見出し画像

私とあなたのちょうどいい距離

友人であれ恋人であれ家族であれ、人との関係性について考えるときにいつも思い出すはりねずみのカップルのはなし。

雪山ではりねずみのカップルが身を寄せ合おうとするけれど、近づきすぎるとお互いの針が刺さるし遠すぎると体が冷えてしまう。
近づいたり離れたりしながら、やがて二匹は針が刺さることなく一番温かさを感じられる距離を見つけ、眠りに落ちる。

細かい描写は忘れてしまったけれど、こんな話だったような記憶があります。

調べてみると、哲学者であるショーペンハウアーが「ヤマアラシのジレンマ」というテーマで書いたお話が様々なバージョンで広まったようです。

人間関係に疲れたり傷つくようなことが起きるたびに、このはりねずみのカップルの話を思い出して「ああ、きっと今私たちは本来のベストな状態より近づきすぎてしまったんだな」と思うようにしています。

お互いの間に距離があれば、傷つけ合うことはなかったはず。

「傷つく」というのは、もっと近づきたいと思って身を寄せた結果、相手の針が刺さってしまった状態なのだと思います。

私たちが傷つけ合うのは相手の人格の問題でも傷つきやすい自分の性格の問題でもなく、近づきすぎた距離のせい。

罪を憎んで人を憎まずとよく言いますが、「単に近づきすぎただけ」と思えば比較的スムーズにリカバリーできる気がします。

そして最近思うのは、このベストな距離感は常に変わるものだということ。

はりねずみのカップルの例えでいえば、お互いがずっと一箇所にとどまっているわけではなく、寝相が悪くて近づきすぎたり、ごはんをとりに遠くにいったりしてまたベストな距離を調整しなおさないといけないシーンに直面します。

さらに針の長さが成長したり、生え変わったりすることもあるでしょう。

そんなとき毎回面倒くさがらずにベストな距離を調整しつづけること。

パートナーシップとは、永遠に「傷つけずに温めあえる距離」を模索し続ける姿勢のことなのかもしれません。

一度心を通わせればずっとそこに安住できる、なんてことはなくて。

そうした努力を払える相手は人生の中でもほんの一握りだからこそ、時にお互いの針で血だらけになることがあっても逃げずに向きあっていきたいと思っています。

***
(Photo by tomoko morishige)

私のnoteの表紙画像について書いた記事はこちら。

サポートからコメントをいただくのがいちばんの励みです。いつもありがとうございます!