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小売のしくみが変わるとき

ECで買い物をするとき、ワクワクした経験はありますか?

私はどんなに綺麗に見せているブランドでも、あの「カートにいれる」「決済する」の流れにどうもげんなりしてしまいます。

せっかく洋服を見てワクワクした気持ちになっても、あの味気ないフォーム入力によって一気に現実に引き戻されてしまうのです。

そんなことを考えていたときにこの記事で「Text-To-Buy」という考え方を知り、これこそが小売の未来かもしれない、と思いました。

Wellness Beverage Company Dirty Lemon Pioneers A New Retail Model

英語の記事なので簡単に要約すると、Dirty Lemonという飲料メーカーはすべて直販しているだけでなく、購入はSMSを使ったメッセージのやりとりによって行われています。

問屋や小売店を介さず、ECを中心とした独自チャネルで顧客に直接商品を届けることで中間マージンを排除し、いいものを安く提供するこのビジネスモデルは「D2C(Direct to Consumer)」と呼ばれ、NYを中心に流行の兆しを見せています。

EVERLANEWarby Parkerlululemonallbirdsなど爆発的に業績を伸ばしているブランドも多々あります。

個人的にこの中でもDirty Lemonが画期的だと思ったのは、すべてSMSを介した購買に振り切っているということ。

「これもできます」ではなく、「これでやってください」という意思を感じます。

実際Dirty LemonのHPを見てもらえばわかるのですが、つくりはとてもシンプル。

4種類のドリンクの中から好きなものを選び、[ORDER]を選ぶと電話番号の入力フォームがあり、そこから購入完了まではすべてSMSのメッセージ内で完結します。

▼SMSを利用したやりとりの例

(出典:Forbes

どのくらいbotを使ってどのくらい手打ちしているのか、1か月で5万ちかくやりとりされるメッセージは何人くらいで回しているのかは記事の中から読み解けなかったのですが、ユニクロも中国では専用のチャットセンターを設けており、グローバルで見るとコミュニケーションとコマースの距離はどんどん近づいていくように思われます。

なぜそうなるかというと、コミュニケーション=購入という行為自体のオーダーメイド化だからです。

これまではEC上で買い物をするとき、決められたことを決められた手順で進める必要があり、途中でわからないことがあっても無視して進めるか購入自体をやめることが多かったように思います。

しかしテキストメッセージベースであればちょっとした疑問も注文の流れの中で気軽に質問することができ、その距離感こそがファンをつくるポイントになるのです。

実際中国や東南アジアではECが確立する前にSNSが普及したこともあり、ECをもたずFacebook上で商品を紹介し、メッセンジャーで個人情報を送ってもらって購入を完了させるというブランドもあるようです。

さらにこのやり方のなにがよいかというと、冒頭の「ワクワク感を損ねる」ことがないということです。

カートにいれる、決済するという行程はどうしても現実に引き戻されるし、ECのデザインに制約を与えます。

「かわいい、ほしい!」と思わせるためのデザインの自由度が、今のECの仕組み上ではどうしても低い。

コミュニケーションを前提としたサイトのつくりであれば、とにかく洋服を魅力的に見せることに注力できます。

それも商品をアピールするのではなく、雑誌の着まわしコーディネートのようにシーンを想像しやすく、物語性があって、世界観そのものに「いいね!」と思えるような見せ方。

それはある意味「生き方」の見本市とも言えるものかもしれません。

人がものを買う行為は、もっともっと楽しいものになっていきそう。

そんな希望を感じたDirty Lemonの事例でした。

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(Photo by tomoko morishige)

私のnoteの表紙画像について書いた記事はこちら。

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