという面もあるのではないでしょうか。

しかし、モノのサブスクリプションは、宅配がベースのため全員がサービスの利益を享受します。

さらに、毎月サービスの存在を思い出させる接点が発生するため、サービスを享受すると同時に「来月もこれを継続するか」という選択を無意識にユーザーに迫ってしまっているのです。

そして家の中を見回してみて、使っていない商品が溜まってしまっていたら解約への道まっしぐら。

これが、私が根本的にモノのサブスクリプションがスケールしないと思っている理由です。

しかし、どんな分野でも毎月定期的に入ってくる収入は魅力的なもの。

特に在庫リスクの高い小売業にとって、会員制度がうまく回るようになればよい商品を作ることに注力できるようになります。

では、どのようにサブスクリプションモデルを取り入れればいいのか。

私は、その鍵はサブスクリプションの価値を「モノ」ではなく「権利」にすることではないかと思っています。

例えば、モノが届く代わりに、毎月定額を払うことでショップ内にあるシークレットルームが使えたり、特別なイベントに招待されたり、限定コンテンツが見られるといった無形の価値を届ける方が、継続率も満足度も高まるのではないかと思うのです。

「モノよりコトへ」はすでに使い古された言葉ではありますが、人がお金を払う価値はどんどんモノから体験や情報になっています。

それはサブスクリプションにおいても例外ではなく、人はモノがほしいのではなくそのモノを通した体験にお金を払っているのです。

だからこそ、今後はファッションブランドが有料マガジンやオンラインサロン、クラウドファンディングを活用していくことが求められていきますし、そうした試みを通じて「洋服を通してどんな価値を社会に提供したいのか」を自分たち自身で突き詰めていく必要があると思います。

私が日頃から応援しているEVERY DENIMさんもちょうど昨日からオンラインコミュニティを公開していて、今後はこうした無形サービスのサブスクリプションが盛り上がっていくのだろうなと改めて感じました。

えぶりシティ:https://www.everycity.fun/

私は小売が大好きで本当に楽しい業界だと思っていますが、ただ単に「モノを売る」ということに拘泥するのではなく、洋服やコスメ、アクセサリー、食品インテリアなどの商材をメディアとして見ることが重要だと思っています。

その商品にどんなメッセージを乗せて、誰に何を伝えたいのか。世界をどう変えていきたいのか。

今後はそうした思想への共感にこそ、人はお金を払う価値を見いだすのではないかというのが、最近の私の考えです。

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最所あさみ

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