パ・リーグTVは天才である、というはなし

プロ野球はセ・リーグとパ・リーグの2つに分かれているのだけど、その2つのうちパ・リーグにしかない素晴らしい取り組みがある。

それがパ・リーグTVだ。

パ・リーグTVはなにがすごいのか?

パ・リーグTVというのは、端的に言うと月額1000円弱払えばオンデマンドでパ・リーグの全試合が見放題というサービスだ。
huluやNetflixの野球版だと考えればわかりやすいかもしれない。

しかしすでに録画が浸透しているドラマと違って、スポーツ中継というのは数少ない視聴率がとれるコンテンツである。

このあたりの大人の調整というのは並々ならぬ苦労があっただろう…と思う。
現にセ・リーグは同様の施策を打てずにいる。
(これはセ・リーグが悪いわけではなく、昔不人気の代名詞だったパ・リーグ球団の危機感からくる頑張りで実現したことであって、セ・リーグを責めるのではなくパ・リーグを褒めるべき事象だ)

パ・リーグTVのすごさはそれだけにとどまらない。
なんと毎日試合のダイジェストやらプレー集やらを配信してくれるのである。
それも、無料で。

たとえばこれは3/13の福岡ソフトバンクVS東京ヤクルトの試合のダイジェスト。なんと3分半という豪華さで、編集も飽きさせない構成にする工夫が感じられる。

夜寝る前に贔屓球団のダイジェストをちらっとスポーツニュースで確認するよりも格段に良質で、なにより便利。

私はなかなかテレビで追いかける時間がないのでもっぱら球団公式のTwitterで試合模様を追いかけてきたけれど、やはり動画だと選手それぞれの調子や仕上がりが一目でわかるので最近はすっかりパ・リーグTVにお世話になっている。(この試合もぽんちゃんの走塁が鮮やかだとか柳田は相変わらず変態的な打ち方をするなとか一人でぎゃぎゃー言いながら視聴した)

さらにパ・リーグTVのすごいところは、試合を切り取った動画作成のセンスが抜群なところである。

こういうヒヤッとするプレーやファインプレーを切り取って、30秒くらいでさくっと見られるように編集してくれる。

こういうスーパープレイや変わったハプニングはそれだけで2時間の枠を押さえられるコンテンツになる(みんな大好き「珍プレー・好プレー」など。)のだから、特段野球に興味がない人もこの30秒の動画を見て「野球はなんかようわからんけどこれはすごいな」と思ってくれる可能性が高い。

SNS全盛の今、30秒でぱっと見てぱっと反応(いいね、RTなど)できるのもいい。
こういう超人的な動きを見るのもプロスポーツ観戦の醍醐味だ。

プロスポーツもフリーミアムモデルの時代へ

ここ数年Web界隈で流行っている "フリーミアムモデル"という考え方がある。
基本的なサービスは無料で提供して、より高度なサービスや機能を求める人には課金してもらいましょう、という仕組みだ。

クックパッドはまさにその成功例だし、amazonも無料会員と有料会員(プライム会員)がいることを考えるとフリーミアムモデルのひとつと言えるだろう。

フリーミアムモデルはどこを課金ポイントとするかが非常に難しいビジネスモデルなので成功・失敗事例含めて研究はまだまだこれからとはいえ、これから主流な考え方になっていくことに間違いはない。

なぜなら、人はよく知りもしないことにお金を払いたいとは思えないからだ。

特に現代は無料でいくらでも時間が潰せるのだ。
わざわざよくわからないものにお金を払うよりも、無料で提供されたものに価値を感じてからより高度なサービスを受けたくなって課金する、という流れの方が自然だろう。

だからこそパ・リーグTVが無料でダイジェストやプレー集を配信するというのは大きな意味をもつ、と私は思う。

人が何かを好きになるとき、一番大切なのは単純接触の回数だと私は思っている。

動画や画像はSNSとの相性もいいので、ちょっと野球が好きな人なら好プレーやハプニング動画に気軽に「いいね!」と言いやすい。
その軽い「いいね!」は少しずつ、周りの非野球ファンの目にもとまる。

「おお、よくわかんないけどこのキャッチはすごいな!」「ふーん、こんな選手がいるのか」そう思ってもらえれば万々歳だと思う。

そうして少しずつ野球に興味をもって、1年に1回足を運ぶ程度だったのが1ヶ月に1回に、そしてグッズや書籍も購入したりして…と徐々に"課金"していくのが自然な流れだろう。


人口と同じで、ファンもピラミッド状にしか増えていかない。
まずは浅く広く興味を持ってくれる層を増やしていかなければ、日本の人口と同じように全体がジリ貧になっていくのは目に見えている。

特にパ・リーグはセ・リーグに比べて立地が悪く(なんせ北海道と九州という日本の端と端に本拠地をもつ球団を擁しているのだから!)、昔から「人気のセ、実力のパ」と言われてきたほど観戦客も少なく球場が閑散としていた時期もあった。

そういう危機感もあっての新しい取り組みなのだろうと思うし、パ・リーグファンとしてもプロ野球ファンとしても、野球を盛り上げていくひとつの重要な施策だと感じている。

そもそもこのパ・リーグTVというのは「パシフィックリーグマーケティング株式会社」という6球団それぞれから代表者をだして設立された会社が運営している。
パ・リーグTVだけではなく、イベント企画だったりチケット販売の効率化だったりいろいろやっているようである。

なんて素晴らしいの!!!!

横浜の南場オーナーといい、野球界に新しい風がビュンビュン吹き込まれているのを感じるここ最近。

いちプロ野球ファンとしても、プロ野球の面白さを草の根的に広めていきたい…!と決意を新たにしたのであります。

サポートからコメントをいただくのがいちばんの励みです。いつもありがとうございます!